mixiユーザー(id:2230131)

2011年11月04日01:10

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Bad

 先日、ビョークを引き合いに出して、最近はあまり関心のないマドンナの音楽(コラ!)について自分なりに語ってみたんだけど、マイケル・ジャクソンとプリンスもこの二人の関係性とどこか似ているところがあるような気がする。

 周知の通り、大衆人気ではいつだってマイケルがプリンスを圧倒していた。デビュー時期もマイケルが断然早い。二人の年齢は同じだけど、芸歴で言えばマイケルが大先輩にあたる。普通ならもっと偉そうにしてもいいのだが、マイケルにとってプリンスとは、ある面では永遠に「頭の上がらない存在」でもあった。
 実現が叶わなかったあの最終ツアーのリハ中でさえも、スタッフに対してしょっちゅうプリンスの名を引き合いに出し、露骨にライバル心を剥き出しにしていたと伝えられている。なにしろ、自分の子供に「プリンス・マイケル」と名付けてしまう男である(本人は関連性を否定しているけど)。

 プリンスの才能を発見したマイケルは、初期のころから熱烈なラヴ・コールを送り続けていたという。ところがプリンスはその誘いを断り続け、遂には二度と共演することはなかった。
 ヒット曲“バッド”も、プリンスと共演することを念頭にマイケルによって書き下ろされた楽曲。マイケルは必死の思いで会席をセッティングするものの、両者の話し合いは険悪なムードで終わり、念願のコラボは叶わず…。結果はご存じの通りである。

 誰もが一度は聴いたことのある“バッド”だけど、聴衆の意識を強引にこちらに向けさせてしまう、マイケルならではのスター性がよく表れている楽曲だと思う。恐ろしくバブリーでダンサブルなポップ。もはやここにソウル・ミュージックの型はない。
 押しも押されもせぬ大スターであるマイケルが放った『バッド』は、あまりにポップに振れ過ぎたとしてブラック・ミュージックのファンや評論家からは批判もあったようだ。

 一方のプリンスはと言えば、キャリア最高作(と個人的には思っている)『サイン・オブ・ザ・タイムズ』を発表して、アーティストとしてひたすら先鋭化していたころ。音楽面では目覚ましい進化を遂げるものの、その異端さ/コアさゆえにセールスには陰りが見え始めていた。ライバルと目される二人だったけど、実はまったく反対の方向を向いていたことがわかる。
 件の“バッド”の会談が、マイケルにとってターニング・ポイントだったのかどうかはわからない。でも、ちょうどこのころを境にしてマイケルはよりスター性を前面に打ち出すことで、プリンスとの差別化を図ろうとしていたように思えてならない。

 おそらく彼は悟ったのだ。純粋な音楽家としての才能という意味では、どうやらプリンスに分があるらしいと。だからシンガー/エンターテイナーという自らの長所を活かし、あくまで自分の得意なフィールドで頂点を極めるべきなんだと。
 そして、その目論見は見事に成功した。彼はプリンスよりも遥かに気持ち悪くない声(笑)でポップ・ナンバーを上手に歌いこなすことが出来たし、ダンスだっていつのまにか誰にも真似できないレベルまで上達していた。彼にはパフォーマンスひとつで人々を魅了する特別な才が備わっていた。いつしか彼は、プリンスどころか世界中の誰もが叶えられない夢を手に入れていた。

 音楽のジャンル問わず、老若男女問わず、人種も問わず、あらゆる人々からこんなにも幅広く愛された黒人アーティストは彼だけだった。そして、そのような特大スターは未来永劫現れることはないだろう。


 ビデオを監督したのは、御大マーティン・スコセッシ(!)。
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