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2025年06月14日01:55

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「大谷探検隊 吉川小一郎」展

龍谷ミュージアムで「大谷探検隊 吉川小一郎」展を見てきました。

吉川小一郎は1911年から1914年にかけて行われた第3次大谷探検隊の隊長でした。近年吉川家で新たな資料があることがわかり、今回の展覧会につながりました。
まず最初に荷物を積んだラクダが砂漠を行くいかにも「シルクロード」な写真がでっかーーーく引き延ばされて展示されています。これだけ大きいと臨場感たっぷりです。
それから、さらに二楽荘の同じぐらい大きな写真。二楽荘を訪問した気分になるぐらい。
なんで二楽荘かと言いますと、吉川小一郎は大谷光瑞の命を受けて二楽荘建設に携わっていたのです。二楽荘完成後もそこに勤務していました。大谷探検隊に派遣されたのはその後です。

とりあえずおさらい。
大谷探検隊は、西本願寺の第22代宗主・大谷光瑞が、20世紀初頭に仏教の来た道を明らかにするためにインドや中央アジアを調査した探検隊です。大谷光瑞はロンドンに留学していましたが、その帰途、インドから中央アジアへ赴き、仏教遺跡を中心に発掘や調査などを行いました。その後第二次探検隊として橘瑞超を派遣、そして第三次に吉川小一郎を派遣しました。

また、大谷光瑞はその途中で建築家の伊藤忠太と知り合いました。帰国後六甲山麓に別邸を建てたのですが、その時に設計を依頼したのが伊藤忠太です。奇想の建築家、伊藤忠太の建築でも特に風変わりな洋風建築でした。大谷探検隊の収集品は二楽荘に集められ、研究と一般向けの展示が行われました。

今回の展示で興味深いのは、吉川小一郎の書簡が多数展示されていたことです。吉川家の遺族に伝わる遺品から確認されたもので、公開は初めてです。主に現地から家族宛のもので、現地の様子がリアルタイムで伝わってきます。封筒と本文がセットで展示され、差出の住所が現地になっています。長時間馬にゆられてお尻が痛くなったらしく、ユーモラスな絵を添えてその心境を描き出したりなどしています。

現地で収集した出土品も展示されていました。
トルファンで発掘されたものが多く、「伏羲女媧図」が複数。連珠文に動物を描いた織物。経典などの文書。
現地で採集された植物標本。

また、大谷探検隊の派遣にはマスコミも注目していたらしく、出発時の書簡には当時の新聞記事の切り抜きが添えられていました。その記事には「新疆の橘瑞超師と交代」と書いてありました。橘瑞超はまだ先般の探検から帰国しておらず、吉川小一郎とは敦煌で落ち合ったそうです。二人が映る写真も展示されていました。
探検に出かけるにあたり参考にしたと思われる「伊犁紀行」には地図が添えられていますが、当時は地図と言ってもこれぐらいしかなかった模様。
あとは「素人薬物学」とか「素人診断学」とか、なんだか怪しげな本も持って行ったようですが、これは今の「家庭の医学」みたいな一般向けの病気の情報の本だったようです。
大谷光瑞からの発掘指示書も展示されています。

それから写真機一式。ガラス乾板など。吉川小一郎は写真撮影を趣味としており、探検に際しても撮影技師を兼ねていました。
その他温度計に高度計。帽子、防寒用靴下に靴。

おもしろいものは、現地で馬を調達するための「馬票」です。日付が「宣統四年」になっています。宣統帝は清朝最後の皇帝ですが、三年で辛亥革命が起こって退位しました。なので「四年」はないのです。吉川小一郎が新疆に向かったのは1911年で、行っている間に辛亥革命が起こり、中華民国になりました。しかしその情報が奥地まで行き渡っていなかったようです。ただ「新疆省」という行政区分は変わらなかったようです。
ついでに、日本では明治天皇が1912年に崩御し、吉川小一郎が新疆にいる間に明治から大正に時代が変わっております。

天山山脈にも登り、「天山」というレポートを作っています。吉川小一郎はまた日本山岳会の会員でもあり、山登りを趣味としていました。

現地で撮影した写真の写真帳もあります。

今回、この写真帳と「天山」のコピーが閲覧コーナーで全ページ見られます。
写真帳には手書きのキャプションも付いており、全ページしっかり見てきました。写真をたどると旅程をたどることができました。
西安では大雁塔や小雁塔などが撮影されていました。驪山の温泉宮にも行っています。敦煌莫高窟はかなりの荒れっぷりです。ウルムチやトルファンの市街地はさすがに私が見たものと通じるものは何もありませんが、遺跡は同じです。トルファンの交河古城、高昌古城。アスターナの出土品の写真もあります。おお、見覚えがある。
クチャのスバシ故城の写真もいくつか。発掘の様子も撮影されています。キジル石窟の壁画の写真もあります。クチャの市街地は、日干し煉瓦と思しき建物が並び、私が行った時と近い感じです。カシュガルではエイティカール寺院も映っています。ホータンのヨートカン遺跡も訪れていますが、当時からすでに何もありません。
現地の人たちのことは「纏頭」と書いてありました。そのころはまだ「ウイグル人」という呼び方は定着しておらず、中国では新疆にいる人たちを「チャントウ(纏頭)」と呼んでいました。ターバンを巻いたイスラム教徒のことです。言語のことも書簡ではトルコ語(ウイグル語)という風に書いてあります。

大谷探検隊がもたらした収集品は二楽荘で研究・展示が行われましたが、展示の様子を写したやや大きめの写真がありました。ああ、タイムマシンがあったら二楽荘の展覧会に行きたい。

しかし、吉川小一郎が帰国してまもない1914年、大谷光瑞は財政難などの責任を取って宗主を辞任することになりました。そして二楽荘は売却を余儀なくされました。売却の準備をしながら展覧会を行っていたようです。吉川小一郎は売却にもかかわりました。

ミュージアムシアターでは吉川小一郎に関する映像が上映されていました。
これは遺族の遺品から確認されたものの中に最晩年(90歳過ぎ)のインタビュー音声が出てきたものから構成したものです。

「吉川小一郎が語る大谷探検隊秘話」では、撮影した写真は現地で現像したこと、その前の探検隊が未現像のフィルムを持ち帰った所、画像が劣化しているものがあったので、撮影してあまり間を置かずに現像した方がいいとの判断で現像したといったことが語られていました。そして新疆あたりではまだ写真は珍しく、現地の人を撮影すると喜ばれたこと。出土した文書などを持っている人の奥さんを撮影して交換条件で文書を手に入れたと言ったことも語られています。また、薬の瓶の入った薬箱を持たされましたが、特に病気をすることもなく無事に旅程を終えたということです。

「吉川小一郎 二楽荘を語る」では売却の経過などが語られました。元は浅野セメントの社長が買取を希望していましたが、六甲山麓に別邸を構える久原房之助が、二楽荘から別荘が丸見えなので、浅野に売却されたら困ると言ってきて、結局久原が買い取ることになったということです。

資料は音声のみですが、画面は主に二分割されて、半分は吉川の晩年の写真や関連写真を映し出し、もう半分は音声を文字化して映し出すという方法でした。音声がやや不鮮明な部分があったので、文字化されたのはよかったです。

最後に、学芸員からのメッセージとして、今回この音声が見つかったことで、吉川小一郎に関する展覧会の企画が始まったそうです。そんな時「磁石」のように、関連資料が集まって来て、実際に展覧会を実行することができたということです。そういうことってあるんですね。学芸員さんたちはさぞやりがいを感じたことと思います。

で、図録も買ってしまいましたよ…。あまり分厚くはありませんでした。やっぱりねー、西安〜敦煌〜新疆をたどる旅程が読めるのがそそられます。写真も多数。
先日タクラマカン砂漠一周鉄道の開通番組で、最新の新疆の様子にビックリしましたが、あそこまで開発されていない時代に行っておいてよかったとつくづく思いました。

おまけ。
「二楽荘と大谷探検隊」の展覧会の日記です。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1934600384&owner_id=1362523

それからのいもづるで行ってしまった旅順博物館ツアー日記。長いので一部だけリンク。

大谷探検隊の軌跡をたどる旅順の旅(1)
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1939786923&owner_id=1362523

大谷探検隊の軌跡をたどる旅順の旅(2)
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1939893825&owner_id=1362523

大谷探検隊の軌跡をたどる旅順の旅(3)(大連図書館の大谷光瑞の蔵書)
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1940009115&owner_id=1362523

大谷探検隊の軌跡をたどる旅順の旅(6)(旅順博物館:先生による講義)
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1940605435&owner_id=1362523

大谷探検隊の軌跡をたどる旅順の旅(8)(旅順博物館:展示・出土品)
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1940922388&owner_id=1362523

大谷探検隊の軌跡をたどる旅順の旅(9)(旅順博物館:ミイラ室)
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1941067684&owner_id=1362523

大谷探検隊の軌跡をたどる旅順の旅(10)(大谷光瑞別邸)
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1941168182&owner_id=1362523





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