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2026年06月21日10:41

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「血脈」佐藤家のすさぶる血

小説家の佐藤紅緑は「千人斬り」と豪語するほど多くの女たちと遊んでいたが、新進女優シナに夢中になり、妻と離婚してシナを家に入れる。八郎をはじめとする、前妻の4人の息子たちはすべて不良少年となり、中学を落第、退校、警察沙汰、感化院入りなどを重ねる。ハチローは道楽を重ねながらも詩人として成功するが、他の3人は乱脈な生活を続けた破綻者となり、破滅的な死を迎えた。早苗と愛子はシナの娘であり、「血脈」は愛子によって書かれた佐藤家の大河長編である。

子どもの頃、サトウハチローの「おかあさん」という詩集を持っていました。
繰り返し読み、なんと優しい言葉、なんと母親への愛情に溢れた美しい詩なのだろうと思っていました。
しかしこの本によれば、ハチローは小学生時代から不良少年で、実母に対しても愛情らしきものを示したことはなく、作品に表現されている「母親への想い」はフィクションだと。
「おかあさん」のみならず、「ちいさい秋みつけた」「お山の杉の子」「リンゴの唄」「悲しくてやりきれない」などの歌、私は大好きだったのに。
実際のハチローは、父親に負けず劣らず女にだらしなく、何人もの愛人を作り、妻妾同居させ、息子たちはやはりグレて悲惨な末路を辿っています。
性豪ぶりは本人の自慢する所で、なんと女子中学生にも手を出している。
これって今だったら、明らかに犯罪ですね。

佐藤愛子の色々なエッセイを読んで来ましたが、彼女の最初の結婚についてはあまり語られておらず、詳細を知りませんでした。
岐阜の旧家の息子のエリート軍人と結婚したが、戦争が終わってモルヒネ中毒となった彼と別れたとまでは知っていましたが。
この本によれば、旧家での体面ばかりを気にする義父母との葛藤、千葉の開墾地で夫婦で苦労するも、モルヒネ中毒の夫は仕事もせずに連日芸者の元に出かけたりと色々あったようです。
一男一女をもうけたが、離婚するにあたって、子供たちは夫の実家に置いて来たのですね。
その子たちのその後については、本書の中でも一言も語られていません。

”愛子は漸く気がついた。佐藤洽六の血を引く者はみな、滅びるべくして滅んで行く運命を負っているらしいことに。
何故自分はこうなのか、何故こんなことをしてしまうのか、わからぬままに堕ちて行く。外からの嵐に巻き込まれるのではなく、内側で吹き上げる力に押されて流される。八郎だけが辛うじて踏み止まり、(誰よりも強烈な情念とエゴイズムの持主でありながら)世間の称賛を受けるという幸福を掴んだ。だが彼の弟たち節、弥、久、そして彼の息子の忠と五郎は揃って、恰も遺伝性の病いに冒されていくかのように同じ道を落ちて行った”(下巻P543)
たとえば久は19歳にして女と情死しているし、後も大方、ロクな生き方、死に方をしていません。

著者はこの大河小説を、12年かけて書いたのだそうです。
膨大な登場人物、それぞれの人生やその時の思いを、よくこれだけ詳細に赤裸々に書きあげたものです。
「佐藤家のすさぶる血」に圧倒された小説でした。

文庫本にして3冊、それぞれ600頁超。
親しくしているマイミクさんが3日で読了されたということでしたが、私は連日出かけていて、「上中」を5日間、「下」は在宅していた昨日一日で読み終えました。

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