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2024年05月04日21:58

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【音楽】 團伊玖磨生誕100年記念コンサート

今年は團伊玖磨生誕100年目にあたる。そのため、團の作品を演奏するコンサートも例年より多いようだが、今日はその中でも團作品のみを演奏する「團伊玖磨生誕100年記念コンサート」である。これを聴くために、午後は四ッ谷に出かけた。

プログラムは次のとおりである。

 ・團伊玖磨:歌劇「夕鶴」前奏、つうのアリア
 ・團伊玖磨:ヴァイオリンとオーケストラのためのファンタジア第1番
 ・團伊玖磨:交響曲第2番
 ・團伊玖磨:祝典行進曲
 ・團伊玖磨:混声合唱組曲「筑後川」
 ・團伊玖磨:合唱と管弦楽による「西海讃歌」

   指揮:齊藤一郎/ソプラノ:小林沙羅/ヴァイオリン:小林武史
   管弦楽:読売日本交響楽団
   合唱:東京混声合唱団、團伊玖磨生誕100年記念合唱団
   会場:紀尾井ホール (15:00 開演)

限られた時間で演奏できる作品は限られるが、それでもなかなかの充実したプログラムだ。会場に着くと、入口前でテロ対策のため荷物検査に協力して下さいといわれた。向かいのニューオータニにでも要人が来ているのだろうか。もちろん私は危険なものなど持っていないので、形式的な確認だけで終わりである。

さて、まずは「夕鶴」の前奏とつうのアリアを続けて演奏する。「夕鶴」は先日全曲を通して聴いたが、今日はつうが与ひょうの心が「おかね」によって自分とは違う世界に行ってしまうと悲しむ場面である。「夕鶴」中のクライマックスだ。前奏から全く違和感なくそのままアリアにつながった。最後の方は、オーケストラもつうの声をかき消すほど大音量になるのは、先日も聴いたとおりだ。小林沙羅の衣装も明らかに鶴をイメージさせるもので、アリアだけだも十分に楽しめた。

続いては小林武史が登場して、ファンタジア第1番である。もともと小林のために作られた曲であり、小林の演奏会での名刺代わりのような作品とのことだが、今日も小林武史のヴァイオリン演奏で聴けるとは素晴らしい。今年93歳と高齢なので、立って演奏するのは無理があるのか、座っての演奏である。これまでに数えきれないほど弾いてきたであろう曲だが、まだまだやりますよという感じである。あまり大きな音は出さず、枯れた味わいというのか、ちょっと渋めのファンタジアも、なかなか趣があってよかったと思う。

前半の最後は交響曲第2番だ。生で聴くのは初めてである。第1楽章が長く、録音で以前聴いた時は、茫洋とした雰囲気でなかなか捉えにくい曲だなと思っていたが、こうやって生で聴いてみると、なかなかスケールの大きな作品だと感じた。「東洋の均整美を音の世界で具体化」することを目指した作品らしいが、日本的というよりはもっと広い大陸的な雰囲気を感じる作品である。第3楽章はアレグロ・コン・ブリオで爆発し、なんとなく芥川作品にも似た雰囲気さえ感じてしまう。演奏会で聴く機会のほとんどなかった作品だが、聴けば良さは分かるのである。これからもっと取り上げてほしいと思わせてくれた演奏であった。

休憩のあとは「祝典行進曲」からはじまる。これは現在の上皇が皇太子の時の美智子妃殿下との御成婚を記念して献上された作品である。その後半の演奏会が始まる前に、何やら会場がざわついた。そして盛大な拍手が起こる。1階席の前方から後方に伝播し、みんな2階席を見上げている。團伊玖磨自身が現れることは有り得ないし、演奏会では会場に有名人がいることも多いがそんなことでいちいち大騒ぎはしないものだが、これは尋常ではない盛り上がりだ。私は1階の後ろの方にいたのだが、少し移動して2階席を見上げてみると、明仁上皇と美智子上皇后御夫妻がいらした。今まで何度もコンサートに行っているが、このようなことは初めてだ。入場時の荷物検査の理由もやっと分かった。

準備が整い指揮者が登場すると、会場もさっと静かになる。そして、上皇・上皇后とともに「祝典行進曲」を聴いたのである。当時はまだ戦後を引きずっていて、行進曲=軍国主義的音楽という考えがまだ根強かったらしいのだが、この「祝典行進曲」は「平和な時代の美しい行進曲が有り得るのだ」という強い思いで書かれたそうだ。今日の演奏を聴いても、軍靴の音は聞こえてこない。平和で穏やかな行進曲だなと、改めて思ったのである。

続いては合唱曲である。團の合唱作品の中でもたぶん最も有名な「筑後川」である。5曲から成る組曲だが、最後の「河口」は、私も中学か高校かくらいの時から知っている。ただ、5曲を通して聴くことはあまりなかったかもしれない。阿蘇の水源が筑後平野を潤しながら、やがて大河となって有明海に注ぐ一連の流れを歌ったもので、これを人間の成長にも擬えて、卒業式で「河口」を歌う学校もあるというのも、よく分かる気がする。

プログラムの最後は「西海讃歌」である。これはもしかしたら初めて聴く曲かもしれない。前半はオーケストラだけで演奏され、後半から合唱が加わる。長崎県佐世保市のための作品であるが、合唱が歌う「人よ、心いっぱいに 美しい心を持って この海を、この空を、この土を 愛そう」は、どの土地にいても響く言葉ではないか。最後に、上皇・上皇后といっしょにこの合唱曲を聴けたのは素晴らしいことだったといえるだろう。

最後にアンコール演奏があるらしい。「花の街」である。会場の人もいっしょに歌いましょうという。この展開はプログラム冊子の裏表紙に「花の街」の歌詞が書いてあったので、最初から予想通りである。小林沙羅も加わり、小林武史もオーケストラに加わり、会場全員参加の「花の街」で、演奏会の幕を閉じた。指揮者、演奏者、そして客席の上皇・上皇后に盛大な拍手が送られた。

終演後に会場を出る時に、「ぞうさん」の自筆譜をカードにしたものが全員に1枚ずつ配られた。
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