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2018年07月13日23:45

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【音楽】 エストニア・ピアノ音楽の夕べ 〜祖国の調べ

とにかく暑い一日である。日中は室内にいるからよいが、17:00を過ぎても暑いのである。こんな日は、エストニアの音楽が良い。そんなわけで夕方、市ヶ谷に向かった。エストニアン・ミュージック・プロジェクト(EMP)による「祖国の調べ」と題する、ピアノ音楽の演奏会である。

今日のプログラムは次のとおりである。

 ・ヘイノ・エッレル: 祖国の調べ
 ・エドゥアルド・トゥビン: マルト・サールの主題によるバラード
 ・エウゲン・カップ: 組曲「タリンの絵」から
 ・エステル・マギ: ヴァナ・カンネル
 ・トゥヌ・クルヴィッツ: 5つの忘れられた空の構図
 ・アロ・ポルドマエ: 組曲「エストニアの風景」から

   ピアノ:秋場敬浩/吉岡裕子
   会場:ルーテル市ヶ谷センター (19:00 開演)

EMPは、ピアニストの秋場さんと吉岡さんが、エストニアの音楽文化の発掘と紹介のために結成し、これまでに何度か演奏会も行っているものである。今宵もその演奏活動の一環で、1918年の建国からちょうど百年目にあたる今年に相応しい「祖国の調べ」というテーマとなっている。エストニアが1991年にソビエト連邦から再独立した際も、音楽の力によって独立を勝ち取り、音楽こそがエストニアの聖域であったという。

さて、プログラムの前半は聴いたことのある作品もあるが、後半のクルヴィッツとポルドマエの作品は、一部を除き全くの初である。それも当然で、それぞれ秋場さん、吉岡さんのために新たに作られた作品の世界初演である。演奏会に合わせて新たな作品が作られ演奏されるのも、お二方のEMPの活動が、エストニアの音楽家からも高く支持されていることの証しだろう。

1曲目は、本日の演奏会のテーマ音楽ともいえる「祖国の調べ」である。演奏するのは秋場さんだ。エストニア独立の1918年の作品で、エストニア国民には馴染みの旋律が織り込まれている、素敵な作品である。余談だが、最初は吉岡さんが弾く予定だったらしいが、最終的に秋場さんが弾くことになったという。お二方のエストニア音楽に対する取り組みに優劣はないので、私としてはどちらの演奏で聴いてもよいのだが。

2曲目も秋場さんによるトゥビンの作品だ。最初は「エストニア民謡に基づく変奏曲」の予定だったが、「マルト・サールの主題によるバラード」に変更されている。「マルト・サールの主題による〜」は好きな曲なので良い。冒頭の低音による主題からズシッと始まり、10分ほどの短い作品ながら様々に展開するシンフォニックな響きをも持った作品で、秋場さんの素晴らしい演奏によって、堪能することが出来た。素晴らしい。

続いては吉岡さんが登場だ。まずはエウゲン・カップの「タリンの絵」から6曲、「カドリオルグの春」、「オオカミ谷の渓流」、「リレーレース」、「リンダの彫像」、「のっぽのヘルマン」、「歌の祭典」が続けて演奏される。エストニアには行ったことがなく、写真でこれらの作品に関わる風景を少し見た程度だが、音楽だけ聴いていてもなんとなくイメージが出来るのである。「リレーレース」は何やら楽しそうな競技が行われているようだし、「歌の祭典」もまさに歌の大イベントの情景が浮かぶようである。前にもやはり吉岡さんのピアノで聴いているが、久しぶりなので新鮮な耳で聴けた。

マギの作品は初めて聴く。ヴァナ・カンネルとはOld Kannelのことで、エストニアの民族楽器カンネルのことであると同時に、エストニアの古い民謡集の表題でもあるとのことで、吉岡さんによれば、このことに気付いてから「古いカンネル」と書かずに「ヴァナ・カンネル」と、そのまま原題のカタカナ表記に直したそうだ。カンネルという楽器は残念ながら知らないが、「古い民謡集」という意味も含めて、古くから音楽の伝統を現代の音楽にも込めていこうということが、吉岡さんの演奏からも感じられた。(マギは現在96歳である。プログラムの他の作曲家の生没年を見ても長命の人が多いことに気付く。)

休憩のあとは世界初演作品である。「秋場敬浩のために」との副題が付いた2017年のクルヴィッツの作品から演奏される。演奏はもちろん秋場さんである。標題のとおり5つの曲からなる組曲である。人それぞれが胸の奥底に秘めた「空」に映し出される5つの風景が音楽で描かれている。この文言だけ見ると、難解な現代音楽にありがちな、と思ってしまうが、実際に演奏を聴いてみると、そんなことはなく、スッと耳に入る素敵な音楽なのである。4曲目だったと思うが、どこかで耳にしたような懐かしいような気さえしてしまう部分もあった。

プログラムの最後はポルドマエの「エストニアの風景」から5曲である。全部で24曲にするための進行中の作品で、前に第4曲までが作曲され、やはり吉岡さんのピアノで聴いた。今回「吉岡裕子のために」との副題を添えて、第5曲から第7曲が加えられた。今回は初演を含む第1曲、第4曲、第5曲、第6曲、第7曲の演奏である。エストニアの自然景観を音楽で表現したもので、これも事前に吉岡さんのブログで実際の風景を見たが、音楽は音で感じるもの、なんとなく滝だ、沼だ、谷だとイメージ出来てしまう。

プログラムが終了したが、まだ物足りないなと思っていると、ちゃんとアンコール演奏も用意してあった。シサスクが秋場さんと吉岡さんのために作った「赤道の星空」からそれぞれ1曲、吉岡さんが「ほうおう座」、秋場さんが「うお座」を弾いた。ここのところシサスクのCDばかり聴いていたので、まさにシサスクの音楽、素敵な作品だ。最後は、EMPの演奏会の定番アンコール曲、アルヴォ・ペルトの「ウクアル・ワルツ」の連弾で締めた。

演奏会終了後、吉岡さんに本日の演奏会や先日のシサスク「南半球」のCDの感想などを伝えた。CDは録音場所をスタジオでなく山梨県のホールにしたことによる響きの自然な広がり、そこが吉岡さんのこだわりであり、実際「北半球」に比べて「南半球」のまさにそのところを聴いて感じ取ったので、それを伝えた。

外に出ると21:00だというのにまだ暑い。
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