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2026年07月22日21:19

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「大統領のケーキ」

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ミニシアターの名もない映画に、時にとんでもなく感動することがあります。
これはそんな作品のひとつでした。

冒頭に出て来る、主人公ラミアの貧しい家に、まず胸を打たれます。
イラクというと中東の砂漠の国というイメージですが、イラク南部の湿地地帯では、人々は浮島の上に葦で作られた粗末な小屋に暮らしている。
無論電気も水道もなく、家財道具もなく、トイレは(多分)垂れ流し。
9歳の少女ラミアは、年老いた祖母と雄鶏ヒンディと共に貧しい暮らしをしていたが、ある日学校で「大統領のケーキを作る」という”名誉な”係に選ばれてしまう。

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全般に食料不足が続いているイラクで、その日の食べ物にも事欠いている彼らにケーキの材料を調達できる訳もないのだが、用意しないと厳罰が下されるという。
ラミアと祖母は雄鶏を連れ、唯一の家財道具の古いラジオと壊れた腕時計を持って町へ出るのだが…

驚くことに、「独裁者フセイン大統領が自身の誕生日を祝うケーキを作るよう、各学校に命じていた」「ケーキ係はくじ引きによって選ばれる」「用意できなければ重い罰が待っている」という物語設定は、監督の実体験ベースなのだそうです。
当時少年だった監督の友人が、実際にくじ引きでケーキ係を引き当て、用意できなかったことで退学処分になり、少年軍への入隊を強いられたというのです。

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小さな少女ラミアはケーキの材料を調達する為に必死に駆け回るのですが、出会った町の大人たちはロクでもない人物ばかり。
子供に怒鳴り、古時計を偽札で買い取り、性的対象にしようとしたりする。
独裁政権下では、警察や教師など権力に与する者は腐敗し、子供や弱い者を守ろうとはしない。
教師も貧しい子供たちの弁当を抜き取り、”名誉な役目”をまっとうできなかった子供を通報するというのですから、何をかいわんや。
唯一ラミアを守ってくれる大人が出て来て、この作品の救いではあるのですが。
「我々の魂と血をサダムに捧げます」というシュプレヒコールが、映画の中に幾度となく出て来ます。

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ラミアの唯一の保護者である祖母に大きな不幸が襲い、福祉など期待できそうもないあの国で、一体彼女がどうやって生きていくのか皆目分からないまま、映画は幕を閉じてしまう。
視聴者には、独裁政権の恐ろしさだけがズッシリと伝わります。
イラク出身のハサン・ハーディ監督が自らの体験をもとにした初長編映画であり、第78回カンヌ映画祭では、新人監督賞・監督週間観客賞をW受賞。
イラクには映画製作の体制がなく、ハーディ監督は日米欧からの助成を受けて本作を撮影、出演者も殆どが町中でスカウトされた素人だと言います。
だからこそのリアリティがあるような気がします。

「大統領のケーキ」公式HP https://movies.shochiku.co.jp/presidentscake/

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