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2017年09月03日21:37

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【音楽】 サントリー・サマーフェスティバル2017 〜大澤壽人作品演奏会

今日はサントリーホールにコンサートを聴きにいった。サントリーホールは2月から8月まで改修工事をしており、9月にリニューアルオープンしたばかりのホールで、「サントリー芸術財団サマーフェスティバル2017」が、9月11日まで行われている。その目玉は「日本再発見」だ。邦人作曲家の作品を集中的に演奏するのだ。残念ながら平日に行くことは困難だが、日曜日の今日は問題なく行ける。いや、他の用事があっても、演奏会を優先してもいいようなプログラムだ。

 ・大澤壽人:コントラバス協奏曲 <世界初演>
 ・大澤壽人:ピアノ協奏曲第3番「神風協奏曲」
 ・大澤壽人:交響曲第1番 <世界初演>

   山田和樹指揮 日本フィルハーモニー交響楽団
   コントラバス:佐野央子/ピアノ:福間洸太郎
   会場:サントリーホール (15:00 開演)

これに行かずにいられようか。大澤壽人は、長いこと「忘れられた天才作曲家」と言われていた。その「忘れられた」が、21世紀になってようやく取れるようになってきたのだ。「大澤資料プロジェクト」代表の生島美紀子さんによる評伝も、つい先日出版された。もちろん購入し、今日の演奏会までに読み終えることが出来た。これは期待がますます高まる。

サントリーホール前に着くと、当日券売場には長蛇の列。カラヤン広場にも大勢の人が開場を待っている。開場して中に入ると、ほぼ満員の大入りであった。今日はいわゆる有名曲はプログラムにない。大澤壽人作品だけのプログラムである。しかも、誰も聴いたことのない「世界初演」が3曲中2曲。それでこれだけの人が聴きにいくのだ。21世紀になって、日本のクラシック音楽の流れも変わってきているということを、開演前から実感した次第である。いつまでも定番の有名曲ばかりの演奏会ではないのだ。

最初はコントラバス協奏曲。ヴァイオリンだと楽器を小脇に抱えてスマートに登場するが、コントラバスではそうはいかない。コントラバスを持って、指揮者とともに佐野央子さんが登場。そもそもコントラバス協奏曲という作品自体が、ピアノやヴァイオリンの協奏曲に比べてはるかに少ない。コントラバス、サクソフォーン、トランペット協奏曲など、いずれも日本人作曲家の作品第一号は大澤壽人作品である。このことも、つねに新しい表現を求めていた大澤壽人らしいといえるかもしれない。

初めて聴く作品で、全容を捉えるのは正直難しいが、聴き慣れた協奏曲とは趣がだいぶ違う。5楽章構成の曲で、冒頭のフルートとハープからして、独特の雰囲気。すぐにコントラバスが絡んで、コントラバスを際立たせつつ、オーケストラで素敵なメロディーを聴かせるという感じである。第2楽章のピッコロが、まるで能管のよう。邦楽を聴いているような感じになるのが面白い。コントラバス独奏は四分音を用いた独特の音程が現れる。この四分音は、日本の雅楽や民謡にもみられるという。日本情緒にも通じるものなのだ。(ボストン時代の室内楽にも四分音は使われている。)  最後まで面白く聴くことが出来た。このような作品を、まだ日本ではクラシック音楽の受容が浅かった1930年代に書いていたとは驚くしかない。ボストンでは当時の「現代音楽」が演奏会のプログラムに必ず含まれており、それを浴びるように聴いた大澤壽人。大澤壽人は時代の先を行き過ぎていたので、日本で受け入れられるには21世紀を待たねばならなかったのだろう。

「神風協奏曲」は、CDも出ているし、演奏実績も何度かあるようだ。大澤壽人の作品の中では、数少ないメジャー(?)作品だろう。この演奏会が待ち遠しく、頭の中で冒頭のジャッジャッジャ〜、タターンが、しょっちゅう鳴っていた。CDで聴いて気に入った曲だが、生で聴いたらCDで聴いた演奏の何十倍も素晴らしい。音の一つ一つがはっきりと聞こえる。こちらも、独特の雰囲気を持った作品で、グリッサンド奏法などもあり、ジャズ風な箇所もあり、豪快にして美しい音楽を、こちらも最後まで面白く聴けた。第2楽章の中間部は特に好きなのだが、生で聴くことが出来て感動ものであった。

休憩のあとは、これまた世界初演の交響曲第1番である。三管編成に、ホルンは6本、打楽器も5人と大編成だ。会場にいる全員が初めて聴く曲であるが、こういう演奏会に行って実際に聴いたというのは、貴重な経験である。世界初演は1回しかない。それが作曲されて80年も経ってからようやくというのは残念な部分もあるが、それだけ大澤壽人作品には独特な新しさがあって、受け入れられるのに時間がかかったということだろう。冒頭の弦楽によるメロディーからして、どの交響曲とも似ていない、まさに大澤作品としかいいようがない独特のものである。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのソロも入り、木管のソロも多く、聴かせどころを随所に配しながら、リズムをうまく使って、見事な作品になっているという印象を持った。

世界初演となったのは、ニューイングランド音楽院による初演を試みるも学生オケでは手に負えず、その後パリで初演を試みるも、大曲ゆえに経費の関係で実現できず第2番が演奏されるなど、巡り合わせとはいえ、初演の機会に恵まれぬままとなっていたものだが、そのあとも全く演奏されなかったというのはどういうことだろう。日本のオーケストラは何をやっていたのか。モーツァルトやベートーヴェンを何万回演奏したのか知らないが、その間になぜ自国の作曲家の作品を演奏しないのか。まだ演奏されていないか、せいぜい初演1回限りの作品は多数あるはずだ。もし、「演奏する価値がない」と思っているなら思い上がりだ。価値があるかどうかは聴く方が決める。プロのオーケストラは、作曲家が作った作品を音にする義務がある。

今日は、行く価値が十分にあった演奏会であった。大澤壽人は、まだ演奏されていない作品は多いと思う。ボストンやパリの人たちは聴いたのに、日本人が聴いていない大澤作品も多いはずだ。今日演奏された3曲も、演奏会の定番プログラムになってもいい作品である。
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