ピクシーズとニルヴァーナ。共に米オルタナティヴ・ロックを代表する伝説のバンドだけど、その実、知名度には雲泥の差があるような気がする。 ここで僕の立場を明確にするなら、ニルヴァーナよりもピクシーズの方が好きだし、音楽的にもピクシーズの方が数
前作『メタル・ボックス』ではサウンドの要だったジャー・ウォブルが脱退し、突然の方向転換を余儀なくされたパブリック・イメージ・リミテッド(以下、PIL)。 本来なら新しいベーシストを加入させてその穴を埋めようとするのが普通だが、彼らはなんと
より一段とフロア寄りのサウンドにシフトしたとされる、LCDサウンドシステムことジェームス・マーフィーの2作目『サウンド・オブ・シルヴァー』。 感触としては、前作のディスク2の内容に近い。すなわち、ヒット曲“ダフト・パンク・イズ・プレイング
冬に聴きたいヒップホップの最右翼。 鉛色に沈んだ空によく似合う、物憂げなシンセサイザーの調べ。陽気なMCたちがフロウをお見舞いするとき、そこには寂しげなホーンのカーテンがしな垂れかかっている。 目を閉じると、そこにはNYはブルックリンの寒
「自然と音楽と科学の融合」。 ビョーク4年ぶりのオリジナル・アルバム『バイオフィリア』は、彼女が長年取り組んできた、いかにもビョークらしい壮大なコンセプトが設定されている。 自然界の秩序を音楽理論の秩序で再構築すること―――たとえば1曲目
深夜0時。一日の仕事をやり終え、家路へと向かう車の中。心身ともにグッタリと疲れ果て、もはやハンドルを切ることさえ億劫に感じられるとき。 そんな週末の夜、多くの場合、僕はボーズ・オブ・カナダのレコードを掛けることにしている。<ワープ>系のレ
以前からコールドプレイのことを、「U2化が進行している」みたいなことを言って揶揄してきた僕だけど、本作『マイロ・ザイロト』に至っては、U2どころかビヨンセとかアデルの領域まで突き抜けてしまったことに気付いてしまった。 要するに、ごくメイン
マッシヴ・アタックの音楽を聴いていると、ともすれば鬱にもなりかねないような、心底気だるいムードに襲われるときがある。 そんな彼ら特有のダークネスをうまく中和する役割を担っていたのが、シャラ・ネルソンに始まり、トレイシー・ソーン、ニコレット
遡ること、10年前。突如リリースされたゴリラズのデビュー作『ゴリラズ』に対して、プレスの反応はひどく中途半端だったのを覚えている。もっとも、グレアム・コクソンという長年の親友を失ったデーモン・アルバーンが、いきなりアメコミの漫画家と組んでふ
「いつもあなたのこと考えてる」だとか「君のことが頭から離れられない」だとか、クソつまらないフレーズさえ挟んでおけば、それでラブ・ソングが完成すると思ってるテレビの業界人は少なくない。そもそもが、四六時中、恋人のことしか考えられない人間がい
才能を持て余すひとりの若き天才音楽家。そんな夫を献身的に支える、天然でどこかピントのズレた妻。本人たちは前衛芸術のつもりが、傍から見たらただのバカップル。 以上の点において(悪意はありません)、セルジュ・ゲンスブールとジェーン・バーキン夫
同じ価値観を共有し合い、同じ時間を共に過ごし、お互いの生き方を尊重していて、おまけに趣味の話題も合う―――。完璧だと思われた最愛のパートナーが、時を経ていつしか二人の歩幅は合わなくなり、遂には唐突に別れを迎えてしまう。すべての男女には、そ
一時期、スティーヴ・アルビニの作り出すドラム・サウンドに夢中になり、彼のプロデュース作品ばかり聴いていた時期があった。 この人は知名度からしても一般的にプロデューサーと思われてる節があるけれど、アルビニ自身、実はそう呼ばれることを嫌い、あ
ブラック・ミュージックの世界においては、音楽の演奏形態として、リズムボックス等のソフトウェアを必要以上に多用するのはなぜか禁じ手とされている節がある。 85年に発表されたスティーヴィー・ワンダーの『イン・スクエア・サークル』も、いわゆる「打
アークティック・モンキーズの2作目『フェイバリット・ワースト・ナイトメア』について、僕は「いつまでも子供だと思ってた息子の部屋からエロ本が発見されたような黄昏たレコード」と評させてもらったことがあった。その例えで言うなら、3作目となる本作
ときには観客を沸かせるスーパースターであり、ときには首尾よくヒットを飛ばす優秀なソングライターであり、ときには専門家をも唸らせる音楽界の革新者でもある。 そのような条件を満たす際立ったアフリカ系アメリカ人のアーティストって、それこそプリン
「気持ち悪いけど、なんか癖になる。」 大方のプリンスを初体験した人が抱くべき正常な反応。どんなに好印象を持った人でも、おそらくこのくらいが関の山。 プリンスの代表曲のひとつ“ビートに抱かれて”。直訳すると「ハトが鳴くとき」なのに、なぜこん
前回はローリング・ストーンズを紹介しましたが、今回は彼らの後継者にもっとも近いと目されるバンド、プライマル・スクリームでございます。 こんなことを言うとストーンズ好きのオヤジはもちろん、プライマルのファンにさえ全力で否定されそうだ(笑)。
地元に「大喜」というラーメン屋があります。 とんこつしょうゆ味のスープと焦がしネギの香ばしさとの相性が抜群で、浜松ではなかなかお気に入りの店だったんだけど、その近所に「荻窪」というもっとお気に入りのラーメン店を発見してしまい、最近はめっき
不遇に始まった70年代のポール・マッカートニー。だが、一連のシングル・ヒットで息を吹き返しつつ、じっくりと腰を据えて制作された本作『レッド・ローズ・スピードウェイ』にて、遂にはセールス/批評面、共に成功を収めた記念すべき作品…。ということに
もし不幸にもローリング・ストーンズの音楽を一度も聴いたことがない人がいたとして、そういう人に、名刺代わりにストーンズの曲を1曲提案するとしたら…。 しばしつまらない空想にお付き合い願いたい。まず、初期のデッカ時代から入るのがストーンズ入門
あのマイケル・ムーアですらドキュメンタリーの題材にすることをためらった「宗教」―――。もっと言えば、ブッシュ政権末期にアメリカ全土を席巻したキリスト教福音派…。そういった諸々に対する間接的な言及が含まれるとされる、アーケイド・ファイアの2
もはやポール・マッカートニーがベーシストだったということを忘れている人は少なくない。 今で言うところの「マルチ・プレイヤー」の走りみたいな人で、たしかにベースだけを黙々と演奏してるイメージは薄い。だけど、一流の音楽家であったポールは、紛れ
先日、ビョークを引き合いに出して、最近はあまり関心のないマドンナの音楽(コラ!)について自分なりに語ってみたんだけど、マイケル・ジャクソンとプリンスもこの二人の関係性とどこか似ているところがあるような気がする。 周知の通り、大衆人気ではい
会社の同僚に待望の第一子が誕生したようで、女の子の名前を「楓」にするかどうかという話を聞いたとき、おめでたい話なのに僕は「先越された感」ばかりが先行してしいた。 というのも、近い将来、もし自分に女の子ができたら「楓」がいいかもしれないと、
ビョークの新作がヒッソリとリリースされていることを知り、かつてほど熱を上げて彼女の音楽を聴いてないことに罪悪感を覚えつつ…前回のマドンナと関連付けたりして、もうしばらく語らせてください。 それまでのポップ&セクシー路線では立ち行かなくなっ
たとえば、くるりのアルバムで僕が評するところの「ロックという外国文化を日本人が嘘臭くなく表現すること」に対し、おそらく誰よりも早く自覚的に取り組み、こんにちの日本語ロックの礎を築いたパイオニア的存在。 彼らの代表作とされるこの『風街ろまん
つくづくエゴの塊のような男だと思う。 売れ線プロデューサーのひとりに過ぎなかったエリート貴族が、ジェイ・Zやアリシア・キーズらの裏方仕事だけでは飽き足らず、みずからマイクを握って華々しくMCデビューを飾ったかと思いきや、4年後にはそれさえも
まず、先日のサマソニにて僕が予想した「今度のレッチリは大胆にアフロ・パーカッションに接近するだろう」は微妙に外れてしまったことを白状しておこう(笑)。たしかに、“エチオピア”や“レイン・ダンス・マギーの冒険”など数曲ではそれらしい変則的な
現代の若者にジェームス・ブラウン(以下、JB)について尋ねたとしたら、「わけのわからない奇声を発しながら汗だくで踊っているオッサン」だとか、「ヤク中で奥さんを射殺しようとして殺人未遂で服役した犯罪者」だとか、「和田アキ子の心の師匠(笑)」