少し体調が悪いので、今日は自宅で休息。音楽を聴いて静養する。昨日は黛敏郎のオペラ「金閣寺」の公演に行ったが、その流れを受けて、今日は日本人作曲家の手持ちのCDの中からオペラを選んで聴くことにした。
●山田耕筰
・交響曲「明治頌歌」
・歌劇「黒船」 (抜粋)
森正指揮 東京交響楽団
山田耕筰指揮 東京交響楽団
東京芸術大学音楽部学生
辻輝子/柴田睦陸/川崎靜子/栗本尊子/荒木宏明/伊佐新次郎/伊藤亘行
佐々木行綱/岡恵誉/立川澄人/大久保昭男/小島琢磨/中村善治 (1954)
山田耕筰を語るためには、オペラ「黒船」は外せない。山田は決して歌曲や童謡だけの作曲家ではないのだ。このCDには山田の「明治頌歌」も入っているが、これは幕末からはじまり激動の明治時代を描いた20分ほどの音楽で、「黒船」の序曲として聴いても案外合うかもしれない。さて、「黒船」は下田におけるお吉や領事を中心にした物語で、当時の揺れ動く日本を舞台に描いた傑作オペラであり、日本人による初の本格的なグランド・オペラである。台本も山田耕筰。残念なのは、これが放送音源であるために、時間の制約のためか一部がカットされていることや、歌のない部分、時には歌にかぶってアナウンサーの解説が入ることだ。しかし、全曲盤のCDはあるが廃盤で入手困難、今入手可能な音源はこれしかないという現状では仕方ない。山田自身の指揮による貴重な録音でもある。下田には何度か行ったが、2006年11月には、お吉ゆかりの宝福寺(お吉の菩提寺で、お吉資料館にもなっている)や、了仙寺(日米和親条約の交渉場所)や、安直楼(お吉が営んでいた小料理屋)などを巡ったことを思い出す。
●牧野由多可
・ラジオのためのオペラ「あやめ」
石丸寛指揮 東京室内管弦楽団
池田弘子/友竹正則/島田恒輔/滝沢三重子/立川澄人
平井澄子 (琴)/山川直春 (笛)/CBC合唱団/CBCぽっぽ会
田中佐十次郎 (太鼓)/田中佐太次 (太鼓) (1960)
山田耕筰の最後の弟子である牧野のオペラである。上記の「黒船」の2枚目の余白に入っている、30分ほどのオペラだ。原作は三島由紀夫の戯曲。「源平盛衰記」の物語の中から三島が自由に着想して作ったものでる。「ラジオのための」とあるように、音だけで楽しめるように作られている。(それゆえにアナウンサーの余計な解説はない) 能の謡や台詞の節回し、狂言の抑揚などを取り入れ、楽器も和洋混交である。日本語をいかに美しく聴かせるかということを工夫したオペラということで、すなわち山田耕筰の思想を引き継ぐものなのである。
●松村禎三
・歌劇「沈黙」
若杉弘指揮 新星日本交響楽団
二期会合唱団/東京混声合唱団/ひばり児童合唱団
田代誠/直野資/大島幾雄/宮原昭吾/小林一男/釜洞祐子
秋山雪美/青山智英子/桑原英明/有川文雄/土師雅人
池田直樹/水野賢司/峰茂樹/志村文彦/藤沢敬/高松洋二 (1993)
遠藤周作の同題の小説に基づくオペラである。台本も松村禎三。クリスチャンではない、むしろ幼少の頃から法華経に接し、インドを訪れて仏教に傾倒していた松村が、この「沈黙」を題材に選んだのは興味深いが、この小説を読んだ時に強い思いに駆られたのが引っかかっていたそうだ。松村はしかし、「私は自分が遠藤氏のように神に出会えたとは思っていない」と語る。「この小説の中に深い神への思いがあるなら、それに謙虚に向かい合わなくてはならない」として、作ったオペラなのである。高校在学中に両親を失い、結核を病んで療養生活を送った松村の心に何か通じるものがあったのかもしれない。松村自身が書いているように「日本語を自然に美しく歌えることに腐心した」オペラであり、音楽もそれなりに劇的である。最後は神への祈りのような音楽で静かに幕を閉じる。
●團伊玖磨
・歌劇「夕鶴」
若杉弘指揮 読売日本交響楽団
伊藤京子/丹羽勝海/栗林義信/平野忠彦
ビクター少年合唱隊/杉並児童合唱団 (1970)
「日本語を美しく」というのなら、この「夕鶴」を外す訳にはいかない。「鶴女房」(鶴の恩返し)を題材にとった木下順二の戯曲を團伊玖磨がオペラにしたものである。日本人作曲のオペラとしては屈指の上演回数を誇るものであり、今さら説明不要なオペラである。木下順二は「一語たりとも変えてはいけない」という条件で、「夕鶴」のオペラ化を許諾したそうだ。だから、原作そのままに美しい抒情性あふれるメロディーが付く。つうといえば伊藤京子、伊藤京子といえばつうというイメージがあるくらい当たり役で、このCDでも美しい声でつうを聞かせてくれる。日本人の心に染みわたる、名作オペラである。
4人の作曲家のオペラ、CDにして6枚分。これ以外に持っている日本人作曲家のオペラのCDは、このシリーズ(?)で既に取り上げた別宮貞雄「有間皇子」、最近購入した林光「森は生きている」の他、芥川也寸志「ヒロシマのオルフェ」ぐらいだ。もっといろいろ聴きたいものである。
「ヒロシマのオルフェ」も今日聴こうと思ったが、もうお腹いっぱいなので後日とする。黛敏郎「金閣寺」も、CDを買おうか迷っている。
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