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2022年04月02日20:58

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【音楽】 ヤンネ舘野ヴァイオリン・リサイタル

今日の午後は上野に行った。といっても、上野公園に花見に行ったのではない。東京文化会館へ演奏会に行ったのだ。ヤンネ舘野ヴァイオリン・リサイタルである。

プログラムは次のとおりである。
 ・久保禎:5つの風景画
 ・マグヌッソン:オルマルの狂詩曲
 ・エスカンデ:グラフィティエリア
 ・ショーソン:ヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のためのコンセール

   ヤンネ舘野 (ヴァイオリン)/舘野泉 (ピアノ)
   水月恵美子 (ピアノ)/亀井庸州 (ヴァイオリン)/橋口瑞恵 (ヴァイオリン)
   金子なお (ヴィオラ)/舘野英司 (チェロ)

   会場:東京文化会館小ホール (14:00 開演)

上野駅周辺は人が多い。今日は絶好の花見日和だ。しかし、上野公園では宴会などは禁止されている。まだ新型コロナウィルス感染症は終息していない。そんな花見とは関係なく、東京文化会館に向かう。ヤンネ舘野のヴァイオリン・リサイタルで、「遥かなる地への旅」との副題が付いている。その名のとおり、日本、アイスランド、アルゼンチン、フランスの作曲家の作品で旅をするのでる。ヤンネ自身の「過去への旅」という意味も込められているという。

さて、今日のプログラムだが、知っている曲はショーソンのコンセールだけである。それもそのはずで、マグヌッソンの作品と、エスカンデの作品は世界初演、久保の作品も5曲中2曲が世界初演だ。同時代を生きる作曲家の新たな作品を聴く楽しみもある演奏会である。

前半は、舘野泉のピアノとの二重奏である。親子デュオだ。もちろんピアノのパートは左手だけで演奏できるように書かれている。舘野泉は85歳の現役ピアニストで、少々歩き方がゆっくりではあるが、ピアノの前に座ると完全にピアニストである。

久保の作品は鹿児島県に伝わる民謡を素材にした作品で、「串木野さのさ」、「鹿児島ハンヤ節」、「山川町利永の琉球踊り」、「鹿児島おはら節」、「根占町木遣歌」に基づいている。もちろん民謡そのものではないのだが、やはり民謡的旋律を聴くと、日本人としては響くものがある。鹿児島県に沖縄踊りがあるとは知らなかったが、その曲は聴いただけで沖縄と分かる独特の音階で、ピッチカートで弾くヴァイオリンが三線のようにも聞こえたりした。舘野泉のしっかりしたサポートもさすがである。左手だけとは思えない豊かな表情は、時にヴァイオリンから主役を奪っているようでもあった。

続いては、「オルマルの狂詩曲」である。これは、無声映画「農夫」に登場する主人公オルマルの物語で、もともとこの映画のために付けた音楽がベースになっているのだそうだ。挫折や失意などいろいろあったが、最後には明るい未来が訪れる、というようなストーリーらしい。もととなった映画も知らず、しかも初めて聴く音楽で全貌をつかむのは難しいが、ヴァイオリンと左手ピアノだけで奏でられる音楽から、さまざまに場面を変えて展開していくようには感じられた。じっくり聴くとじわじわと沁みてくるような作品といえそうだ。

前半の最後は、「グラフィティエリア」である。アートは美術館にだけあるのではない。街中に描かれたグラフィティこそ、全ての人に開かれたアートなのである。しかし、それは違法な落書きとして、すぐに消されてしまう。そこが、音楽のように一瞬で消えてしまう芸術と通じるものがあるという。この曲はバンクシーの描いた8つの作品からインスピレーションを得たもので、プログラムの中にこれらの絵も入っていたので、鑑賞の助けにもなる。時々、足で床を踏み鳴らしたりするなど、ヴァイオリンとピアノ以外の音も入るが、意外と(?)聴きやすく、きれいな旋律も多い。初めて聴く曲で、今後も聴く機会があるかどうか分からない作品に出会えた喜びのようなものも感じた作品であった。

休憩のあとはショーソンのコンセールだ。ヴァイオリン・ソロに、ピアノと弦楽四重奏の合計6人で演奏される。ピアノ+弦楽五重奏ではなく、あくまでもヴァイオリン・ソロと、ピアノ+弦楽四重奏の協奏曲なのである。冒頭の力強いピアノから印象的だが、そのあとに続く弦が、CDで聴いただけでは、どこがヴァイオリン・ソロで、どこが弦楽四重奏のヴァイオリンなのかはっきりしなかった。今日は視覚的にも誰が弾いているのか分かるので、なるほどこういう風になっていたのねと理解できるのである。まあ、普段そんなに積極的に聴いているとは言えない曲なのだが、こうやって生で聴くことで、なんとなく聞き流していたところが、よく分かることもあるのだ。第2楽章の美しい旋律はやはり生で聴いても素敵だった。40分くらい演奏時間を要する作品なのだが、じっくりと最後まで堪能することが出来た。

最後に、ヤンネと水月の二重奏でアンコール演奏があった。この2人なら、もちろんフィンランドものだろう。最後は爽やかに締めたいということで、やはり、シベリウスの「ノヴェレッテ」であった。

未知の作品に出会えたり、普段あまり積極的に聴いていない作品をじっくり聴いたり、今日も、個人的には実り多い演奏会であった。
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