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2019年03月24日20:00

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【音楽】 日本人作曲家の作品を聴く (その13)

昨日から今日にかけて聴いた、日本人作曲家のCDをまとめておく。出かけたり、いろいろ雑事をしたりの合間に聴いたものである。(「最近購入したCD」は昨日の日記に書いたので省略。)

●伊福部昭
 ・交響頌偈「釈迦」

   大植英次指揮 東京交響楽団/東響コーラ ス(合唱)    (2014)

2014年5月31日(伊福部昭「百歳」の誕生日!)にミューザ川崎で行われた演奏会のライブ録音である。「釈迦」は演奏会の最後のプログラムであり、2枚組CDの2枚目だ。もちろん当日も聴きに行っている。この曲は、「カピラバスツの悉達多」、「ブダガヤの降魔」、「頌偈」の3つの楽章からなる。出家に至るまでの第1楽章、煩悩と戦う第2楽章、そして苦行の末に悟りを開いた釈迦を讃える頌歌となる。合唱が加わる第2楽章以降が圧巻である。合唱はパーリ語(古代インドの民衆語)で歌われる。女声合唱の甘美な歌声は、修行の邪魔をしている煩悩だ。この女声合唱が実に美しい(まさに煩悩)。日本人の精神的基盤ともなっている仏教だが、伊福部のこの作品は、もっと普遍的な意味を持たせているという。


●武満徹
 ・波の盆

   岩城宏之指揮 東京コンサーツ    (1983)

日本テレビのドラマ「波の盆」のための音楽である。仕事も引退し、長年連れ添った妻にも先立たれた、ハワイ・マウイ島の日系一世の老人をめぐる、家族や過去とのさまざまな苦悩と葛藤の物語である。このCDはサントラ盤で、「波の盆」、「灯篭」、「手紙I」、「ミサと美沙」、「パピオ」、「パール・ハーバー」、「夜の影」、「ミサと公作」、「道」、「ジャパン」、「ヒロシマ」、「手紙II」、「墓標」、「夕景」、「終曲」の15曲がある。こんなに美しい音楽が他にあるだろうかというような曲で、やはりこういう音楽は武満徹にしか書けないだろう。ドラマ自体を見ていなくても、いろいろな思いをめぐらせながら聴いていると、心静かに落ち着くような音楽である。難解さは全くなく、直接心に響く音楽である。


●西村朗
 ・オーケストラのための「蘇莫者」

   沼尻竜典指揮 大阪センチュリー交響楽団    (2009)

「蘇莫者」とは、大阪の四天王寺楽人に伝わる舞楽で、聖徳太子の御霊をまつる法要「聖霊会」の主要演目の一つである。西村はこの「蘇莫者」に内包された謎のドラマと、美しくも激しい旋律と音響に魅了され、それをオーケストラを用いて表現した。「前奏曲」、「乱声」、「音取」、「序」、「破」、「後奏曲」の6つの部分からなる。伝統舞楽をそのまま編曲したのではなく、「蘇莫者」からインスピレーションを得て、より抽象化し多様に拡大した音響世界を作りだしたとのことである。すなわち、伝統を新たな形で表現した音楽といえる。個人的には、西村作品の(今まで聴いた中では)最高傑作だと思う。


●須賀田礒太郎
 ・交響的序曲
 ・双龍交遊之舞
 ・バレエ音楽「生命の律動」
 ・東洋の舞姫 (東洋組曲「砂漠の情景より」)

   小松一彦指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団    (2006)

「交響的序曲」と「双龍交遊之舞」は、いずれも皇紀二千六百年奉祝曲として作曲された。「交響的序曲」は当初「興亜序曲」というタイトルだったが戦後に改めた。やはり「紀元節」のような雰囲気があり、それをあからさまにではなく、うまく処理している。「双龍交遊之舞」も雅楽的雰囲気に始まり、序・破・急とだんだんストラヴィンスキー風になっていく。そのストラヴィンスキー風が顕著なのが「生命の律動」で、ストラヴィンスキーに傾倒した須賀田の本領発揮である。そこに和風の味付けがなされているのは、やはり日本人作曲家であるのだ。「東洋の舞姫」の東洋とはく西アジアのことである。アラビア風の美しい旋律が面白い。須賀田礒太郎も「忘れられた作曲家」になっているが、こんなに素敵な作品を残しているのだ。


●尾崎宗吉
 ・小弦楽四重奏曲
 ・幻想曲とフーガ
 ・初夏小品
 ・チェロソナタ
 ・ヴァイオリンソナタ第2番
 ・ヴァイオリンソナタ第3番
 ・夜の歌

   荒井英治 (ヴァイオリン)/戸澤哲夫 (ヴァイオリン)/小野富士 (ヴィオラ)
   藤森亮一 (チェロ)/山田武彦 (ピアノ)/竹田恵子 (歌)        (2011)

わずか30歳で戦禍に没した尾崎。残された作品もわずかだが、こうやってCDで聴くことができる。若さ漲る瑞々しい感性が光る小弦楽四重奏曲に始まり、このまま生き続けてくれたらと思わずにはいられない、素敵な作品ばかりである。唯一の歌曲「初夏小品」は、ピアノ伴奏が特徴的で面白い。チェロやヴァイオリンのソナタも、ピアノ・パートが印象的である。そこに弦楽器が時に激しく、時に仄暗い表情を見せながら、絶妙に絡んでいく。そして「夜の歌」は、チェロとピアノによる短い作品だが、尾崎が万感の思いを込めて最後に残した作品で、「激情と苦悩の間を揺れ動く心のいたましさが、強く心を打つ」のである。窪島誠一郎著「夜の歌」も読んだし、長野県上田市の「無言館」も訪れた。尾崎を「忘れられた作曲家」にさせない活動には敬意を表する。


●羽田健太郎
 ・交響曲「宇宙戦艦ヤマト」

   大友直人指揮 NHK交響楽団
   徳永二男 (ヴァイオリン)/羽田健太郎 (ピアノ)/川島和子 (ヴォカリーズ)   (1984)

宮川泰による「宇宙戦艦ヤマト」のテーマをモチーフに、羽田が壮大な4楽章構成の交響曲に作り上げた曲である。もとがアニメ音楽ということで軽く見ているとすれば、それは大間違いである。堂々たるシンフォニーであり、本CDのNHK交響楽団の録音の他、東京交響楽団などのプロ・オーケストラの演奏会でも演奏されているのだ。第3楽章に入るヴォカリーズはスターシャがイメージされ、まさにはるか宇宙からの美しい声だ。第4楽章ではピアノとヴァイオリンが加わるが、ピアノ・パートは羽田氏が自身で弾くことを前提として作っている。そのためか、ここはピアノが目立つ楽章だ。エンディングは少しくどいが、これは演奏会のプロデューサーの要望で加えられたものだ。本来はシンプルで、昨年の東響の演奏会では「本来のエンディング」で演奏された。この曲も、日本人作曲家による名作交響曲の一つであると言ってよい。


このシリーズも第13回まで来た。手持ちのCDを聴いては、少し説明や感想を書いているだけだが、第1回からまとめてみると、それなりの記事にはなるのではないかという気がしてきた。

まだまだ続くよ。
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