最近読んだ本の、備忘的メモ。
●「数学の思想[改版]」 (村田全/茂木勇著、NHK出版)
この本の初版は1966年で、その改版として2024年に発行されたものだ。前半は数学史を古代ギリシャやアラビアからたどっていき、論証を主とする考え方、インドの数学と記数法への流れ、不可能問題の発端と解決への道、さらに無限論から微積分学まで、その根底にある思想を絡めて解説している。後半は実数と虚数の概念、位相幾何学や代数的構造の話、確率論などを経て、オペレーションズリサーチや電子計算機に至るまで、現代数学(といっても60年近く前だが)の背景となる思想を概説している。数学は論理であり、十進法は素晴らしい発明であり、そして記号を用いることがいかに画期的なことであったか、これらこそが数学の核心であると説く、古典的名著の改版再発行である。やはり数学に関する本は面白い。
●「オオルリ流星群」 (伊与原新著、角川文庫)
四十五歳になり、漠然と将来に不安を抱える久志は、国立天文台の研究員になっていた高校の同級生の慧子が地元に帰ってきたことを聞く。それをきっかけに同級生たちが久しぶりに集まってきた。高校時代に文化祭で空き缶を使った巨大タペストリーを作った仲間たちだ。慧子が帰郷した理由は、天文台研究員を辞めて、地元秦野の丹沢山中に手作りの天文台を作ろうということらしい。当時を思い出すかつての仲間たちだが、中心人物だった人は完成を待たずに仲間から離れ、翌年には亡くなってしまうという暗い過去もあった。一人欠けたメンバーながらも、高校時代に戻ったかのようにみんなで天文台作りを楽しむが、その過程で仲間の過去の秘密も明らかになってくる。そんな痛みを抱えつつも、それぞれ新たな一歩へ踏み出そうとする「四十五歳の青春」の物語である。著者は地球惑星科学専攻の理学博士でもあり、作中にも天文学の要素が盛り込まれている。こういう小説は私のような理系人間には合うようだ。
●「鉄道がつなぐ昭和100年史」 (小川裕夫著、ビジネス社)
令和7年は昭和100年にあたるわけだが、その昭和100年史を鉄道をベースに書いた本である。単に時系列に鉄道史を並べるのではなく、テーマ別にトピックスを書いていくスタイルとなっている。まずは、貨物列車がどのように生まれ、どのように変わっていったか、行商列車や砂利輸送などを含めて書いている。続いて、戦後のGHQと鉄道の関係、そして世界を変えた新幹線の誕生とその後の新幹線網の全国展開、さらにマイカー普及により転換を迫られた鉄道は旅行者を創出するために誘客キャンペーンを行う。私鉄は住宅開発とニュータウンに新たなビジネスモデルを見出す。そして国鉄は解体され民営会社として新たなスタートを切るが、そこには経営効率化という視点が重要になってきて、機械化や省力化が進んだ。そして、郊外志向から都心回帰への変化、コロナ禍以降の生活様式の変化、少子化など、現在も鉄道事業者のかかえる課題は多いのだ。
●「気になる日本地理」 (宇田川勝司著、角川文庫)
中学・高校の地理の復讐のような本だが、なるほど、著者は元中学・高校教師という経歴らしい。山地と山脈、湖と池と沼、海抜と標高、天気と天候と気候、等々、どう違うのかきちんと説明出来る人は案外少ないかもしれないが、そんなところから入り、地理用語の由来、地方区分の決め方、領土・領海・領空の定義、島の定義、一級河川と二級河川の定義、さらに地域ブランドとなっている作物や産業のそもそもの由来、東西の電力の周波数の違う理由から、食文化の東西差異まで、目新しい話はないものの、分かりやすく網羅的に書いた本である。地図やグラフを多用しているあたりが、なんとなく地理の教科書っぽい。
●「不適切な昭和」 (葛城明彦著、中公新書クラレ)
昭和時代には令和の現在では考えられないようなことが普通に行われていたが、誰もそれを問題とは思わず、当たり前だとしていた。そういったものを具体例を挙げながら、社会、学校、家庭と職場、交通、女性、メディアと芸能界の6つの章に分けて書き綴った本である。当時は煙草はどこでも吸えたし子供でも買えた。そもそも成人男性の喫煙率が8割以上だったのだ。当時の学校で普通に行われていたことも、今考えると不可解なことも多いし、危険だからと止めたものも多い。職場でのパワハラやセクハラは当たり前、そもそもそんな概念すらなかった。女性社員の定年は25歳とされ、仕事は事務作業のみ、男性社員の嫁候補としてのみ価値があった。個人情報も普通に公開されていた(芸能人など有名人の住所も普通に雑誌等に載っていた)し、挙げればきりがない。それが良かったのか悪かったのかという話ではなく、同じく昭和を生きた世代として、そうだったよなあと思える内容の本である。
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