『First Love』の記録的なヒットを受けて、たっぷり製作費を投入して、プロダクションも思う存分ゴージャスにして、膨れ上がったリスナーからの期待に真正面から答えようとした、堂々たる2作目。 なにもかもがハイパー化している。たとえばジャネット・ジ
自宅にスタジオを設けて2年間たっぷりと時間を掛けて作り上げた、ケイト・ブッシュのセルフプロデュース作『愛のかたち』。音楽作りに没頭できたからか、前作『ドリーミング』の鬼気迫る壮絶さとは異なり、穏やかで、柔和で、どこか母性的な包容力も感じさ
「フランク・ザッパらしさ」というのを定義するのは難しい。人によって印象は違うし、どのアルバムから入るかによっても全然違うので簡単に定義することはできないと思うのだけれど…数枚聴いた僕の中では、本作『ワン・サイズ・フィッツ・オール』がもっと
なにはともあれ、世界中を躍らせた“ダンシング・クイーン”が収録された『アライバル』の熱気も冷めやらぬうち、まったくヨーロピアン・ディスコ風ではない本作を作った勇気は称賛に値するだろう。アルバム名も『ジ・アルバム』…。シングル・ヒットを量産
PJハーヴェイは90年代からずっと僕の「いつか聴いてみたいリスト」に入ったまま、だがしかしかわいそうに一度も聴かれることなく放置され続けていたアーティストでした。 彼女が登場したころのイメージは、ニルヴァーナやサウンドガーデンに代表される米
復活作『Fantome』を聴いて(ようやく)宇多田ヒカルの才能に心酔してしまい、いまさらになってこの説明不要なメガヒット・アルバムを聴き直すに至っている。 99年当時、自分はミーハーなんで『First Love』はもちろん何度も手に取って聴いたアルバムでは
イギリスのシンセサイザー・メーカーの名を冠したと言われている、エイフェックス・ツインの『チーター』。 そのチーター社のMS800という機種を使って録音された本作。僕はそんなマニアックなメーカーもシンセも知らないのだが(機材マニアでもなければ誰
「もしドナルド・トランプが大統領に選ばれたとしたら、我々の世界はどんなディストピアと化してしまうのだろう?」という荒唐無稽なコンセプトを元に制作されたという、ゴリラズの新作『ヒューマンズ』。 そんな絵空事がよもや現実世界になるとは露知らず
若いアルバムだな、というのが第一印象。 勿体ぶったギミックやこれみよがしな技巧もなく、まるでデビュー仕立ての新人バンドのようにストレートで、ピュアで、ポップで、溌剌としていて、ある種、意識的にベテランゆえの貫禄を削ぎ落としたかのよう。今作
一曲目の“サンデー”から、そのダークな世界に引き込まれる。地底から響いているかのような荘厳なコーラスとギター・サウンド。次のヴァースではチリチリとしたノイズのようなビートが不安を掻き立て、そしてボウイの歌唱がエモーショナルに高揚するのと同
ポール・マッカートニーの『パイプス・オブ・ピース』は、傑作『タッグ・オブ・ウォー』のセッションで録音されたマテリアルが中心で、まさしく続編と言っていいような作品。だが、あらゆる「続編と呼ばれるアルバム」がそうであるように、総じて1作目より
ストリーミング・サービス限定でリリースされ、その内容が作り手によって常に書き換えられるという異常事態が話題になったカニエ・ウエストの『ライフ・オブ・パブロ』。そんな新時代の到来を象徴するように、音楽の内容もとりとめがなく流動的で、混沌とし
「インディR&B」という胡散臭いワードがロック・リスナーから囁かれるようになってきたころ、ウィークエンドやドレイクと並んでその筆頭格とされていたのがフランク・オーシャンだった。 自分もその潮流にまんまと乗ってしまい(笑)手に取った『チャン
いつの世も、マジメな男は損をする。だがマジメなだけが取り柄の男を、人は嘲り笑うことはあっても、決して嫌悪感を持つ者はいないだろう。 タイトルからして高らかに宣言している通り、独りきりで制作に打ち込んだジェイク・バグの3作目『オン・マイ・ワ
モダン・サイケデリアの総本山とでも呼ぶべし前作『ローナイズム』から一転、急激にエレクトロニクスを増加させたテーム・インパラの『カレンツ』。 硬質そうな鉄球の塊が、ドロドロの液体金属を掻き回している…。そんな摩訶不思議な印象を与える今作のア
ローリング・ストーンズがそうであるように、同じような意味合いにおいて、レッド・ホット・チリ・ペッパーズもまた長きの活動に渉って「自身の演奏様式を確立したバンド」である。(『刺青の男』参照) 言わば、音楽のジャンルだとか、楽器の音色だとか音
(鑑賞した順番、数字は制作国の公開年)・キングスマン(2014)・ナイトクローラー(2014)・自転車泥棒(1948)・三十四丁目の奇蹟(1947)・アレクサンドリア(2009)・ダンシング・ヒーロー(1992)・ブリッジ・オブ・スパイ(2015)・ブルックリン横丁(
(順不同、オリジナルアルバムのみ選定、数字は発表された年)Arrival(1976)/ABBA個人的に数年毎に巻き起こる、謎のアバ・ブーム。ディスコというリズムを会得したことで、世界のポップ・マーケットに無事に到着(arrival)した記念碑的ヒット作。Good kid,
前作『Heart Station』は、宇多田ヒカル自身がプログラミングした電子音から織り成す、手作り感満載のエレクトロ・ポップ集といった趣だった。そして長い沈黙を経て発表された新作『Fantôme』は、ピアノやストリングスなどの生演奏を主体とした極めて