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2026年05月03日19:41

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【散策】 鶴巻温泉

小田急線に乗って温泉に行くというと、ほとんどの人は箱根だと思うだろう。しかし、小田急線には、鶴巻温泉という駅もある。実は鶴巻温泉は神奈川県内で唯一、「温泉」が付く駅名なのである。それどころか東京にも千葉にも埼玉にも「温泉」が付く駅はない。南関東唯一の「温泉駅」なのである。しかしながら、小田急の特急ロマンスカーは停まらない。そんな地味な温泉駅なのだが、どんな場所か行ってみることにした。

登戸から快速急行で40分ほどで鶴巻温泉に到着する。一見、他の小田急線の駅と変わらない郊外の住宅地の駅前だが、温泉地らしい雰囲気も少しある。

北口駅前には「宿借り(おかえりなさい)」と題する彫刻オブジェがある。そして駅前広場には「飛翔」と題する造形物がある。駅北口広場は、「温泉街の持つ古い歴史」と「ベッドタウンとしての未来」の2つの象徴を融合させたテーマで作られたもので、その中心にあるのが「飛翔」という訳だ。

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(宿借り(おかえりなさい))

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(飛翔)

さて、駅のすぐ近くには「手湯」がある。「千の泉」という名前が付けられている。湧き出る温泉に手を入れると、ほどよい暖かさが気持ちよい。駅から少し歩くと温泉旅館がある。「陣屋」と「大和旅館」の2軒だが、この2軒のみが今も営業している温泉旅館のようだ。近くまで行くと、落ち着いた老舗旅館という雰囲気で、賑やかな箱根あたりよりも、ゆっくりと寛げそうな気がするが、今日は宿泊はしない。

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(手湯「千の泉」)

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(温泉街の雰囲気)

宿泊はしないが、温泉に浸かれる場所はきちんとある。少し行くと「足湯」があるのだ。靴と靴下を脱いで浸かると、熱すぎずぬる過ぎずの、ほどよい温度だ。鶴巻の温泉はカルシウムを多く含むそうで、それがどのような効能なのかは詳しく知らないが、しばらく浸っていると疲れも消える。

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(足湯)

さて、鶴巻温泉に来た一番の目的は、実は宮永岳彦記念美術館である。宮永岳彦(1919-1987)は美しい女性像を描いた洋画家であるが、小田急電鉄とも関係が深く、小田急ロマンスカーの礎となった3000形SE車のカラーリングや内装デザインを手掛けたのも宮永であるし、箱根や江ノ島の観光ポスターも多く描いている。小田急ユーザの鉄道好きとしては、小田急のイメージであったのだ。

館内には、もちろん小田急関係の作品も展示してあるが、もともと松坂屋に勤務していたこともあってか松坂屋のポスターもある。「ぺんてるくれよん」の箱の男の子と女の子も宮永の作品なのだというのは初めて知った(ペペとルルという名前だというのも)。もちろん本業である女性像の作品も多く展示してあり、「美しいものを描くことで社会の役に立ちたい」という思いが、作品に現れている。絵本も描いていたようだが、前述の商業的作品や児童書は、周りからは「純粋芸術」より低く見られていた中、どんな作品でも真摯に向き合い、全てが自分の芸術作品であるという姿勢を貫いたのである。

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(宮永岳彦記念美術館)

美術館の隣りにあるのが「弘法の里湯」という日帰り温泉である。というより、前述の足湯も美術館も「弘法の里湯」の敷地内にある一連の施設である。温泉に浸かって身も心も寛ぐと、同じ建物内には和食レストラン「一の屋鶴寿庵」があり、ここで食事もできる。まだ正午より前だが、空いているうちにと思い店内に入る。天ぷら定食を注文し、さらに昼間からビールも飲んでしまったが、まあ休日の温泉地だし、いいだろう。

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(弘法の里湯の入口)

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(「一の屋鶴寿菴」の天ぷら定食)

食事も終わり、あとは駅の南口にも行ってみようと思う。南口側に出ると、そこから上り坂がある。これは延命坂というらしく、上った所に延命地蔵尊がある。延命地蔵尊の教えは、「五十〜六十は花なら蕾、七十〜八十は働き盛り、九十過ぎて迎えが来たら百まで待てと追い返せ」ということで、これはいい! 私は現在六十代で会社も定年退職したが、これまではこれからの人生を充実させるための準備だったのだと思える。この延命地蔵尊から少し行くと、県指定天然記念物である「鶴巻の大ケヤキ」がある。樹齢は600年以上だそうで、これも延命地蔵尊の力もあるのか、生命力の強さを感じるものである。

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(延命地蔵尊)

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(鶴巻の大ケヤキ)

駅前に戻り、最後にもう一つ。このあたりは以前は落幡村といった。大ケヤキを管理しているのも落幡神社だし、一部名前は残っているが、昭和2年の小田急線開通時に、温泉地である鶴巻を駅名にしたため、周辺の地名も鶴巻になったという。ただ、かつては落幡という地名だったことを残すために、駅前に「落幡村村名保存碑」が建てられている。おそらく温泉やハイキング目的でここに来る人のほとんどは気付かず素通りしそうだが、こういう小さな碑にも気付いてほしいと思う。

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(落幡村村名保存碑)

適当に駅周辺をブラブラしただけだが、鶴巻温泉への小さな旅を終えて、小田急線で帰路についた。
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