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2025年06月09日19:56

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【読書】 最近読んだ本 備忘禄

最近読んだ本の、備忘的メモ。

●「歴史のダイヤグラム<3号車>」 (原武史著、朝日新書)

以前「歴史のダイヤグラム」と「歴史のダイヤグラム<2号車>」を読んだが、新聞への連載は続いているようで、今回は「3号車」である。歴史上の出来事には、その主役である人物の鉄道での移動を伴うものもあり、皇族、政治家、作家や芸能人まで、あの時にどの列車に乗って、どこからどこへ行ったのかを、当時のダイヤから推測して探り、それに関するエピソードを綴ったものである。日本では天皇家だろうと首相であろうと、好き勝手に列車を動かすことはできない。あくまでも、決められた時刻通りに動くのだ。これは某国ではありえないことだろう。後半は著者の個人的な思い出に関する内容となっているが、私も著者とはほぼ同年代なので、通じるものがあるのも面白い。


●「神と自然の景観論」 (野本寛一著、講談社学術文庫)

日本人は何に神聖感を抱き、日本列島のどのような景観に神を見たのだろうかという「信仰環境論」という視点で説いた本である。日本は火山列島であり、火山と地震は日常にある。河川の氾濫など、そういった自然にも畏怖を抱いていた。また、具体的な地形と信仰の生成の関係についても詳しく述べている。岬は常世への旅立ちの場と見たり、淵は生物が種を守る聖域と見たり、浜、洞窟、池、滝、峠、そして山など、それぞれに意味を見出していたのである。また、松、杉、椎、栃なども聖樹と見て伝承していったのである。著者は全国各地の聖地を実際にめぐって、その成立の条件を探っている。そこには日本人が古来持っていた信仰感が今も根付いており、時代とともに景観は変化しても、名もない古池や古木や山かげなどが子供を戦慄せしめるならば、それもまた「神々の風景」であるという。


●「月収」 (原田ひ香著、中央公論社)

月収4万円で年金暮らしの乙部響子66歳、月収8万円で専業作家を目指しつつ不動産投資をはじめる大島成美31歳、親の介護を見越して新NISAで月10万円の投資をはじめた会社員の滝沢明海29歳、月収100万円をパパ活で稼いでいる瑠理華26歳、月収300万円あり夫の遺産もあって株式投資をしつつ不自由なく暮らす鈴木菊子52歳、月収17万円で介護士をしつつ自ら会社を立ち上げる斉藤静枝22歳。それぞれの月収に見合う生活を送る6人の物語である。各人の物語が独立にあるのではなく、ストーリーが進むにつれ互いに絡んでくる。このような展開は原田ひ香のうまいところだろう。結局、月収がいくらだと幸福といえるのか、そこには答えはない。


●「エッシャー完全解読」 (近藤滋著、みすず書房)

「物見の塔」、「上昇と下降」、「滝」といった、現実には有り得ない形にリアリティを持たせた「だまし絵」のような作品を作った版画家のエッシャー。その作品を徹底的に掘り下げて、そこに隠された秘密を解き明かそうという本である。版画作品についての本だが、著者は生物学者であり、そしてこの本は書店の数学書のコーナーに置かれていた。理系視点で書かれた本ということだろう。有名なところでは、錯視図形のトリックが使われているというのがある。ネッカーの立方体、ペンローズの階段、ペンローズの三角形である。たしかにそれはあるが、それだけではない。絵の隅々まで見ると、一見意味のなさそうな人物や周囲の景観にも、トリックの秘密が隠されており、巧妙に「有り得ないものが不自然に見えない」仕掛けがしてあるのだという。それらを作品毎に詳しく解読している。今のように3DCGで簡単に描けるわけではなく、自らの手で綿密に計算されて描かれたわけで、これは驚愕するしかない。エッシャーの作品には、エッシャー自身が「種明かし」を嫌ったこともあり、まだ解読しきれない謎も残っているようだ。


●「地図をつくった男たち」 (山岡光治、角川ソフィア文庫)

明治維新前夜から戦後にかけて、地図製作に全力を傾けた人たちの話である。著者は国土地理院の技官OBであり、この本に登場する人たちのあとを継ぐ方である。地図といえば伊能忠敬などの名前がまず浮かぶが、伊能図はまだ誤差のある地図であったことは否めない。そこで、正確な測量が求められ、フランス式測量技術、工部省と関わったイギリス式測量技術を経て、兵制整備と並行して導入されたドイツ式測量技術という流れで、測量技術の精度が上がっていく。測量とひとくちに言っても、それは人跡未踏の深山に入り野営しながら、地道な作業を繰り返す過酷な日々である。現在普通に地図が見られるのも、過去に多くの名もなき技術者たちの奮闘があったからである。地図製作は正確な測量あってこそなのであり、そのことを忘れてはなるまい。
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