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2023年12月15日20:12

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【読書】 最近読んだ本 備忘禄

最近読んだ本の、備忘的メモ。

●「ハイクポホヤの光と風」 (舘野泉著、音楽之友社)

ハイクポホヤとは、ヘルシンキから北へ230km離れた湖畔の森で、ここに別荘を購入したピアニストの著者による、これまでに書きためたエッセイをまとめた本である。各地をコンサートで巡りながら出会った作曲家たち、すでに亡くなっている作曲家から現役の作曲家まで、まつわる思い出などを綴る第1章の「共に歩んだ作曲家」として、シベリウスはもちろん、ムソルグスキー、ノルドグレン、セヴラックなどから、矢代秋雄、三善晃、中田喜直、末吉保雄などなど。そして第2章では「旅は続く」と題して、フィンランドはもちろん、アイスランド、フランス、ルーマニア、ロシア、アルゼンチンや、東南アジアの国々など、各国の文化の違いによる音楽事情などを絡めて、綴っている。舘野泉は脳溢血によって右手が全く使えなくなったあとも、「左手のピアニスト」として精力的な演奏活動を続けており、私も何度か生で聴いている。米寿を迎えてもなお活躍していているピアニストである。


●「ビジネス特急こだまプロジェクト秘史」 (福原俊一著、河出書房新社)

昭和33年11月に東海道本線に登場した、ビジネス特急「こだま」。それまでは長距離を走る列車は、機関車が牽引する動力集中方式が普通だったが、これからは動力分散方式の電車特急が主役となると判断し、新型車両151系を完成させるまでの一大プロジェクトの話である。最初は機関車派の反対の声も根強かったが、それを退けるには成功させるしかない。先進諸外国の列車にも劣らない画期的な車両でなければならないのだ。そして、技術者たちのたゆまぬ努力により、ついに登場した151系電車。それは予想をはるかに超える爆発的人気となり、「こだま」の登場こそが鉄道史の大きな転換となったのだ。東京から大阪まで日帰り可能となり、連日満席に近い乗車率を誇る特急となった。この成功がなければ新幹線も生まれなかったかもしれない。新幹線開通後は活躍の場を他の路線に移し、さらに改良を加えて他形式にも発展し、国鉄電車特急全盛となるのである。


●「計算する生命」 (森田真生著、新潮社)

古代人の物を数えるということから始まった人類と計算の関わり。数を数えるということにも「わかる」と「操る」の違いがあり、「わかる」前に「操る」こともできるのである。それから、計算を可視化していき、古代ギリシャのユークリッドから、デカルトの代数的計算、リーマンの多様体と発展していく。計算は、いつでも人間の認識を拡張する営みだったのだ。不確かな現実の中で、確かな認識を得たいという情熱があったのだ。計算結果に意味を持たせることこそ、数学者が生み出してきた数々の概念なのである。そしてAI全盛の今、意味の理解は放置したままでも、計算は加速している。人は計算の結果を生み出すだけの機械ではない。与えられた意味の安住だけの生き物でもない。計算し、計算の帰結に柔軟に応答しながら、現実を新たに編み直し続けてきた、「計算する生命」なのである。なかなか深い、哲学的な数学史の本である。


●「日光の三神」 (吉野薫著、下野新聞社)

栃木県の地方新聞社の発行した、日光と宇都宮の関係を考えるという本。著者は地元の市役所を定年退職したアマチュア研究者とのこと。二荒山神社が宇都宮と日光にそれぞれ存在することはよく知られているが、そもそもなぜ二つあるのか、これらの関係はどうなのかとなると、多くの謎がある。これを考察することから始まる。日光側に立った説、宇都宮側に立った説が入り乱れているが、古代の二荒山神社は宇都宮にあり、男体山に住む二荒神を祭神としていたことから、いろいろな経緯を経て双方に「二荒山」が存在することになったという。標題の三神とは一般に男体山、女峰山、太郎山に対応した三神を指すといわれていたが、実はその三神はすべて男体山の祭神だったのだそうだ。そして、「日光山縁起」に書かれた有宇中将や朝日姫の話、その夫婦の孫にあたる猿丸という人物と小野家の関係、オロチと大ムカデに姿を変えた神々の戦いなど、日光と宇都宮にまつわる話を深く掘り下げている。


●「江ノ電物語」 (熨斗克信編、虹色社)

江ノ電の沿線は、小説の舞台にもなりやすい気がする。そんな訳で、6編の短編と、その間に豊富な江ノ電や周囲の風景の写真を載せた本である。藤沢−柳小路では「物語が、はじまる」(栗山直樹)、鵠沼−湘南海岸公園では「徐行」(赤司琴梨)、江ノ島−腰越では「いつかのトンボロに君は」(大岡和摩)、鎌倉高校前−稲村ケ崎では「七里ヶ浜流局」(齋藤圭介)、極楽寺−長谷では「マイルストーンはすぐそこに」(熨斗克信)、そして由比ヶ浜−鎌倉では「揺れる緑と乙女のひみつ」(長谷川美緒)。それぞれ若い人を主人公にした話で、なんとなく江ノ電沿線に似合っているような気がする。江ノ電沿線は私もよく出かけるので、雰囲気も大体分かる。ちなみに、各作家はみな早稲田大学出身の若手らしい。虹色社というのも早稲田にあるようだ。
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