春の色をなびかせて
あたたかな風が去っていく
世に現れた光とともに芽生えていた
兆しのほのかな匂いが運ばれる
異郷に息づく時を独りじめにするために
霞んだ風景の真ん中に
さくら
夕陽にとけだした念が
幹のたもとから沁み入る
色づいた花びらは
瞳をうめるように舞いおりて
夢のことばを唄いはじめる
まだ早い季節の風に
襟を高くあげて振るまう
空の雲に境目はなくとも
鳥は気にも留めずにすべりゆく
眺めるだけの色の前で
地を這いめぐる時は重なり
静かにおとずれた
さくら吹雪
頬を僅かにかすめて
降りしきる
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