1.京都へ
ふと、京都に行きたくなった。目的は嵯峨野観光鉄道に乗ることである。今まで乗らずにいた路線だが、京都散策も兼ねて出かけることにした。13日(土)、新横浜から7:29発「のぞみ9号」博多行きに京都まで乗る。さすがに3連休の初日で指定席は満席、自由席も混雑していて車内販売が通れないと案内している。新幹線の指定だけは早めに取っておいて正解だ。京都駅で降りると意外と涼しい。京都は曇り空だ。この時期の京都が暑いのは覚悟していたが、これなら動きやすそうだ。
山陰本線(嵯峨野線)の乗り場へ向かう。京都駅での新幹線下りの16号車から嵯峨野線への乗換えはもっとも遠く、短い接続時間ではギリギリなので次の電車にしようと思っていたが、10分接続の9:38発園部行きに間に合った。6両編成の後ろの方はすごい混雑だが、前の車両は余裕で座ることが出来た。久しぶりの山陰本線(嵯峨野線)で京都の町を西に進むと、間もなく嵯峨嵐山だ。この駅で降りるのも実は初めてである。乗る予定の嵯峨野観光鉄道は11:07だが、京都駅での乗換えがスムーズだったので1本前の10:07にも乗れてしまう。しかし、慌てることはないので予定通りの列車にして、駅周辺をブラブラして過ごす。嵯峨野観光鉄道の指定は確保済みである。
2.嵯峨野観光鉄道
トロッコ嵯峨駅はJR嵯峨嵐山駅のすぐ近くにある。この駅だけでもいろいろ楽しめるようになっていて、1時間くらいあっと言う間に過ぎる。駅前には「君が代」に歌われている「さざれ石」があり、厳粛な気持ちになる。駅前には蒸気機関車(D51 51)が置かれているが、「鐵風館」という建物内にもC58 48、D51 603、C56 98、若鷹号が置かれている。この「鐵風館」の中に「19世紀ホール」もあって、19世紀のハープシコードやオルガンとともに、等身大のシューベルト、その向こうにモーツァルトとブラームス、その奥にヨハン・シュトラウス、少し離れてベートーヴェンの像があって、クラシック音楽好きとしても楽しめる場所だ。こんなところでドイツやオーストリアの作曲家に出会うとは予想していなかった。(モーツァルトは18世紀の人だけど。) 奥にはジオラマ館があるが、ゆっくり見たいのであとで寄れたらゆっくり見ることにする。
11:07発「嵯峨野5号」の改札が始まったのでホームに行く。間もなくディーゼル機関車に牽かれた5両のトロッコ客車がやってきた。先頭の1号車に乗る。トロッコ亀岡へ向かう列車は機関車が最後尾になるので一番先頭の車両だ。今日は満席なので指定された席に座れとの案内をしている。嵯峨野観光鉄道はもともとは山陰本線の線路で、複線化に際して線路を付け替えたあとの本来ならば無用の線路を、折角の景観を楽しめるのに勿体ないと観光鉄道として復活させたものである。国鉄時代に特急も含めた山陰本線の列車が走っていた線路を、トロッコ列車でのんびり走るというのも面白いものである。
トロッコ嵯峨駅を出るとJR線の下り線路上を走り、次のトロッコ嵐山駅の手前で分岐する。JRの線路はトンネルの中に消えてしまうが、観光鉄道の方もトンネルに入り、トロッコ嵐山駅は前2両がトンネルの中だ。しかし、観光鉄道はすぐにトンネルを抜けて保津川に沿って走る。純粋な観光鉄道なので景色のいい所で停車しつつのんびりと進む。トロッコ保津峡から乗ってきた「酒呑童子」が挨拶の口上のあと、「ありがとう」を10カ国語位で述べて、その後車内を巡回する。あちこちで乗客の写真に収まっていた。トロッコ保津峡では乗降客は1人もいない。ここで降りても何もなさそうだが、山陰本線時代にもあった駅で、現在のJRにも移設された保津峡駅が存在する。JR線とは何度か交差するが、ほぼ直角に交わる。川に沿って走る観光鉄道と、真っ直ぐトンネルをぶち抜いたJR線のルートの違いが分かる。やはり観光鉄道からの保津川の眺めは美しい。
車内では「記念写真撮影」をして回っている人がいる。これはあとで買わせようということだが、買う気はないので自分はお断りした。相席の3人は写真を撮られていたようだが、写らないように避けた。案の定終点に着く手前で、立派な台紙にいれた「記念写真」を1000円で売っていたが、こうやって見せられると大体の人が買ってしまう。うまい商売だ。
23分ほどで終点のトロッコ亀岡に到着した。狭いホームも混雑しており、乗り降りに時間がかかる。ここで降りた人は、保津川下りの舟に乗る人か、このまま5分後に折り返す嵯峨野観光鉄道で戻る人が多いようだが、自分はJR線で戻ることにする。馬堀駅までは徒歩10分ほどだ。トロッコ亀岡駅周辺は周囲には土産物店以外は何もない。線路に沿って歩くと間もなくJR馬堀駅だ。京都行きの電車で嵯峨嵐山まで戻る。途中で嵯峨野観光鉄道の線路が見えるところもあるが、ほとんどはトンネルで、観光鉄道のトロッコ列車で23分かかったところを7分で戻ってしまう。
(トロッコ嵯峨駅)
(トロッコ嵯峨駅の「さざれ石」)
(嵯峨野観光鉄道)
(嵯峨野観光鉄道)
(車内に現れた酒呑童子)
(トロッコ亀岡駅)
3.嵐山・天龍寺
トロッコ嵯峨駅構内にある「ジオラマ京都JAPAN」を見ることにする。入場料は500円だ。中はHOゲージの鉄道模型が走るのだが、素晴らしいのはジオラマである。金閣寺、銀閣寺、清水寺、東寺、龍安寺など京都の寺がリアルに再現されているのである。鉄道模型は脇役で風景ジオラマが主役と言っていいだろう。鉄道は京都を走る車両たちだが、新幹線もあれば今はなき京都市電もあり、梅小路機関区もある。模型車両を運転することも出来るが、これは他の人が運転しているのを見るだけにして、風景とともに眺めていた。時間が立つのを忘れそうでいつまで居ても飽きない。
ジオラマ館を見たあとは嵐山を散策する。その前に昼時なので食事をしようと思い、嵐山うどんの店「おづる」に入り、湯葉うどんとおぼろ豆腐とかやくごはんのセットを食べる。いかにも京都嵐山という雰囲気で満足した。暑い夏だが熱いうどんもまたよろし。このあとは天龍寺に向かう。
天龍寺に来たのも高校生の時以来だ。臨済宗天龍寺派大本山である。庭園参拝と本堂参拝が別々になっているようだが、庭園参拝だけにする。大方丈の横をとおり、曹源池を眺めてゆっくりと庭園をめぐる。曹源池は国の史跡・特別名勝第一号に指定されており、世界文化遺産にも登録されている。多宝殿の前をとおり、アジサイなどが咲いている百花宛をぬけると北門に着き、ここから出ることにする。竹林の小径を歩き元のところに戻る。このあたりから空がゴロゴロ鳴りだしていた。とりあえず、無料休憩所である「ぶらり嵐山」に入ると、その瞬間に土砂降りの雨が降り出した。見る見るうちに前の道が川のようになってしまい、これではしばらく雨宿りをした方が良い。中では無料で宇治茶が飲めるので一杯いただく。濃いお茶が美味しい。
20分ほどで雨は止んだので外に出る。雨が上がって涼しくなった。渡月橋の方まで行って、少し戻ると嵐電の駅だ。駅は「はんなりほっこりスクエア」という名前になっていて、商店や飲食店が入っている。
(嵐山うどん「おづる」)
(天龍寺曹源池)
(天龍寺大方丈)
(渡月橋)
4.太秦・広隆寺
ここからは久しぶりに嵐電に乗ることにする。嵐電の車両はいつの間にか紫色になっていた。特に行先も決めないまま乗り、適当なところで降りてみようと思う。しばらくするとまた雨が降ってきた。こうなると降りるのが面倒になってしまうが、太秦広隆寺でふらりと降りてみた。すぐ近くに広隆寺の仁王門がある。降りた瞬間に雨が土砂降りになった。嵐山では雨は避けられたが、今度は傘が必要になる。小さな折りたたみ傘ではあまり役に立たない大雨だが、電車を降りてしまったものは仕方ないので、広隆寺に行く。
広隆寺といえば、真っ先に思い浮かぶのは国宝第一号の弥勒菩薩半跏思惟像であろう。是非拝観したいと思うが、その前に本堂である上宮王院太子殿で雨宿りをする。同じことを考える人は結構いるもので、本堂に靴を脱いで上がると、先客が何人かいた。ようやく雨も小降りになったので、霊宝殿に向かう。霊宝殿へは拝観料が必要だ。国宝の弥勒菩薩半跏思惟像と対面致し、心穏やかな気持ちになった。他にも十一面千手観音立像、阿弥陀如来坐像、不空羂索観音菩薩立像などの国宝や、多くの重要文化財があり、なんとも厳粛な気持ちになってくる。広隆寺は「“和を以て貴しとなす”平和な世界を目指した、慈悲の権化である聖徳太子の理想の実現に尽力した秦氏の功業を伝える、最も重要な史跡」である。
再び嵐電に乗る。やってきた電車は超満員だった。雨のために観光客が徒歩ではなく電車を使うことにしたからだろうか。幸い地下鉄乗り換えの嵐電天神川でいくらか下車客があり、若干楽になった。ここで降りてもよかったのだが、結局そのまま終点の四条大宮まで乗っていった。まだ雨は降っているので、そのまま阪急大宮駅に向かう。ホームで待っていると特急が通過した。以前は特急停車駅だったはずだが、いつの間にか通過するようになったらしい。次に来た準急で河原町まで行く。
(嵐電(嵐山))
(広隆寺仁王門)
(広隆寺上宮王院太子堂)
(広隆寺霊宝殿)
5.枚方の夜
京都はちょうど祇園祭の最中で、四条河原町付近もどことなく祇園祭の雰囲気である。そのためかどうか分からないが、今日は京都市内の宿が取りにくく、少し離れた枚方市のホテルを予約してある。京阪の祇園四条駅から枚方市に向かうことにして、ちょうど来た特急に乗る。七条、丹波橋、中書島に停まって、ここから駅間距離が長くなり、淀、八幡市、橋本を抜けると京都府を抜けて大阪府枚方市だ。枚方市駅に到着するとまた雨が降ってきた。とりあえずホテルにチェックインしてくつろいでいる。駅から近いのに少し迷ってしまい、30年前のビジネスホテルのような古いホテルだが外観だけは派手な青色で、料金は安いからいいけど、何度も泊まりたいホテルではない。
しばらくして雨も止んだので、枚方市駅周辺をブラブラする。本屋やCD屋を覗いていると時間がつぶれるが、20:00ジャストになって友人からメールが届いた。ここで京都在住の友人と待ち合わせをしているのだが、実は直接会うのは今日が初めてである。某SNSを通じて知り合った友人である。無事に合うことが出来て、たまたま駅前で割引クーポンをもらったという理由だけで、近くの「はなの舞」で飲みつつ語り合う。クラシック音楽という共通の趣味があり話題は尽きず、ついでに酒の方も尽きないが、適当なところで切り上げた。また機会があれば会うこともあるだろう。ホテルに戻って寝る。
6.宇治・平等院
翌14日(日)は全く予定がない。基本は帰るだけだが、急いで帰る必要はないのでのんびりとしていこう。ホテルで朝食を取りチェックアウトする。今日は曇り空で、思ったほど暑くはない。駅に向かいつつどこへ寄ろうかと考えるが、とりあえず電車に乗ることにする。京都と大阪のほぼ中間地点に居るので、今日は大阪へ行くという選択肢もあったが、結局出町柳行きの特急に乗った。再び京都に戻り、電車が中書島に着くと急に宇治に行きたくなって降りた。ここで宇治行きに接続しているのだ。宇治線の各駅停車で終点の宇治まで行った。
宇治に来たら自然と足は平等院の方に向かっている。宇治橋を渡ると、紫式部の像がある。宇治は「源氏物語」の「橋姫」から「夢浮橋」までのいわゆる「宇治十帖」の舞台で、宇治川に架かる宇治橋を背にした紫式部像を見て千年の昔に思いを馳せることが出来る(かもしれない)。
表参道沿いはお茶屋が軒を連ねている。宇治といえば宇治茶である。1軒のお店から声をかけられるが、「帰りにでも寄ります」と言ってそのまま通り過ぎる。さて、平等院といえばなんといっても鳳凰堂である。十円玉にも描かれた誰でも知っている鳳凰堂。ところが、この鳳凰堂は現在修復工事中で、中に入ることも出来ず、足場で覆われていて外から見ることも出来ないという。それでもいいかと聞かれる。もちろんその分拝観料は安くなっているようだ。それでもいいので中に入ることにする。観音堂の横をとおり阿字池へ。本来ならばここから鳳凰堂が見渡せるはずなのだが、全く見ることが出来ない。池の周りを歩いて鳳翔館へ行く。ここには国宝の梵鐘や鳳凰、雲中供養菩薩像などが展示されている。鳳凰堂は修復工事中だが、工事のために降ろされた対の鳳凰や龍頭瓦などを間近で見ることが出来たので、それもまたよしと納得する。雲に乗り楽器を奏でる雲中供養菩薩像は52体の半分の26体が展示されているが、見ているだけで楽しくなる。鳳翔館を出ると鐘楼がある。ここにある梵鐘は全く同じに作られた二代目ということで、本物の梵鐘(国宝)は鳳翔館の中にある。これも間近で先ほど見た。ちなみに、梵鐘は昔の60円切手、鳳凰は昔の150円切手の絵柄にもなっている。
平等院を出て参道を戻ると、先ほどのお茶屋から「朝、通られた方ですね」と声をかけられた。よく覚えているものだと感心し、中に入り美味しいお茶をいただく。「かんばやし」という、室町時代より茶頭取として御茶師の権力を有し、江戸時代は宇治茶の総支配役を勤めたという上林一族の流れを組む店だという。美味しいはずだ。折角だから御土産にお茶を買っていく。100gあたり10,000円を超える玉露の高級茶から数百円のお茶まで様々だが、手頃な1,260円の煎茶「徒然」を購入した。
ぶらぶらとJRの宇治駅まで歩いていく。京阪の駅とは少し離れていて、JRの駅の方が市街地に近い。宇治からは奈良線の各駅停車で京都まで戻る。関東ではもう走っていない水色の103系だ。黄檗、木幡、六地蔵と、京阪宇治線と同じ駅名が続くが、両線の駅はやや離れている。終点の京都で下車する。
(京阪宇治駅)
(紫式部像と宇治橋)
(平等院観音堂)
(平等院阿字池)
(平等院鳳翔館)
(平等院鐘楼(梵鐘))
7.京都タワー〜帰宅
京都駅に着いたら、突然雨が降ってきた。しかも豪雨だ。今日は降らないと思っていたが、どうも変な天気である。しばらく駅構内でぼんやりとしていると雨は止んだ。もう少しゆっくりして行こうと思うが、雨が上がると暑くなりあまり歩く気がしない。そこで駅前にある京都タワーに登ってみることにした。何度も京都には来ているが、京都タワーには登ったことがなかった。高さも100mほどで、東京スカイツリーを見慣れている目にはかなり低く感じる。スカイツリーより低い東京タワーのさらに1/3の高さである。展望室料金は770円。エレベータで11階まで登り、さらに展望室行きのエレベータに乗り換えて地上100mの展望室へ行く。展望室に着いた瞬間に、また雨が降り出した。かなりの豪雨で、外を見てもまるで水中展望台のようだが、幸いすぐに止んだ。雨のため外はやや霞んでいるものの、京都の町並が見渡せるのでやはり楽しい。望遠鏡(無料)で見るとさらによく見える。ただし、金閣寺などいくつかは見えない。どの方角に何があるかは表示してあるが、ご丁寧に「○○寺−見えません」などと書かれている。もう少し高ければ見えるかもしれないが仕方ない。
しばらく100mの上空で楽しんだあとは、タワーの地下で昼食とする。「味楽」という和食屋で、刺身、天ぷら、茶碗蒸しなどの、ありがちなセット。地上部分は昭和テイストな観光施設という雰囲気で、その点は東京タワーと似ている。食事のあと京都駅に戻ると、駅前で祇園囃子演奏会をしていた。折角だからしばらく聴いていった。普段は西洋のクラシック音楽ばかり聴いている感じだが、たまには伝統的な邦楽も良いものである。よく分からないけれど。
(京都タワー)
(祇園囃子演奏会)
京都駅からは「ひかり522号」に乗る。「のぞみ」ばかりの中で「ひかり」は貴重な存在になりつつあるかもしれない。米原、岐阜羽島、名古屋、豊橋に停まり、次が新横浜だ。新横浜からバスに乗り、溝の口に着いたらまた豪雨に遭遇した。関東に戻ってもゲリラ豪雨からは逃れられないようだ。
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