mixiユーザー(id:4550802)

2014年12月29日23:25

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ニルヤの島/柴田勝家

 本職の文化人類学者による南洋SF。記憶を完全再生できるインプラントにより、「死後の世界」が完全に過去のものとなった世界・・・という前提条件がまずとっかかり難く、さらには4つのプロットが、それぞれの中でもリピートしたりしながら非直線的に進んでいく構造も難解で、全体の3/4ほどがかなり読み進めるのに難儀した。しかし、それら全ての要素が結線する結末は、それまでの苦労を補ってあまりある充溢ぶりで、生硬な実験作が一気にイーガン級の傑作へと変貌する。その落差こそ本書の魅力であり、それが生むモメントによって確かに、末尾において「彼岸」を読者にも垣間見せることに成功している。
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