国書刊行会版、短編集決定版。本邦初役の二編(「ブロブ」「タペストリー」)を除けばほぼ再読となるが、こうして改めてまとめ読みすると、ディレイニーのこだわるテーマやモチーフが、それこそ「ホログラム」のように見えてくるように思える。なにものかに囚われている状態への苛立ちと、そこから脱出しようという強烈な意志と、それを実行するための色鮮やかなテクニック・・・情動と知性が、こんなにも競り合うように一人の中に両立している作家は稀有だろう。そしてそれを表現する媒体として、一見安っぽいスペースオペラのけばけばしさだというのも、まれに見る皮肉だろう。
それにしても巻末の作者略歴を見るにつけ、その早熟さが恐ろしくなる…。
ログインしてコメントを確認・投稿する