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2018年10月12日22:45

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【映画】 「銀嶺の果て」 (1947年、東宝)

今日は早く帰ったので、夜は自宅で映画DVD観賞。

 「銀嶺の果て」 (1947年、東宝)
    監督:谷口千吉、脚本:黒澤明、音楽:伊福部昭

谷口千吉監督第一作にして、三船敏郎の映画デビュー作、伊福部昭の映画音楽第一作でもある。この映画は、まずは音楽から入った。「伊福部昭百年紀」の演奏会でこの映画に使われた音楽を聴いたのが初めてで、音楽を聴いた時に、これは良い映画に違いないと想像できた。ようやく、映画そのものを観たのである。

予想に違わず、素晴らしい映画であった。

銀行強盗を働き、北アルプスの山中に逃げた凶悪犯三人組、野尻(志村喬)、江島(三船敏郎)、高杉(小杉義男)。豪華な濃い三人組だなあ。

銀行を襲うシーンはオープニングの中に重ねられ、逃亡後からストーリーが始まる。麓の警察では、犯人の足取りを予測する。「鹿の湯」まで一本道、その先に農林小屋があって、さらに先にスキー小屋があるが、その間は雪崩危険箇所であることなどから、袋のネズミであることが説明される。(これは観ている人にも、このあとのイメージが掴みやすい。)

「鹿の湯」の温泉宿に来た三人組が、ラジオで聞いた逃亡犯ではないかと疑う学生の泊り客二人組。証拠をつかみ、町に出ようとするところを高杉が捕え、押し入れにぶち込む。泊っていた人夫(注:今は使えない言葉らしい)たちは、動けないようにと着物を奪って裸にする。宿の人は地下に閉じ込める。凶悪犯であり、ピストルも持っていながら、誰一人傷付けないのだ。

警察が間近に迫っていることが分かり、宿を抜け出しさらに奥に進む三人組。冬の山中とて当然厳しい。そんな時に、無人の農林小屋が見つかり、ここで夜を明かすことにする。火を焚いて生き返った心地の3人。バラバラになっても大丈夫なようにここで「稼ぎ」を山分けし、それぞれ1/3ずつ持つことにする。犬の声が聞こえたので、警察が近くまで来たことを察し、急いで小屋をあとにする3人。案の定、警察の姿が見えた。最年長の高杉は遅れがち。犬に発砲すると、その衝撃で雪崩が起き、高杉は呑まれてしまう。「かわいそうなことをした」という野尻、「あの札束がもったいない」という江島。このあたり、残った2人の対照的な部分が垣間見える。

ここから先は素人には無理な山越えであるが、戻ることは警察に捕まることを意味する。とにかく進むしかない。飢えと寒さでやられそうになった時に、スキー小屋を発見し、中に人がいることを知る。

老人と孫娘と登山家の青年。春枝(若山セツ子)や、登山家本田(河野秋武)と触れ合ううちに、すっかり打ち解けてくつろいでいる野尻、一方終始イラついている江島。ラジオが電池切れで使えないことを知るや、麓との連絡用に鳩を飼っていることを知り、妙に気にする江島。翌朝、鳩が死んでいるのを見つけて悲しむ春枝。(鳩がなぜ死んだのか説明もないし、そのようなシーンもないが、江島が殺したことは観ている人には分かる。余計なシーンはなくても分からせる描き方はうまい。)

本田に、さらに先の山越えの案内をしろと脅す江島。「危険な案内は出来ない」と断るが、ピストルを突きつけられては従うしかない。本田は、野尻と江島を縄でしばり、危険な雪の山中を進む。「縄でしばるか、縁起でもねえ」と江島。野尻と江島は足を滑らすが、本田が縄でささえて助かる。しかし、この時に腕を折ってしまった。「こんな怪我人はほっといてさっさと行こうぜ」という江島。「そんな恩知らずなまねは出来ない」という野尻。「俺は一人でも行くぜ」と縄を解き、ついでに野尻から「あんたの持っている札束も渡しな」と奪う。「その縄とトンカチもよこしな」と江島が言うと、ついに野尻が怒り、もみ合いになる。その結果2人して足を滑らすが、縄で本田とつながっている野尻だけが助かるのである。(江島の滑落シーンはないが、縄を解いた江島が助からないことは観ている人には分かるのである。)

警察が待機していることは分かっていても、怪我人の本田をおぶって小屋に戻る野尻。「なんであの時に縄を切ってしまわなかったんだ」という野尻に対して、「山ではどんなことがあっても縄を切ってはいけないのが掟ですから」と答える本田。小屋に戻ると、やはり警察は待機していた。「山は悪い人は帰すはずがない」という小屋の老人。野尻が根っからの悪人ではないことを見抜いていたのだろう。

護送される汽車の中で、「もう一度山が見たい」と、窓を開けることを頼む野尻...

ストーリーをくどくど書き過ぎたが、本当にいい映画だなあと思った。

この古い映画を見るきっかけとなった伊福部音楽も素晴らしい。「ゴジラ」だけではないのだ。本田と春枝がスキーに興じる場面では、監督は明るい曲を要求したが、伊福部が付けた音楽は、コール・アングレ1本で奏でる物悲しいメロディー。これが監督と作曲家の対立の原因となったが、伊福部は譲らなかったという、伊福部らしいエピソードもある。鳩の死を悲しむ場面では、音詩「寒帯林」の第2楽章をピアノで弾いた曲が使われていて、ここも印象的だ。

あと、フォスターの「マイ・オールド・ケンタッキー・ホーム」も、印象的に使われている。この曲は野尻の郷愁を誘った。「日本も西洋も人情に変わりはない」 そのアメリカと、この映画の2年前まで戦争していたとは...。 残念ながら、今はこの曲を聴くと、フライドチキンが浮かんでしまうのだが...

この映画は三船敏郎が主役のように言われることが多いが、主役は志村喬だと思う。そして、若山セツ子演じる春枝の清純可憐な少女。こんな人と山小屋で触れ合ったら、凶悪犯も改心しますよ。(三船敏郎はしなかったが。) その若山セツ子も、その後は幸福な人生ではなかったのだが...
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