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2019年06月29日23:21

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【音楽】 伊福部昭百年紀 Vol.7

今日も、梅雨の鬱陶しさを吹き飛ばすような楽しいコンサートに行ってきた。「伊福部昭百年紀」演奏会で、伊福部昭生誕百年の2014年2月に第1回を行なってから、今回で第7回になる。もちろん毎回欠かさず行っている。

今日のプログラムは次のとおりである。

 ・真鍋理一郎: メガロ・ファンタジー
 ・伊福部昭: 映画「銀嶺の果て」テーマ
 ・伊福部昭: 仮面舞踊劇「ファシャン・ジャルボオ」より3つのシーン
 ・伊福部昭: 映画「二人だけの橋」テーマ
 ・伊福部昭: 怪獣大戦争マーチ
 ・伊福部昭: 「フランケンシュタイン対地底怪獣」組曲
 ・伊福部昭: 「サンダ対ガイラ」組曲
 ・伊福部昭: 「ゴジラVSデストロイア」組曲
 ・伊福部昭: ピアノと管弦楽のための協奏風交響曲 第3楽章

   藤岡幸夫指揮 オーケストラ・トリプティーク
   ピアノ:藤井麻里/合唱:伊福部昭百年紀記念合唱団
   会場:大和田さくらホール (18:00 開演)


伊福部昭の作品のみでなく、伊福部昭の弟子の作品もプログラムに含まれるのは第4回以来だ。伊福部作品も今日初めて聴く曲もあり、それも楽しみである。

開演前に中野昭慶さんと井上誠さんによるプレトークがあり、主に「フランケンシュタイン対地底怪獣」について語られる。最後にこの映画にも出演した高島忠夫さんの追悼。静かな黙祷では高島さんに似合わないと、会場全員の大きな拍手で、高島さんを天国に見送った。

さて、演奏会は真鍋理一郎の作品からである。「ゴジラ対メガロ」の音楽を編んだもので、「メガロ・ファンタジー」と題して演奏される。映画としては、ゴジラ・シリーズの中では低予算のB級作品扱いにされているようだが、まあ細かいところを抜きにすれば楽しめる。ゴジラよりもジェットジャガーが主役だと思って見ればよい。その音楽だけをこのように聴いてみると、カッコいいジャズ・ロック・オーケストラ曲なのである。伊福部作品とはまた違った魅力だ。エンディングで流れる「ゴジラとジェットジャガーでパンチ・パンチ・パンチ」は合唱付きで、早くも盛り上がる。

続いては、伊福部の映画音楽第一作である「銀嶺の果て」のテーマである。百年紀で取り上げるのは第1回以来2回目か。激しいピアノも絡む印象的な曲で、映画のシーン(DVDで観た)が浮かぶ。伊福部生誕105年に捧げる曲ということである。

次は初めて聴く曲だ。幻のバレエ音楽「ファシャン・ジャルボオ」より「前奏曲」、「骸骨の踊り」、「ラン・ダルマ王の踊り」の3曲であるが、これがなかなか素敵な曲であった。いわゆる伊福部節とは少し違った雰囲気もあり、初めて聴く曲だという以上に新鮮に感じた。伊福部昭には、まだまだ知られざる素敵な作品が埋もれているのだ。それを発掘して演奏するのがオーケストラ・トリプティークだ。素晴らしい。

ここからは映画音楽が続く。「二人だけの橋」、「怪獣大戦争」、「フランケンシュタイン対地底怪獣」、 「サンダ対ガイラ」の共通点といえば、水野久美さんが出演していることだ。ということで、本日のゲストの水野久美さんがステージに登場する。「ゴジラ・シリーズと縁の深い水野久美です」と挨拶。このままトークと行きたいところだが、その前に「二人だけの橋」テーマと「怪獣大戦争」マーチが演奏される。

実は「二人だけの橋」は、映画も観た記憶がないし、音楽も初である。1958年の映画で生まれる前だから仕方ないか。貧しいながらも質素に健気に生きる男女の純愛物語だそうで、水野久美さんと久保明さんが主演。(この2人の組み合わせでは怪獣映画しか思い浮かばない) これがまた素敵な曲であった。純愛物語にふさわしいような詩的な音楽である。今日初めて聴く伊福部作品が2つとも素敵な曲で、これが聴けたのも大きな収穫であった。

「怪獣大戦争」マーチは、今までに何度聴いたか分からないが、水野久美さんがX星人役のこの映画の曲も、今日は外す訳には行かないだろう。これは何度聴いても盛り上がる。しかし、演奏者も相当体力を消耗するようで、ここでオーケストラは一旦下がり、水野久美さんのトークが始まる。水野さんは「思ったことをつい言ってしまう性格」で、それゆえのトラブルもあったが、そこは楽しくやってきたとのこと。いろいろなタイプの女性を演じ、「どれが本当の水野久美なんだ?」には「全部、水野久美です」と答えているという。デビュー作「気違い部落」(放送では注意を要するタイトルだね)や、「マタンゴ」のキノコの話、もちろん今日のプログラムにある各映画の話など、いろいろである。最後はやはり「フランケンシュタイン対地底怪獣」でも共演した高島忠夫さんの話になった。それにしても、水野久美さん、相変わらずおきれいである。

トークが15分ほどで終わり、再び演奏会である。「フランケンシュタイン対地底怪獣」、「サンダ対ガイラ」と、フランケンシュタインに関する映画2本の音楽の組曲である。単なる怪獣特撮映画ではなく、少し重いテーマを扱っている映画であり、人間でありながら人間でないフランケンシュタインに対する、いろいろな人の思いが交錯するストーリーである。伊福部音楽も、どこか暗い影のあるような音楽、怪奇性を帯びたような音楽などが多い。「サンダ対ガイラ」の最後の方のトランペットなど、聴いていて思わずウルっと来てしまった。伊福部の映画音楽は単なる映画の添え物ではなく、音楽だけで語れるものなのだと、しみじみと感じた次第である。

休憩のあとは、「ゴジラVSデストロイア」の組曲だ。伊福部の映画音楽最後の作品である。今日は、映画音楽としての最初と最後を両方聴けた訳だが、これは司会の小林淳さんも言ったように、第1作からすでに伊福部スタイルが確立し、最後まで半世紀以上にわたってずっとこれを通したのである。この「ゴジラVSデストロイア」の音楽も、伊福部特撮音楽の集大成といった感じで、映画のエンディングも、映像も含めてまさにそのよう作られているのだ。そもそもこの映画が、「ゴジラ」第1作と密接につながっているのである。(「ゴジラ対メガロ」のゴジラは全く違うのだが。) 伊福部映画音楽を締めくくるのに相応しい曲と演奏であった。

最後は、百年紀では珍しく純音楽作品で締める。ピアノと管弦楽のための協奏風交響曲から第3楽章である。Allegro barbaro −野蛮なるアレグロである。拳で鍵盤をたたいたり、肘から甲にかけて鍵盤をたたいたり、そんな奏法が出てくる、まさに野蛮で暴力的な音楽である。この曲は全楽章を通して、CDでも演奏会でも聴いているが、こうやって百年紀演奏会の締めとして第3楽章だけ聴くと、最後に血湧き肉踊る音楽をもってきたのだとよく分かる。

プログラムのあとはアンコールである。恒例の会場全員参加のアンコールである。「歌いたいですよね。ということは大体予想がつくと思いますが」と前置きをして、真鍋理一郎の「ゴジラとジェットジャガーでパンチ・パンチ・パンチ」をみんなで歌い、最後はやはり伊福部の「怪獣大戦争マーチ」で締めた。「パンチ・パンチ・パンチ」で会場も全員立ったままだったこともあるのか、特に要請があった訳でもないのに、会場全員の手拍子が自然に加わる。この一体感がまた楽しい。

フォト


伊福部百年紀演奏会はこのあともずっと続くようなので、次回も楽しみである。
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