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2015年06月13日21:40

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【散策】 川越 「鬼畜」巡り

最近、芥川也寸志の音楽を聴く機会が多い。先日5/31(日)もオーケストラ・トリプティークによるコンサートに行って、素晴らしい音楽を堪能した。「鬼畜」、「八甲田山」、「八つ墓村」の映画音楽も演奏されたが、この中で「鬼畜」(1978年、野村芳太郎監督)は観たことがなかった。音楽は非常に印象に残るものだが、この機会に映画も観ようと思い、先日DVDを買って観た。ずしりと重く響く、なんともいえぬ後味の映画だった。この映画の主な舞台は埼玉県の川越であり、ふと川越に行きたくなった。映画「鬼畜」にまつわる場所を中心に巡ってみたい。37年も前の映画なので、現在どれだけ当時の風景が残っているか分からないが。

川越に行くには新宿か池袋に出れば便利だが、あえて八高線で小川町まで行くことにした。立川から拝島に出てここから八高線だ。高麗川まで電車で、これも川越行きなのに、わざわざ高崎行きのディーゼルカーに乗り換える。電化区間はかなり宅地化が進んだが、非電化区間はやはり長閑な田園風景である。小川町から寄居行きの東武東上線に乗り換える。このルートを取った理由は、まずは男衾から始めたかったからである。「鬼畜」で、菊代(小川真由美)が、3人の幼い子供と暮らしている家がここだ。東武東上線はガラガラで男衾駅で降りたのも3人だけだった。男衾駅は、改札に出るのに跨線橋を渡っていくところが、映画からの変化だが、駅舎は当時のままだった。ただし、改築工事が始まっているようで、もう少ししたら変わってしまうかもしれない。男衾駅周辺は、映画のとおりの田舎の風景である。少し周辺を歩いてみる。林の中の道があり、ここが菊代の家に通じる道だろうか。まだ午前中なのにかなり暑くなってきた。

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(男衾駅)

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(男衾駅近くの林)

男衾から東武東上線で川越市に向かう。電車は全て小川町で乗り換えとなる。小川町からは池袋行きの快速急行だ。森林公園には車庫があり、菊代が連れた利一が「お母さん、電車だよ」というところである。(ただし、車庫は南側にあり、映画では進行方向が逆だ。) 東松山まで各駅に停まり、このあと、坂戸、川越市に停まる。このあたりから乗客も増えてくるが、川越市で下車する。駅舎は改築されていて、映画とは異なっている。しかし、宗吉(緒形拳)がステテコ姿で駆け上がった階段はそのままだ。

まずは連雀町交差点のあたりまで行くことにする。ここにあるのが蓮馨寺というお寺だ。映画の中にも何度か登場する。広い境内が近所の人の遊び場になっているが、かつてここに「川越ピープルランド」という遊園地があった。お寺の境内に遊園地があったのだ。ピープルランドも映画には登場するから、昭和53年当時はあったのだろう。今は跡形もない。お寺の鐘は、当然ながら全くそのまま残っている。映画の画面で見た位置関係から「ピープルランド」の場所は大体推定出来た。

蓮馨寺から道路を渡った反対側が熊野神社だ。地元で「おくまんさま」と呼ばれ、熊野大神、すなわち伊弉諾尊、事解之男尊、速玉之男尊の三神を祀っている。熊野神社にお詣りする。境内には川越の高校生が作ったという観光案内の掲示もあった。熊野神社の向こう側に行くと、杉田ガラス店がある。一見ごく普通のガラス店だが、「鬼畜」を観た人ならピンとくる。「ピープルランド」の入口にあった曲面ガラスの提供者だ。その曲面ガラスが店の前に今もあった。ガラスを見て面白がる子供たち。それを後ろで見ながら、お梅(岩下志麻)の言った「あんたの子だって? 似てないよ」を思い出す宗吉。映画内でもちょっとしたシーンに使われている。

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(川越市駅)

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(蓮馨寺)

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(蓮馨寺の鐘−手前がピープルランド跡)

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(杉田ガラス店の曲面ガラス)

仲町交差点まで行くと、ここから先がいわゆる「蔵造りの町並」だ。今は観光地化して今日も人通りが多いが、このような町並が残されているのは良いことだ。以前は古い町並みを残そうという意識はあまりなかったと言う。映画にも「蔵造りの街並みを守ろう」との文字が一瞬見えるが、その頃からようやく残そうと言う気運になったのだろう。由緒ある店も多く、それぞれゆっくり見て回るのも楽しい。ただし、道は車も多いので歩く時は注意が必要だ。

少し行くと、川越のシンボルともなっている「時の鐘」が見える。400年もの間、時を告げている鐘だ。今も1日4回(午前6時、正午、午後3時、午後6時)、鐘を鳴らしている。川越市指定文化財であり、日本の音風景百選の1つに選定されている。この「時の鐘」の前はかなりの人だかりだった。やはり川越に来たらここに来ない訳には行かないのだろう。映画「鬼畜」にも、もちろん何度か映っている。「時の鐘」があるのは薬師神社であり、奥まで行ってお詣りする。「時の鐘」の前には人は多いが、神社の方まで行く人は少ないようだ。薬師神社はもとは医王院常蓮寺というお寺で、明治維新後に薬師神社になったという。寺が神社になった訳だ。

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(蔵造りの町並(1) )

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(蔵造りの町並(2))

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(時の鐘)

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(薬師神社)

「時の鐘」から少し行くと、小さなラーメン屋がある。「大八勝山」という店であるが、「鬼畜」に登場する「勝山」だろうか。「時の鐘」との位置関係からそうに違いないと思って近寄ってみると、それを裏付ける新聞記事が貼ってあった。37年前の映画だから、現在は少し改装されているが、まさにあの店だ。菊代が子供3人を連れて、宗吉宅に行く前にラーメンを食べた店である。ちょうど昼近いのでここで食事をする。ここの名物である川越ラーメンと紫イモ餃子を注文する。川越ラーメンは薩摩イモが入っているのが特徴である。川越はイモの産地としても有名だ。紫イモ餃子は、その名のとおり紫イモを練り込んだ餃子で、紫色の餃子も珍しいが、なかなかの美味であった。この店が考案した餃子が、今や川越の名物の一つになっているという。ちなみに「鬼畜」の撮影は2日間この店を借りて行ったそうで、かなり暑くて冷水器の水がすぐに空になってしまったという。

食事を終えて、札の辻交差点のあたりまで行く。この近くになるのが菓子屋横丁だ。文字通り菓子屋ばかりが並ぶ横丁であるが、昭和そのままの雰囲気であり、ついつい買ってしまいたくなるような店ばかりだ。ハッカやニッキ飴、煎餅、団子などの他、イモを使ったお菓子も多いのは川越ならではだ。

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(ラーメン屋「大八勝山」)

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(菓子屋横丁)

川越の町も魅力が多く、まだまだ見所はたくさんあるが、今回は映画「鬼畜」に因んだ場所を中心に巡ることにしたので、あとは次の機会の楽しみとしておき、そろそろ引き上げることにした。帰りは西武新宿線の本川越駅から乗って、西武新宿まで出てから帰った。
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