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2019年05月06日19:52

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【音楽】 オーケストラ・トリプティーク演奏会 「3人の会2019」

10連休の最終日は、オーケストラ・トリプティークの演奏会に行った。今回は「3人の会2019」と題する演奏会である。

プログラムは次のとおりだ。

 ・黛敏郎: 映画「東京オリンピック」組曲
 ・黛敏郎: 映画「天地創造」組曲
 ・團伊玖磨: シンフォニア・イゾラナ(ブルレスケ風交響曲)
 ・芥川也寸志: バレエ音楽「失楽園」組曲
 ・芥川也寸志: 佛立開導日扇聖人奉讃歌「いのち」

   指揮: 水戸博之/混声合唱: 3人の会記念合唱団
   会場; 大和田さくらホール (14:00 開演)

「3人の会」の3人は、作風が似ている訳ではないし、目指した音楽の方向性も同じではない。3人共同で作品を作り上げようという気も全くない。単に「自分たちの作品の演奏機会を増やそう」と、それなら1人より3人の方がやりやすいと「結成」したものである。それだからこそ、各人の個性が生きた作品が次々に出来たといえるし、平成を経て令和の時代になっても、こうして演奏され続けるのである。

今回演奏するのはオーケストラ・トリプティークである。ということは、プログラムはいつでも聴けるような曲ではない。埋もれかけた作品を掘り起こして、譜面が残っていないものは譜面おこしまでして演奏するのが、このオーケストラである。今回も貴重な演奏が聴ける。実際、今日のプログラムでは、黛の「天地創造」をピアノ編曲版組曲で聴いたくらいで、あとは初めて聴く曲ばかりだ。

最初は黛作品から始まる。「東京オリンピック」は1964年(昭和39年)の東京オリンピック公式記録映画への音楽を組曲にしたもので、無伴奏女声合唱によるオープニングにはじまり、「暗黒の中に聖火が生まれる」、「聖火走る」、「体操」、「マラソン、アベベ独走」と続く。黛サウンド全開という感じで、躍動感と美しさに満ちた音楽である。2020年の東京オリンピックはどうか分からないが、1964年の方は、戦後の苦難から立ち上がり、高度成長を遂げ、未来への明るい希望に満ちたイベントであったろう。音楽もそれにふさわしいようだ。

続いては、同じく黛の「天地創造」組曲である。アメリカとイタリアの合作映画で、旧約聖書における創世記を描いた映画への音楽として、黛に依頼が来たものである。監督が黛の「涅槃交響曲」に大いに感動し、「この若き天才作曲家に是非お願いしたい」となったらしい。ピアノ版では聴いていたが、やはりオーケストラで聴くと全然迫力が違う。このオーケストラ版も譜面がなく、唯一オーケストラの譜面がある「間奏曲」とピアノ版から、今回の演奏会のために譜面おこしをしたものであるというが、そこまでして聴かせてくれるオーケストラや関係者の方々には頭が下がる。この映画は見たことはないが、創世記の話は知っているので、音楽を聴きながら、なんとなくイメージは出来る。この曲も黛サウンド全開という感じである。女声合唱による「イヴのテーマ」と、混声合唱による「フィナーレ」と、合唱も加わり、音楽を盛り立てる。(黛は日本の天地創造に相当する「古事記」もオペラにしており、興味深い。)

続いては團の「シンフォニア・イゾラナ」だ。團の番号のついた交響曲は6曲あり、これは録音で全て聴いたが、この交響曲は初めてだ。それもそのはずで、初演以降は演奏された記録もないそうだ。初演時は「ブルレスケ風交響曲」というタイトルで、すなわち田舎風の交響曲という曲だったが、のちに「シンフォニア・イゾラナ」と改題した。アイランド風の交響曲ということで、島国日本をイメージしたということらしい。(作曲者自身の解説は無いそうだが。) 「モザイク」、「子守歌」、「行列」の3つの楽章からなるが、弦楽を中心にした第2楽章「子守歌」がとても素敵であった。そして第3楽章はお祭りだ。日本の祭囃子のような雰囲気で始まり、この曲はやはり「日本風」の曲なのだと、聴きながらしみじみと感じた。(團は、この「日本」のあと、「シルクロード」を経て「アラビア紀行」と、順番に西へと移動するような音楽を続けた。) 

休憩のあとは芥川作品だ。「失楽園」も、黛の「天地創造」と同じく創世記に関わるもので、知恵の実を食べたアダムとイヴがエデンの園を追放される話だ。これも初めて聴く曲なのだが、聴けば完全なアレグロ・オスティナートの芥川節である。若き芥川が早くも個性を発揮した作品といえる。「失楽園」のイメージというよりは、芥川音楽そのものという感じであったが、聴いていて楽しい曲であった。

最後は、「いのち」である。芥川の未完の遺作で、鈴木行一が補作して完成させている。佛立開導日扇聖人奉讃歌であり、人が立てた「人立宗」ではなく、「仏さまが立てた宗」ということで、その開導を行った日扇聖人を讃える混声合唱付きの曲である。キリスト教を経て最後は仏教で締める、今日は宗教絡みのプログラムでもあったのだ。序奏のあとに男声合唱で「南無妙法蓮華経」と6回唱えられて、これが最後までベースとなる。C(ド)の音が、最後までずっと鳴っている。ド、ド、ド、ド、ド、ド、これがどの楽器が鳴らしても「南無妙法蓮華経」に聞こえるのである。また、合唱も途中で何度も何度も「南無妙法蓮華経」を繰り返す。時には凄まじい大音響でオーケストラが鳴り響き、そのあとで「南無妙法蓮華経」。なかなかすごい音楽である。

アンコールでも、この芥川「いのち」を短くしたバージョンで、もう1回演奏した。会場もいっしょに「南無妙法蓮華経」と合わせて下さいという指揮者の要請もあったが、(「ゴジラ」や「ウルトラセブン」の時のような)会場の盛り上がりはなく、厳かにステージ上で「南無妙法蓮華経」を繰り返すのみとなった。演奏会が終わって会場を出ても、しばらくは頭の中で「南無妙法蓮華経」が鳴っていた。

「3人の会」の作品の貴重な演奏会であった、やはり、黛、團、芥川の3人は、日本の音楽史上において、重要な位置付けにいたのだなと、作品を聴くと改めて思う。
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