最近読んだ本の、備忘的メモ。
●「鳥類学は、あなたのお役に立てますか?」 (川上和人著、新潮文庫)
小笠原諸島に生息する鳥類の生態を研究している鳥類学者の本。普段行くことの出来ない無人島に調査に行くのも、島の生態系を破壊してはいけないし、調査メンバーも過酷な環境に置かれるわけで、時に命がけの冒険になったりするが、「どうして鳥の研究をするのですか?」 「楽しいから。他に理由が必要かい?」ということである。小笠原にしかいない種もあるし、絶滅危惧種もいる。それの保護もまた重要な使命なのである。著者は恐竜にも興味があり(「鳥類学者 無謀にも恐竜を語る」という本もある)、それに絡めて生物進化の話もあったりする。とはいっても、この本は堅苦しい本ではなく、ユーモアを交えて、軽妙な文章で綴っており、鳥類学には疎い私でも楽しんで読めた本である。
●「なぜ彗星は夜空に長い尾をひくのか」 (渡部潤一著、誠文堂新光社)
宇宙をめぐる不思議な天体である彗星。どこからともなく現れて、どこへとも知れず去っていくようにも見える。そして見た目は美しい尾をなびかせて、夜空を彩るのである。この本は、そもそも彗星とは何なのか、尾を引くように見える理由は何なのかなど、まずは基本的なことを解説する。尾にもダスト・テイルとイオン・テイルがあり、太陽の影響で向きも決まるのだ。そして彗星はどこで生まれるのか、なぜそんな軌道になるのか、彗星の明るさを決めるものは何かなど、詳しく解説していく。惑星の動きは秒単位で正確に計算できるが、彗星は予測が外れることもある。突然消えることさえある。また、太陽の近くに一度来たら二度と姿を見せない彗星も多いのだ。1986年のハレー彗星接近時は、私もその姿を肉眼で見て感動したが、ハレー彗星のように「分かりやすい」彗星ばかりではないのだ。
●「万博と鉄道」 (松本典久著、交通新聞社)
万博が開催されれば、当然そこへの輸送を担う交通機関が必要になるわけで、この本は万博によって新設された鉄道や当時のダイヤなどを、1970年の大阪万博、1985年の筑波科学博、1990年の大阪の花博、2005年の愛・地球博それぞれについて述べている。大阪万博は国中が熱狂した国際博覧会であり、北大阪急行が新設された他、国鉄も全国から大々的に輸送体制を敷き、阪急や大阪地下鉄も改革を行った。筑波博では万博中央駅が設置され、国鉄の輸送が強化された。花博では地下鉄鶴見緑地線が開通し、日本初のリニア地下鉄として注目を集めた。愛・地球博では磁気浮上式リニア方式の鉄道が敷設され、会場内でもJR東海の超電導リニア館が一番人気になるなど交通万博のようになった。改めて見ると、万博によって新しい技術による鉄道が生まれたともいえるのである。現在開催中の大阪・関西万博では何が生まれただろうか。
●「財布は踊る」 (原田ひ香著、新潮文庫)
ヴィトンの高価な財布を巡る物語。財布は疑い、騙り、盗み、悩み、学び、そして踊るのである。生活費を節約して貯金をしていた主婦の葉月みづほ。ようやく念願のヴィトンの財布を手に入れるが、夫に二百万円の借金があることが発覚、これはリボ払いの罠であった。泣く泣く財布をメルカリで売ることにした。その財布を購入した水野文夫はFXの情報商材を勧誘するというマルチのようなことをしていたが、友人の野田裕一郎に騙され、財布ごと現金を奪われる。野田は株の取引で大損していたのだ。平原麻衣子は契約社員で給料は少なく、奨学金の返済に苦しんでいた。そんな中、お金の貯め方に関する記事を書いている善財夏美の薦めで、友人と共同で住むことで家賃や光熱費を浮かす。ヴィトンの財布も野田から善財、そして平原へと渡っていく。その後、葉月は安アパートを購入してリフォームして貸出し、これがあたって安定した事業になっていく。平原も奨学金を完済した。野田は逮捕された。最後に財布も葉月の元に帰ってきたが、もう必要ないものだった。結局、挫折しても希望を捨てなかった人が最後は笑うということ。
●「ベルリン・フィル」 (芝崎祐典著、中公新書)
世界最高峰のオーケストラといわれることもあるベルリン・フィル。その歴史を、オーケストラの誕生から、ナチとの関係、東西冷戦期、そしてその後の改革までを綴った本である。市民のためのオーケストラとして生まれた「誕生期」、財政危機から脱し国際化へ進む「拡大期」、ナチに利用されつつも存在感を示す「爛熟期」、戦後の再出発の「再建期」、東西冷戦の中で商業主義が進む「成熟期」、ベルリンの壁崩壊後に独裁制から民主制へと変わって行く「変革期」、そして新しいオーケストラの形をさぐる「模索期」と、各章のタイトルを追っただけで流れも分かる。それぞれの常任指揮者である、ビューロー、ニキシュ、フルトヴェングラー、カラヤン、アバド、ラトルが、また象徴的である。ドイツを代表するオーケストラはドイツ史とも切っても切れないのであり、時代に翻弄されつつも、世界中の人々を魅了してきたのである。
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