まだ暑い日が続く8月下旬。今夜は多摩センターに行った。荒川以津美ヴァイオリンリサイタルを聴きに行くためだ。
プログラムは次のとおりである。
・G.F.ヘンデル:ヴァイオリンソナタ第4番
・J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第2番
・C.フランク:ヴァイオリンソナタ
ヴァイオリン:荒川以津美/ピアノ:長尾洋史
会場:パルテノン多摩 (18:30 開演)
荒川さんは読売日本交響楽団のヴァイオリン奏者であると同時に、室内楽の演奏会や、アマチュアオーケストラのトレーナや協奏曲ソリストなどでも活躍しており、今日のようなリサイタルも時々行っている。その都度案内が直接来るので、行ける日はなるべく行くことにしている。
最近バロック音楽にも力を入れはじめているそうで、以前から取り組んでいるバッハに加え、今回はヘンデルのソナタを演奏するのである。リサイタルをやると聞いた時に、プログラムを見て、「ヘンデルのソナタは聴いたことがないなあ」と言ったら、「ヴァイオリニストにとっては馴染み深い曲だ」と言われた。その後、実はこの曲の入ったCDを持っていたことが分かったが、CDを買ったことすら忘れているくらい、私には馴染みの薄い曲なのであった。
前置きが長くなったが、そんな訳でヘンデルのソナタは新鮮な気持ちで聴くことが出来る。この曲の演奏ではバロック弓を使ったそうで(と言われても、素人耳にはよく分からないが)、もちろんヴィブラートもほとんど付けずに弾いている。あまり小難しいことを考える必要もなく、素直に耳に入ってくる心地よい音楽である。ピアノとの息もぴったりで(2人は東京藝大の同期だそうだ)、まずは1曲目から良い気持ちになっていった。
続いては、バッハの無伴奏である。バロックには疎い私でも、バッハの無伴奏ソナタとパルティータは知っている。無伴奏なので、ステージ上にはもちろん1人だけである。照明もスポットライトに代わり、奏者だけを照らす。これがもう圧巻としか言いようがない演奏であった。バッハの無伴奏ソナタを聴くと、これは良い曲だなあとか、素敵な音楽だなあという次元ではなく、また演奏者がどうこういうようなことも超越したような、バッハの音楽だけがそこにあるというような感じになるのである。いや、そのように感じさせてくれるような演奏であったというべきだろうか。このことを終演後に伝えたら、「でも、すごく難しかったんですよ」という。演奏に高度な技術が要求される曲なのは素人の私にも分かる。1本のヴァイオリンだけで、こんなにも表情豊かになるのだ。
休憩のあとは、前半とは雰囲気が変わって、フランクのヴァイオリンソナタである。衣装も変えての登場である。冒頭のピアノの序奏のあとのヴァイオリンが奏でるメロディー(ここに「フランク〜のソ〜ナタ〜」という歌詞(?)を付けたのはどなただったか。それ以来必ずこう聞こえるようになってしまった)は、あまりねっとりせず、ふわっと入った感じであった。そのあとも濃過ぎる演奏にはせず、この作品の良さをストレートに伝えようとしているように感じた。実に好ましい。この曲はピアノも単なる伴奏ではない。ヴァイオリンが手を休め、ピアノだけが響く箇所もあり、ここがまた素敵なのである。ヴァイオリンしか聴いていないとすればもったいない。もともと好きな曲だが、生で聴く機会はそう多くはないので、今日は十分に堪能できた。
全てのプログラムが終わり、最後に荒川さんの挨拶。このパルテノン多摩が思い出多い場所であることなどを語り、このあとはアンコール演奏。ラフマニノフのヴォカリーズである。この曲で穏やかに演奏会を終えるかと思っていたら、もう1曲演奏してくれるらしい。音を合わせ演奏しようとしたら、ピアノの長尾さんから「トーク、トーク」と言われ、アンコール曲の説明。そして、ファリャのスペイン舞曲で、最後は賑やかに締めくくった。
終演後は、ロビーで待機していた荒川さんに挨拶して、ついでに記念撮影もして、心地よい気分で帰路についた。
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