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2026年10月06日14:41

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Like Tears in Rain

8/10
https://www.imdb.com/title/tt22941980/

サンナ・ファベリー・デ・ヨンゲ監督
ルトガー・ハウアー イネケ・テン・カーテ
アントン・コービン ヴィンセント・ドノフリオ
ジェイソン・アイズナー ウーピー・ゴールドバーグ
ミランダ・リチャードソン ロバート・ロドリゲス
ミッキー・ローク ポール・バーホーベン
モニーク・ヴァン・デ・ヴェン

ルトガー・ハウアーのドキュメンタリー。

映画少年であった自分は『ブレードランナー』を観たとき、ロイ・バッティがビルの屋上でデッカードを救い、

「そんな思い出も時間と共にやがて消える。雨の中の涙のように。」

と語ったとき、単なる映画であるにもかかわらず彼に同情した。

その後もことあるごとに『ブレードランナー』を観てきたが、あれほど心に残るシーンは、自分にとって他にないのかもしれない。

その後も『ナイトホークス』『レディホーク』『ヒッチャー』『WANTED/ウォンテッド』『聖なる酔っぱらいの伝説』『サルート・オブ・ザ・ジャガー』等々で、印象的な演技を楽しませてもらってきた。

『ブレードランナー』の舞台は2019年のロサンゼルスだったが、奇しくも同じ2019年にハウアーは亡くなってしまった。

本作はハウアーの友人一家の娘であり、ハウアーの名付け子でもあるサンナ・ファベリー・デ・ヨンゲによるドキュメンタリー。

そのため「俳優ハウアー」というよりも、「人間ハウアー」を知ってもらいたいという監督の気持ちが強く、前半はほとんど映画の話ではない。妻のイネケや、デ・ヨンゲ監督の両親による思い出話が多くを占める。

ホテルに泊まることを好まず、キャンピングカーやトレーラーを愛用したり、仕事の合間にバイクでどこかへ行ってしまったり。人生そのものを冒険のように生きた人物だったようだ。

ハウアー自身も絶えずビデオカメラを回していて、そのおかげで本作では数多くの貴重なプライベート映像を見ることができる。

ハウアーを語る人たちが口を揃えていうのは、神々しいまでの美しさだったということ。

本人は他人からどう見られるかにさほど興味がないようなのだけれど、周囲の人間は彼を気にせずにはいられない。そんな生まれながらのスター性を持った人だった。

また、ロイ・バッティの台詞だけでなく、妻の兄であり親友でもあったマリウスへの追悼文、妻に対する恋文、他者へのメールなどを見るに、非常に優れた文才と詩的な感覚を持っていたことが分かる。

今の俳優で、こうした才能まで指摘される人は稀だと思う。

ロイ・バッティの有名な最期の独白についても、元の脚本にあった長い台詞をハウアー自身が大幅に削り、

「All those moments will be lost in time, like tears in rain.」

という一節を加えたという。

後年ハウアー自身も、あの一節について「それが自分の中の詩人だ」といった趣旨のことを語っている。

妻の兄であり親友でもあったマリウスが若くして亡くなったことは、ハウアーに人間の死を強く意識させたようだ。その後、彼はますます思い切り俳優業に打ち込んでいく。

そして、ここから映画人たちによるコメントが増えていく。

監督では当然ポール・バーホーベン。

ハウアーを「自分にとってのマストロヤンニ」とまで語るバーホーベンは、彼への絶大な信頼を語る。

しかし『グレート・ウォリアーズ/欲望の剣』で、乗り気でなかったハウアーに無理に仕事をさせたことをきっかけに二人の関係は悪化。その後、関係そのものは修復したものの、再び一緒に映画を作ることはなかった。

あまり過去を後悔しそうにも見えないバーホーベンが、そのことを後悔している姿が印象に残る。

ロバート・ロドリゲス監督とミッキー・ロークは『シン・シティ』つながり。

ハリウッドという枠に収まりきらないロークにとって、ハウアーは非常に大切な友人だったようで、ハウアーが着ていたものと同じTシャツを何枚も買ったという、これまたロークからは意外に思えるエピソードを披露していた。

ヴィンセント・ドノフリオは『サルート・オブ・ザ・ジャガー』つながり。

ロイ・バッティに憧れ、「あんな俳優になりたい」と思ったという良い話を披露してくれる。

『ファーザーランド/生きていたヒトラー』からはミランダ・リチャードソン。

ただし彼女が披露してくれるのは、ハウアーが撮影の合間にバイクを買いに行ってしまったという、映画とはほとんど関係のない話だったりする。

でも、そういう話こそ本作らしい。

『ホーボー・ウィズ・ショットガン』のジェイソン・アイズナーも出演している。

ウーピー・ゴールドバーグは友人枠。

ハウアーが亡くなったとき、母が亡くなって以来の悲しみだったというほどのハウアー愛を披露してくれる。

そして本作を観ていて印象的なのは、**ハウアーについて語る人たちが、みな楽しそうで、よく笑うことだ。**

偉大な俳優の功績を厳かに振り返るというより、「あいつはこんな奴だった」と、一人の友人を懐かしそうに思い出している。

それが本作独特の親密さにつながっている。

ラスト近くになって、ようやく『ブレードランナー』について詳しく語られる。

ロイ・バッティという役柄に、詩情やセクシュアリティ、そしてレプリカントでありながら人間味を持たせるため、ハウアー自身がさまざまな提案をしたことが語られる。

映画史に残る希代のキャラクターの成立にハウアーの寄与が非常に大きかったことを知り、ますますハウアーが好きになった。

できれば『ブレードランナー』のリドリー・スコットやハリソン・フォード、『レディホーク』のミシェル・ファイファー、『ヒッチャー』のC・トーマス・ハウエル、『ナイトホークス』のシルベスター・スタローン(出演依頼を断ったという)の話も聞いてみたかった。

しかし、彼らまで揃っていたら、本作の持つこの不思議な親密さは少し失われていたのかもしれない。

これはルトガー・ハウアーの華々しいキャリアを総括するためのドキュメンタリーではない。

人間ルトガー・ハウアーを、彼を愛した人々の記憶からもう一度浮かび上がらせる映画なのだ。

ハウアー自身は雨の中の涙のようにいなくなってしまったが、彼がフィルムに残した記憶はこれからも生き続け、後世の人々を感動させ続けると思う。

ハウアーを愛する人に、ぜひ観てほしい。

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