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2012年07月08日20:34

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【鉄道】 大井川鐡道日帰り旅

今日の天気は雨がちとの予報だが、急に大井川鐵道に乗りたくなって出かけることにした。大井川鐵道は、静岡県の金谷から千頭を経て井川まで大井川に沿って走る路線で、SL列車の運転を続けていたり、日本で唯一のアプト式勾配区間があったりと興味深いが、なぜか今まで乗ったことがなかった。自宅のある川崎市から行くには、日帰りではやや遠いが泊りがけで行くほど遠くないという、微妙な距離であることも一つの要因だろう。たしかに日帰りでは終点まで行って帰るだけになりそうだが、今回はそれでもよいので、まずは乗ってみることにした。

小雨の降る朝の新横浜駅に到着し、「ひかり461号」岡山行きに乗車する。最近は新幹線は「のぞみ」ばかりに乗っていて、「ひかり」は久しぶりだ。7号車に乗ったが土曜日だというのに、ガラガラに空いていた。新横浜を出ると次は静岡である。静岡からは4両編成の普通電車に乗り換えて金谷に向かう。東海道本線といえども、15両編成の電車が走る東京口と比べると、このあたりはローカル線(?)のようだ。島田を過ぎて大井川を渡ると、右側から大井川鐵道の線路が合流し、間もなく金谷に到着だ。

金谷駅で降りるのは初めてである。駅前もあまり栄えているようには見えず、大井川鐵道への乗り換え以外では降りる機会はあまりなさそうだ。JRの改札を出て右に行くと、大井川鐵道の駅舎がある。ここで「大井川・あぷとラインフリーきっぷ」を購入する。大井川本線と井川線が乗り放題で5,500円で、単純に金谷と井川を往復するだけでも得だ。(フリー区間は新金谷−井川で、金谷−新金谷は1往復のみ有効となっている。) また雨が降ってきた。少し強いようなので、駅の待合室で待っている。9:14発の千頭行きは元近鉄16000系の車両だ。ローカル私鉄のホームにかつての近鉄特急車両が停まっているという、一見ミスマッチな光景が面白い。もちろん普通列車として使用している。

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(大井川鐵道金谷駅)

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(金谷に停車中の元近鉄車)

雨の降る中、近鉄車両の大井川鐵道は定刻に出発した。大きくカーブを描いて東海道本線と離れると、すぐに新金谷に着いた。ここでかなりの客は降りてしまった。この列車のあとに出るSL列車に乗るためであろう。ホームには旧型客車が停まっていて、そこだけ見ると平成時代からいっきに昭和30年代にタイムスリップしたようだ。SL列車も魅力だが、今回は路線そのものを楽しむことにして、このまま普通列車に乗って千頭まで行くことにする。五和までは駅間も短く市街地を走る。ここまでで地元の客もかなり降りてしまい、すでにかなり空いてきた。観光客はSL列車に流れ、おかげでゆったりと旅が出来るので、むしろ普通の電車の方が良い。五和を過ぎて新東名をくぐると駅間も長くなり、車窓風景も変わってくる。大井川が右側に現れ茶畑が広がる。大井川と茶畑はこの鉄道の沿線風景の主役たちである。

神尾を過ぎると最初のトンネルがあり、早くも山間部に入っていくようだ。元々特急用の車両なのにゆっくりと走りなんとなく変な感じだが、それもまた良いだろう。家山は旧川根町(現在は島田市の一部)の中心駅で、沿線では比較的利用客の多い駅のようだ。ここで降りた人も多く、いよいよガラガラになった。次の抜里を過ぎると大井川を渡り、川は車窓左側に移るので、席も移動する。鉄橋の下にはカメラを構えた人が多い。もちろん後続のSL列車を撮るためだ。年配の人が多いのはSLに郷愁を感じる世代だからだろう。女性も多いのは「鉄子」ブームなのか。川根温泉笹間渡を過ぎいくつかのトンネルを抜けて川根本町に入る。川根茶の産地として有名で、静岡市と浜松市の二大都市に挟まれながらも、川根本町として合併されずに残っている。

地名で2回目の対向列車とのすれ違いだが、いずれも近鉄の車両だった。南海や京阪の車両は走っていないのだろうか。列車はさらに進み、田野口に到着。ふと見ると駅の周りにアジサイが咲いていた。アジサイはこのあともところどころで見られたが、アジサイほど雨の似合う花はないだろう。駿河徳山も沿線では駅周辺が少し栄えたところのようで、ここでも2人ほど降りて、いよいよ乗っている車両は貸切状態同然になってしまった。隣りの車両にはまだ少し乗っているようだ。金谷を出て1時間13分で終点の千頭に着いた。

千頭は大きな駅だ。さすがに観光拠点の駅である。ここから井川線にすぐに接続しており、金谷からの電車に乗ってきた客のほとんどが乗り換えてしまった。「あぷとラインはこちらですよ」と案内しており、「いや、千頭でおります」と言ってフリーきっぷを見せると、「次のあぷとラインは1時間以上後ですよ」と親切に教えてくれる。もちろん承知済みだが、井川線を1本見送って千頭駅で降りる人は珍しいのだろうか。また雨が降ってきたが、ちょうどいい雨宿り場所が駅構内にある。「SL資料館」である。入館料は100円だが、無人の料金箱が置いてあるだけで、不心得者ならばお金を払わずに入ってしまいそうだ。もちろん自分はそんなことはしない。それどころか、入場券は駅の窓口でも売っているとあるので、記念にもなるからとわざわざ駅で買って入った。大井川鐵道は、C11227、C5622、C108の他、今は動かしていない機関車も含めて多くのSLを保有している。今でこそJRなどもSL牽引のイベント列車を時々走らせているが、大井川鐵道は昔からずっと実施していて、鉄道ファンのみならず多くの観光客を集めることに成功しているのだ。誰もいない館内で展示を一通り見て外に出たら雨は止んでいた。

まだ時間があるので駅の向こう側に行ってみると、道の駅「音戯の郷」がすぐ近くにある。中に入ってみると、文字通り「音と戯れる」ことをテーマにした体験型ミュージアムで、音楽好きとしては興味あるところである。無料で見られるスペースと有料のスペースがあるが、広場にあるレールを使った楽器(?)や、パイプを使った楽器(?)などで遊んでいたら時間がたってしまったので、有料の建物には帰りにでも寄ることにして、駅に戻ることにした。

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(千頭駅)

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(SL資料館)

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(音戯の郷)

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(音戯の郷内の「楽器」)

千頭駅に戻ると、SL列車が到着したばかりで、先ほどまでとは違いかなり賑わっている。これは次の井川線は混雑しそうだ、やはりさっきのに乗れば良かったと後悔しかけたが、SLだけが目的の客が多く、井川線は、ガラガラではないにしてもゆったりと乗れる状態で良かった。井川線、通称「南アルプスあぷとライン」は、本線に比べると小さな車両で、客車4両にディーゼル機関車が付いている。井川に向かう場合は機関車は一番後ろで、先頭の客車にある運転席から制御する。ヨーロッパの鉄道にあるようなプッシュプル方式だ。11:36の定刻に発車した。すぐに踏切を2回通るが、踏切のあるような市街地はここまでで、このあとはどんどんと山奥の秘境へと入っていくのである。これから終点の井川までトンネルが61か所もある。

車両基地のある川根両国を過ぎると、沢間、土本と続く。プラットホームもないような駅で、利用客がいるのかも分からないような駅だ。車掌も乗務しており、本線と違って観光色の濃い路線なので、いろいろな観光案内をしてくれる。大井川と寸又川の合流点を見下ろすと水が濁っている。「最近は雨が多かったため、水嵩が増して水は濁っています」と、分かりやすい説明が付く。そういえば、いつの間にか雨も止んで太陽が照っている。川根小山では千頭行きとすれ違い、「千頭行きに戻る方は乗り換えが出来ます」と案内している。フリーきっぷを使ってそんな乗り方をする人もいるのだろうけど、今日は誰もいなかったようだ。奥泉は意外なことに駅員もいる立派な駅で、ここからも寸又峡温泉に向かうバスに接続しているという。1時間以上待つのを「接続」というのかどうか分からないが、降りた人も少しいた。

次のアプトいちしろ駅から先は、この路線のハイライトの一つだ。日本で唯一のアプト式区間である。もともと井川線はこのアプトいちしろの少し手前から接阻峡温泉までは別のところを通っていた。ダム工事のために線路を付け替えることになり、結果として急勾配を登らざるを得ず、アプト式機関車の導入となったのである。線路の一部は湖底に沈み、わざわざ面倒な機関車の増結をしなくては登れないようなルートとなったが、それを利用して「日本唯一のアプト式鉄道」として観光客を集めている。本線のSL列車もそうだが、不便で時代遅れなものを逆に上手に利用して観光客を呼んでいる訳で、不採算で廃止になるローカル私鉄も多い中、これは評価に値すると思う。

アプトいちしろでは、アプト式機関車を連結するために4分ほど停車する。ほとんどの客がホームに降りて見物している。ちいさなディーゼル機関車とは大きさも不釣り合いな電気機関車が後ろに付いた。ここから次の長島ダムまでは井川線唯一の電化区間で、ラックレールに歯車をかみ合わせたアプト式電気機関車の動力で登っていく。90パーミルという急勾配は乗っていても実感出来る。近くに見えた湖面があっという間にはるか下の方に見えるのである。井川線の旧線路も見ることが出来て面白い。長島ダムで、アプト式機関車を切り離し、再びディーゼル機関車の動力で進んでいく。このあとも勾配を登っていくことには変わりない。

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(千頭に停車中の井川線列車)

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(アプトいちしろで電気機関車連結)

ひらんだを過ぎると奥大井湖上だ。文字通り湖の上のある駅だが、ここで降りた人が意外に多かった。これまで客の乗り降りはほとんどなかったが、この駅でたくさん降りるとは予想していなかった。湖の上に駅があるというだけの駅なのに、そういう「何もないけどちょっと変わった駅」がちょっとしたブームになっている一例だろうか。次の接阻峡温泉駅でも降りた人が多い。途中駅で降りる人も結構いるとは予想していなかった。接阻峡温泉を過ぎるといよいよ秘境に入っていく。尾盛は駅周辺には何もない。道すらもない。ここに来る手段はこの列車しかないが、降りても何もない。もともとはダム工事関係で利用することがあったのかもしれないが、今は無用の駅だろう。尾盛を過ぎると関の沢鉄橋を渡る。この鉄橋の途中で列車は「観光停車」をした。71mの高さにある鉄橋から下の渓谷を見下ろすことが出来る。もう言葉も出ない。

次の閑蔵付近では滅多にないというダムの放流を見ることが出来た。これも車掌の丁寧な案内があるため見逃すことがない。閑蔵で千頭行きとすれ違う。閑蔵から井川までの最後の1区間もこの路線のハイライトの一つで、山奥の秘境にまで来たのだという以外に言いようがない。千頭から1時間48分もかけてようやく井川に到着したが、決して長いとは感じないくらい面白い路線である。

井川駅は海抜686メートル。意外とちゃんとした駅で、下におりると店も1軒だけある。しかしあるのはそれだけで、あとはダム(井川湖)があるばかりだ。携帯の電波も弱く、ほとんど「圏外」表示だ。しかしここは静岡市葵区なのである。静岡駅前と同じだ。大井川鐵道を、「島田市から川根本町を経て静岡市葵区まで行く路線」と説明すると、全く正しいにも関わらず誤解されそうである。

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(関の沢鉄橋からの眺め)

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(井川に到着した井川線)

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(井川駅)

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(65キロ鉄道旅の終わり)

井川から18分後の13:46に折り返す千頭行きに乗車する。この列車を逃すと次は最終列車しかない。井川を出る列車は1日に4本しかないのだ。次の閑蔵から千頭行きのバスに乗り換えることが出来るという。バスに乗ると、列車で1時間半かかるところが30分で着いてしまい、千頭からの2本前のSL列車にも間に合ってしまうという。この案内を聞いて閑蔵で降りた人が10人くらいいた。不思議なことにほぼ3両目にいた乗客で、別に団体ではなさそうだが、釣られて降りた様子だ。4両目にいた乗客は、自分も含めてそのままのんびりと井川線で同じ道を帰ることにした。急ぐ理由は何もない。帰りの列車も車掌の案内放送が入るが、「もう一度ご覧下さい」という言い方をする。それもそのはずで、井川まで乗った客のおそらく全員が同じ列車で折り返しているのだ。行きとは違った案内もあり、見逃したところを再度見られるような配慮もある。なかなか行き届いている。関の沢鉄橋での「観光停車」も同じく実施する。

閑蔵でバスに乗り換えた客でほぼ空車になった3両目だが、接阻峡温泉からの団体客がほぼこの車両に乗った。ここからの団体客を乗せるためにわざと閑蔵で降ろしたのではないかと思うくらい、実にうまく出来ている。奥大井湖上では誰も乗ってこない。先ほど降りた客は1本前の列車で戻ったのだろう。この奥大井湖上で、車掌がホームに降りて時計を外して持っていった。修理でもするのだろうか。そういえば、先ほどどこかから業務連絡を受けていた。長島ダムで、意外なことに自分以外の4両目の乗客がみな降りてしまった。6人くらいいた車両が貸切状態になった。ここでアプト式電気機関車を連結する。上り坂では下から押し上げるが、下り坂では下で踏ん張る役目だ。アプトいちしろで機関車を切り離し、さらに山を下って行く。奥泉で接阻峡温泉から乗ってきた団体客がおりて、再び3両目に客がいなくなった。今日は寸又峡温泉に泊まるのだろう。奥泉からバスが出ている。奥泉を発車した直後、車掌(この時は4両目にいた)が、「あ、しまった!」と突然言う。奥泉の駅員に、「時計渡すの忘れてた! 次ですれ違うのに渡すから!」と伝えつつ駅を離れていった。時計は4両目には置いてないし、車両間の移動は出来ないのでこうするしかないだろう。ちょっとしたことでも楽しませてくれる、ほのぼの路線でもある。次の川根小山で無事時計は対向列車に渡ったようだ。列車はさらに進み、川根両国を過ぎて市街地に入ると間もなく千頭だ。閑蔵で降りた客はとっくにいないだろう。

時刻は15:37。とっくに正午は過ぎているが、ここでようやく昼食だ。次の金谷行きは16:54までないので、ゆっくり出来る。たまたま目についた「ゑびすや食堂」に入り、メニューを見ると「千豆定食」なるものがある。これは何かと尋ねると、「大豆と川根茶の天ぷらに、豆腐のハンバーグに、豆腐の味噌汁に、ご飯と漬物」と、ヘルシーな料理のようだ。「千頭」の地名と「豆」を引っ掛けた命名も面白く、これを注文したが結構美味しかった。まだ時間があるので、もう一度「SL資料館」でも見ようかと思ったら、16:00で閉館とのこと。仕方ないので、「音戯の郷」に行ってみる。すると間もなく「蛍の光」が流れてきた。こちらは16:30で閉館するという。10分で見るのは無理なので、次回来た時の楽しみに取っておこう。何もしないのも癪なので、レールで作った楽器で、「蛍の光」を演奏(?)してきた。駅前にある小奇麗なお店「Ren」(喫茶店兼雑貨屋?)を覗いてみる。折角来たのだからと川根茶を注文したら、本格的に淹れてくれるもので時間がかかり、かなり時間がギリギリになってしまったが、ちょっと渋味の効いた川根茶を飲んで急いで駅に向かった。

帰りの金谷行きは、元南海21000系の車両だ。近鉄の車両に比べると少しグレードが下がるが、むしろこちらの方が、ローカル線の車両らしくて良いと思う。帰宅の高校生も乗っていて、完全に生活列車だ。高校生が降りる駅に着くと、駅前に迎えの車が現れて乗り込んで行った。どこのお嬢様かと思うが、他に交通機関がないところでは普通のことなのだろう。この電車で金谷まで戻る予定だったが、ふと気が変わり新金谷で降りた。大井川鐵道の本社もここにあり、車庫もあり、SL列車の始発駅もここだ。金谷よりも新金谷が実質の起点駅のようである。ホーム横には旧型客車が並び、ここだけを見ると平成時代には見えない。行きの近鉄車両の車内から見た時よりも一層感じた。今度はSL列車に乗りに来たいと思う。

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(千頭に停車中の元南海車)

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(新金谷駅で昭和にタイムスリップ)

次の金谷行きは1時間以上後なので、金谷までは歩いた方が早そうだ。新金谷−金谷は大きくカーブを描いて大回りしているが、直線距離では近く道も分かりやすい。徒歩で20分ほどで着いた。金谷ではちょうど行ったばかりで20分近く待つことになったが、18:49発の熱海行き普通で静岡まで乗り、ここから「ひかり478号」で新横浜まで帰った。帰りの「ひかり」は三島にも停車した。静岡県内は午後はずっと晴れていたが、神奈川県内に入ったら雨だ。新横浜に着いても降っている。地元の駅に着いたら雨は止んでいたが、激しく降ったあとがあった。
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