冒頭のロセッティ(妹)の詩に始まり、数々のペダンチックなネタで飾り立てても、決して虚仮おどしに堕すことなく、カッコよく決まっているのはストーリーやキャラもそれに釣り合うだけの水準を保っているからだ。魔法の存在する(が概ねこちら側と同じ歴史を辿る)並行世界、500万年前から存在する遺跡とその探査者たちの学園、すべての未来を知る予言者、主人公の命を狙い謎の敵・・・。それぞれ1シリーズにできそうな大ネタを惜しげもなく詰め込み、破綻なくまとめてみせてくれている。旧ソ連の少年兵にして暗殺者、という主人公の造形も、自ら思うよりは邪悪でも冷徹でもない、ということが読み進めるうちに示唆されていくのが実にいい。自分では最後まで悪党だと思っている、そのギャップが・・・!ちなみに設定的にはどうしても「フルメタルパニック」を思い起こすけど、実はそのまた元ネタの某異能生存体のネタが盛り込まれていて、これは絶対意図的、作者の目配せだと思う。レッドショルダーマーチwそして「フルメタ」を念頭におくと、なんで表紙に描かれてる子が彼女なの?という見事なミスリードにも引っかかるという・・。今年に読んだラノベのベストに推したい、すばらしい傑作。
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