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2025年01月11日22:34

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【読書】 最近読んだ本 備忘禄

最近読んだ本の、備忘的メモ。

●「旨いものはうまい」 (吉田健一著、ハルキ文庫)

文芸評論家の吉田氏による食エッセイ集。全編を通して著者が言いたいことは、タイトルのとおりの「旨いものはうまい」であって、それは決して値段の高いものや豪華なものばかりではないのだ。そもそも食や酒のことを書き始めたのは、「かういふものを書いてゐれば誰からも尊敬されたりする心配はない」からだったが、食通にされてしまったり、小難しい意味を付けられたりで、当てが外れたという。旨いと感じて食べれば旨いのであって、それ以上ではない。食べる楽しみ、飲む楽しみ。各地を訪れた際の旅の食物誌。同じものでもそれが旨く感じるシチュエーションはあり、それは私も全く同意である。どんな料理にどんな酒が合うのかも、独自の感性で書いていて、なかなか面白い。文庫では新装版で最近刊行だが、旧仮名遣いで書いてあるし、元はいつ書かれたものなのだろうか。


●「「そうだ 京都、行こう。」が長く続くわけ」 (水野由多加著、交通新聞社新書)

JR東海が新幹線利用促進のために制作した「そうだ 京都、行こう。」のキャンペーンは、現在も続いている。開始から30年以上だ。なぜここまで続いているのかを、多くの人に受け入れられる良い広告とは何かという視点で、広告論の専門家が綴った本である。そこには京都という町が持つ他の都市にはない独特の魅力というのもあるが、それを時代ごとに見たいものを見せてくれるような作り方をしているからだという。日常の生活に追われているような現代人に、何かを気付かせてくれるものが京都にはあり、それを実にうまいキャッチコピーで伝えているのだ。そして肝心なのは、「行かなければ分からない」ということだ。直接的には言っていなくても、新幹線を使えば思い立ったらすぐ行けるわけだ。私としても、鉄道会社の広告で「そうだ 京都、行こう。」を超えるものは今のところないと思う。


●「なぜ宇宙は人類をつくったのか」 (桜井邦朋著、祥伝社)

物理学の本ではあるが、もっと広い大きな話に向かっているような内容である。最初はガリレオやニュートンの力学、そしてアインシュタインの相対性理論、ビッグバンなど、宇宙創造の解明に向けた物理学の流れを示し、そのあとで自然の全てを説明する「統一理論」の夢へと至る話を解説しているが、ここから宇宙がなぜ生命を生み出したのか、知性とは何か、現代文明を生み出した「ことば」はどのように獲得して進化していったかと話が展開していく。ヒト科ヒトという生物の存在が生まれたのは宇宙の意志なのだろうか、そしてその宇宙の意志を解き明かすことが出来るのだろうか、ヒトは神になり得るのか、人類はどこに向かうのか、そのために現代をどのように考えればよいかと、壮大なストーリーが描かれており、なかなか読み応えのある本であった。


●「ブルックナー譚」 (高原英理著、中央公論新社)

前に同著者による「不機嫌な姫とブルックナー団」という小説を読んだが、その関連ということで、この本が書かれたようである。序にも書いてあるように、高原氏は音楽の専門家ではなく小説家なのだが、この本はかなり分厚い本で、ブルックナー伝を事実に即して正確に記すとともに、間に特徴的な事件や挿話をもとに、ブルックナーの心情などを小説的に書いた内容を挿入し、なかなか読み応えのある本となっている。昨年末に読み終わった本で、ブルックナー生誕二百年を締めくくるのに良い本であった。今でこそブルックナーの作品は高い評価を受け、演奏機会も多いが、残念ながら当時は田舎出の野暮で不器用な人間として周囲から見られ、本人も必要以上に卑屈になっていたりしたのだ。そんなことを生涯をたどって綴った好書であると思う。


●「西村朗 しるべせよ」 (丘山万里子著、春秋社)

分厚い高価な本だが、西村朗の作品はCDで結構聴いているつもりだったので、年始にじっくり読んでみようと思って購入した本である。著者によれば、「精神・肉体・風土を強靭に持ち続け、いわゆる日本人性を対西欧として主張するのではなく、(中略) あくまでも自身の生理・リアリティに従い全宇宙開闢太古普遍の音の原水から発生し続けた作曲家」であるのが西村朗であり、始原の声や大悲の淵がどのような背景で作品になっていったか、西村の原体験や思想などを追いながら、著者の視点で分析していったものである。実は私が聴いている西村作品は管弦楽作品など器楽曲に偏っており、歌曲、合唱曲、歌劇など声を伴う作品は未聴が多いが、それらを聴かないと西村作品の半分以上も理解できていないことも、この本で思い知らされたので、それらもおいおい聴いていこうと思う。
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