年度末は仕事では精神的に疲労した。だから、休日はのんびりと音楽を聴きながら休息するのが一番だ。天気がいまひとつすっきりしないこともあり、今日も恒例の「日本人作曲家シリーズ」で、手持ちのCDを聴きながら過ごした。
●伊福部昭
・ギリヤーク族の古き吟誦歌
・サハリン島先住民の三つの揺籃歌
・アイヌの叙事詩に依る対話体牧歌
・摩周湖 (ハープ版)
藍川由美 (ソプラノ)/遠藤郁子 (ピアノ)/中谷卓哉 (ティンパニ)
百武由紀 (ヴィオラ)/木村麻莉 (ハープ) (1995)
伊福部昭全歌曲集のうちの1枚である。「ギリヤーク族の古き吟誦歌」の1曲目の「アイ アイ ゴムテイラ」のメロディーは一度聴いたら忘れない。嫁探しに来た男が成果なしですごすご帰るのを冷やかす歌である。「サハリン島先住民の三つの揺籃歌」も、「アイヌの叙事詩に依る対話体牧歌もそうだが、耳慣れぬ言葉と音階の歌なの心に響く。伊福部が少年時代に接したアイヌの人たちは、まだ日本に同化せず、独自の文化を保っていた。伊福部作品の原点はこれら北方民族に伝承された歌なのである。更科源蔵の詩による「摩周湖」も名曲で、ヴィオラとハープの伴奏でしみじみと歌われる。藍川由美さんは専ら日本の歌を歌い続けておられ、夫の片山杜秀氏とともに、日本人作曲家の作品の普及に尽力しているお方だ。
●別宮貞雄
・チェロ協奏曲「秋」
・ヴァイオリン協奏曲
若杉弘指揮 東京都交響楽団/堤剛 (チェロ)/前橋汀子 (ヴァイオリン) (2001/1993)
別宮が「こどものための音楽教室」でソルフェージ教育を担当した際に、とびきり優秀だった2人の小学生がいて、それが堤剛と前橋汀子だったとのこと。その2人のために書かれた協奏曲である。チェロ協奏曲「秋」は冒頭から美しく印象的なメロディーで、これで引き込まれる。別宮はベートーヴェンを理想とし、前衛音楽とは距離をおくと公言していたが、ヴァイオリン協奏曲は「時流にいくらかよりそっていたせいか、専門家の友人知己には好評だったようだが、私自身はいささか釈然としない気持ちであった」と自身が語る作品である。しかし、堅固な構成の音楽は、やはり別宮作品なのだと思う。個人的には、むしろヴァイオリン協奏曲の方が傑作だと思う。
●尾高尚忠
・日本組曲
●平尾貴四男
・交響詩曲「砧」
●深井史郎
・パロディ的な4楽章
●伊福部昭
・土俗的三連画
●早坂文雄
・左方の舞と右方の舞
山岡重信指揮 読売日本交響楽団 (1972)
「戦前日本の管弦楽」と題する2枚組のCDのうちの1枚である。尾高、平尾の作品を聴きたくてかけた。この2人も日本を代表する作曲家といってよいが、残念ながらあまりCDを持っていない(そもそも発売された音源が少ない?)ので、このようなオムニバス盤で聴くのである。「日本組曲」と題する曲は他にも何人かの作曲家が作っているが、それらが「いかにも日本」なのに比べて、尾高のこの組曲は「朝に」、「遊ぶ子供」、「子守歌」、「祭り」と日本の風物を描いてはいるものの、やはり「和洋の中間」的な音楽のようだ。平尾の「砧」は、世阿弥の能の謡曲に基づくものだが、もちろんこれをそのままオーケストラにしたのではなく、「砧」に描かれた悲哀と怨念を描いた音楽だ。伊福部の「土俗的三連画」は、こちらもアイヌの人との接点から生まれた小編成の曲で、いかにも伊福部な曲である。深井と早坂の各作品は、このシリーズ(?)でもすでに別の演奏で取り上げたが、やはり面白い作品である。
●吉松隆
・夢詠み
・昴の舞
・水幻譜
・夢返し
吉村七重 (二十絃筝/十三絃筝)/田村法子 (二十絃筝)/福田輝久 (尺八)
山口多嘉子 (パーカッション) (2011)
吉松による箏作品集である。全体的にシンプルな音楽であるが、奏者の吉村七重によると、「ピアノやギターでは簡単に出来る音の使い方や和音・転調が難しいが、そんなことにはお構いなく、楽器の区別のない吉松節を創っている」そうだが、箏を弾いたことのない人間には分からない。「夢読み」のあとの「昴の舞」は、題名から想像できるように、吉松のピアノ曲集「プレイアデス舞曲集」の中から9曲を選んで箏に編曲したものである。ピアノとはまた違った雰囲気だが、いわゆる邦楽とはまた違った趣である。たまたま楽器が箏であるという、「幻想四次元の世界の星の夢」の音楽である。最後の3曲にはパーカッションも加わるが、これは無くてもいいかな。「水幻譜」は、尺八と箏の二重奏。「アマチュアでも親しめるやさしい曲」ということだが、このようなシンプルさこそ、吉松節なのだという気がする。
●團伊玖磨
・交響曲第6番「HIROSHIMA」
團伊玖磨指揮 ウィーン交響楽団
アナ・プサール (ソプラノ)/赤尾三千子 (能管、篠笛) (1989)
広島青年会議所平和問題委員会からの委嘱で團が作曲した、その名も「HIROSHIMA」という交響曲だが、原爆をテーマにした作品という訳ではない。「広島の人々の偉大なエネルギーと努力への讃歌、風土の持つ永遠の美しさに対する思い」ということである。能管と篠笛がからむが、あからさまな日本情緒というのでもなく、團らしい大陸的な(?)大らかな音楽だ。第2楽章には「鞆の浦大漁節」や「音戸の舟歌」という広島の民謡が引用される。第3楽章にはソプラノ歌唱も加わるが、なぜか英語の詩である。(個人的には日本語の詩にしてほしかった。) 團の交響曲の集大成といえる作品で、豪華絢爛なオーケストラが堪能できるである。
●小杉太一郎
・カンタータ「大いなる故郷石巻」
小林研一郎指揮 東京交響楽団/石巻合唱連盟
山内明 (朗読)/伊藤京子 (ソプラノ)/友竹正則 (バリトン) (1973)
石巻出身の石島恒夫氏と小杉太一郎氏による、故郷石巻を讃えるカンタータで、石巻市制40周年記念として作られた。「日高見」、「たたら火」、「雄図」、「祝祭」の4つの楽章から構成され、それぞれ朗読に導かれて音楽がはじまる。その第1楽章の朗読を締めくくる言葉は「さあ 石巻の新しい誕生です!」だ。初演当時は大震災見舞われることなど誰も想像していなかったに違いないが、今まさに「新しい石巻」に生まれ変わっているのだ。初めて聴いた時、この言葉を聞いた瞬間に落涙してしまった。震災後5年の石巻を訪れ、復興には遠い現状を見た直後に聴いたこともあったろう。ただの音楽だけではなく、強く心につきささるような何かが加わっている。もちろん、そういうことを抜きにして、純粋に音楽だけを聴いても素晴らしく感動的な作品と演奏である。第4楽章にはおなじみの「斎太郎節」も引用されている。
今日はここまでだが、まだまだ続くよ。
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