12月も半ばになり、クラシックの演奏会も「第九」ばかりになっているが、そうでない演奏会もある。今日は、そんな演奏会に行った。東京交響楽団の演奏会である。
プログラムは次のとおりである。
・ヴァレーズ:デンシティ21.5
・ヴァレーズ:アメリカ (1927年改訂版)
・R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」
指揮:ジョナサン・ノット
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール (14:00 開演)
実はヴァレーズの曲を聴くのは全く初めてである。エドガー・ヴァレーズ(1883-1965)はパリで生まれ、その後ニューヨークに渡りアメリカに帰化した作曲家で、新しい楽器と音響を追求した人とのことで、面白い曲が聴けそうだ。
1曲目と2曲目は続けて演奏されるとの事前アナウンスがあった。1曲目の「デンシティ21.5」はフルート独奏の曲である。(通常「密度21.5」と訳されるが、ここでいうdensityとは「密度」ではなく「比重」である。プラチナ製のフルートお披露目のための作品で、プラチナの比重が21.5であることに由来する。したがって「密度21.5」とは書かないことにする。)
フルート独奏の曲だが、オーケストラがステージに勢揃いしており、指揮者ノット氏も登場する。次の曲と続けて演奏するためにこうなるが、それにしてもオーケストラの人数の多さときたら! 管楽器や打楽器がずらりと並び、どんな大音響になるのかと思うが、まずはフルートの甲藤さんにだけ照明があたり、甲藤さんのソロによる「デンシティ21.5」である。これが、4分ほどの短い曲ながら、実に複雑かつ多様な曲で、低音から高音までフルートの音域をフルに使い、キータッピングなどの特殊な奏法も出てきて、聴いている方も最後まで息をつかせないような圧巻の演奏であった。
「デンシティ21.5」が終わると、パッとステージ全体が明るくなり、「アメリカ」に突入だが、前の曲を受け継いだように、アルト・フルートがまずは鳴り出す。この違和感のないつながりで、「続けて演奏する」ことに納得で、そのあたりもさすがによく考えられていると思った。
その「アメリカ」だが、「改訂版」とあるように、オリジナルはあまりに巨大編成すぎたために楽器の数を減らしたとのことである。それでもこの大編成である。もうこれは凄まじい音圧、弦はうなるし、管は吠えるし、パーカッションは響きまくり、サイレンの音まで鳴っていて、まさにアメリカ、ニューヨークの喧騒だ。もちろん、単にうるさいだけではなく、一つの音楽になっているのだが、ただただ圧倒されるばかりである。こういう音楽は、やはりCDで聴くよりも、ホールで生で聴くのがよいのではないかと思う。(といいつつ、CDを早速探したりする。)
演奏が終わると、甲藤さんもステージ前方に呼ばれ、盛大な拍手を浴びていた。
休憩のあとは、「英雄の生涯」だ。リヒャルト・シュトラウスの交響詩も大編成のオーケストラで演奏されるが、先ほどの「アメリカ」に比べると、小編成の室内オーケストラに見えてしまう(?)。演奏も、「アメリカ」に比べると、普通の耳慣れたオーケストラの音という感じだが、それでもノットの指揮はアグレッシブで、どんどん攻めていく。「英雄の伴侶」でのコンマスの水谷さんも切れのある演奏で、か弱い女性というよりは、知的で利発な伴侶というイメージである。「英雄の戦場」では、戦いの場面がすさまじい。英雄=リヒャルト・シュトラウス自身であり、作品を非難する「敵」との戦いのはずなのに、これはまるでリアルな戦闘シーンだ。「英雄の生涯」の演奏も、「アメリカ」の演奏の陰で印象が薄くなるなんてことは全くなかった。
今日も、最初から最後まで大満足の演奏会であった。
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