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2015年02月06日12:50

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中村元『龍樹』

 中村元『龍樹』(講談社学術文庫、2002年)を読了。仏教が成立した当初、一切の存在を成立せしめる関係概念(「法」)の根拠を縁起としたが、原始経典の末期から縁起説は通俗的な解釈をされるようになり、教学の中心から外れた。その代わり概念である「法」そのものが実在と見なされた。
 その関係概念を実体視する傾向を『般若経』は排斥し、仏教の根本的な思想でも特に否定的な響きである「空」の概念を用いて攻撃した。しかし、反対派が空を無の意味に解して虚無論であると非難したので、相互限定・相互依存と解した縁起によって空を基礎付けた。そうした運動を受け継いだのが龍樹で、これを天才的な論理によって説いた。
 したがって、龍樹は関係概念の実体視を批判したが、概念そのものを否定はしなかった。ところが、後にも龍樹の中観派は各学派から虚無論者であると非難された。それゆえ、近代にも諸学者が中観派を虚無主義と批評した。
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