我が家の菩提寺は長徳寺と言って、浜松市の三方原にある。
菩提寺とは言うものの、妻の葬儀からの付き合いなので、まだ10年に満たない。
その本堂が古くなり、地震対策という事も兼ねて建て直される事になった。
「古く」とは言いつつ、いつ創建された寺なのか、詳しい事を知らない不信心者である。
工期は2011(平成21)年から2015(平成25)年との事。
当然ながら寄付の依頼が来て、我が家もできる範囲でささやかに協力させてもらった。
頭の隅に残っていたのだが、この計画の説明会の時にか、業者の名「鵤工舎(いかるがこうしゃ)」と、そして「西岡常一」という名を聞いたような気がする。
で、改めて残っている資料を引き摺り出してみた。
「長徳寺本堂再建についてのお願い」なる紙を開くと、建設概要が書かれていて、そこに確かに「設計・施工 �褥９�舎」と書かれている。
鵤工舎というのは、6月に観たドキュメンタリー映画『鬼に訊け』(参
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1855481989&owner_id=3341406)の主人公、奈良法隆寺棟梁で、薬師寺の西塔他大伽藍を再建した宮大工 西岡常一の、「唯一の内弟子」と言われる小川三夫が創設した寺社建築専門の会社である。
小川三夫(1947- )は、栃木の生まれだが、高校の修学旅行時に法隆寺五重塔を見た事をきっかけにして、卒業後、西岡の門を叩くものの断られる。
修行を重ねた後、22歳になって再度同門を訪れ、内弟子となるのを許されたそうである。西岡の仕事の中で代表的な法輪寺三重塔再建の着手は1967(昭和42)年だが、その年に小川は弟子になっているのだ。
以降、前掲の薬師寺西塔他の仕事で小川は福棟梁役を果たしている。
我が菩提寺 長徳寺の本堂は、素人目には外見はほぼ完成の域にあるように見える。
一昨日、工事現場を訪れると、本堂前の整備と庫裏の工事中だった。
本堂はまだ入れず、内陣の様子は見る事ができない。仮本堂は同朋会館内に設えられている。本堂の規模は60坪で小さなものだ。住職の性格に似て肘を張らず、田舎に相応しい。
鵤工舎のホームページを見ると、施工実績という項があって、その中に長徳寺の名が確かにある。
本堂の工事年度は平成21〜24年、手水舎新築は施工中と書かれている。
寺からの「長徳寺だより」(当年7月発行)によると、
・・・6月から境内整備の工事が始まりました。8月中旬までかけて参道などの整備を致します。(中略)10月以降になると思いますが本堂の南、向かって左側に新しい手水舎の建設も始まります。(中略)もうしばらくご協力をお願い致します。・・・
鵤工舎のホームページ、施工実績の工事場所の欄を見ると、北は宮城県から南は福岡県に迄跨っている。こうした工事の受け皿となる会社が少ないのだろう。
最近は、鉄筋コンクリート造りになっている寺社も多い。
2010年に行った京都の六波羅蜜寺もそうだった。木の優しい味わいがなくなって、重厚だが冷たくよそよそしい感が強い。
そして、鉄筋コンクリート造りの寺社が、木の性質を充分に知悉し配慮した宮大工のそれよりも、果たして永く生きるのかどうか。
西岡常一の言葉の数々が、また重い振子のように頭に帰ってくる。
最後に、私が一昨日撮った長徳寺の写真を添付しておく。
写真1 全景。
小さいが屋根の勾配はなかなか素晴らしい。
まだ立入禁止の赤い円錐ポールが置かれている。
写真2,3 部分。
部位の名を知らないので、何処と特定できない。想像して下さい。
木組みの妙を伝えたいが、携帯のカメラでは如何とも。それでも、「鬼」の気配が、そこかしこに感じられるだろうか。
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