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2015年10月06日10:18

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井上ひさし著「井上ひさし短編中編小説集成第11巻」を読んで



照る日曇る日第819回 


 本卷に収録されているのは、「ナイン」「グロウブ号の冒険」そして単行本未収録だった「嘘」「親銭子銭」「空席」「「質草」「紙の家」であるが、特に感銘を受けた作品はなかった。

 強いて挙げれば著者が離婚前後の事情を素材にデッチ上げた「紙の家」だろうか。生涯いわゆる「私小説」を書かなかった著者にしては苦しすぎた私生活のあれやこれやが垣間見られる作品であるが、妻に間男されて去られてもそれらの顛末を面白おかしく小説に書かざるをえない作家とはなんと業の深い人間であろうか。

 「グロウブ号の冒険」はカリブ海に著者のユートピアを構想しようとした海洋冒険ドラマであるが、延々格闘を続けた挙句に未完に終わっているのが残念である。


  世のために人のために研究するまだこの国にこんな人がいたんだ 蝶人

 

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