今日は東京交響楽団の演奏会に行った。
プログラムは次のとおりである。
・ボッケリーニ (ベリオ編曲) :マドリードの夜の帰営ラッパ
・ベルク:ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」
・ベートーヴェン:「フィデリオ」序曲
・ベートーヴェン:「レオノーレ」序曲第1番
・ベートーヴェン:「レオノーレ」序曲第2番
・ベートーヴェン:「レオノーレ」序曲第3番
指揮:下野竜也/ヴァイオリン:南紫音
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール (18:15 開演)
元々は昨年の5月に実施予定だったプログラムである。昨年5月と状況はほとんど変わっていないのだが、どうすればよいか模索状態だった昨年と違い、対策の取り方もはっきりしてきたので、演奏会も開催できるということだろう。「Bに捧ぐ」という副題の演奏会だが、そのとおり「B」で始まる作曲家の作品だけを取り上げるのである。会場の入りは50%以下に制限してあるとのことで、空席が多いのは仕方あるまい。
1曲目はボッケリーニだが、実はこの作曲家ほとんど守備範囲外で、この曲も初めて聴く。とはいっても、ボッケリーニの原曲ではなく、ベリオがオーケストラに編曲したものである。もとは弦楽五重奏らしい。小太鼓の導入部を受けて演奏が始まると、あれ?初めて聴くはずなのにどこかで聴いたことあるような曲、何の抵抗もなくすっと耳に入る馴染みやすいメロディー。もしかしたら原曲かあるいは編曲を、どこかで聴いたことがあったのかもしれない。元が弦楽五重奏曲とは思えないくらい、大音量でオーケストラが盛り上がる箇所もあり、そこは編曲の面白さなのだろう。
続いては、ヴァイオリニストの南紫音を加えてのベルクの協奏曲だ。標題にある「天使の思い出に」とは、アルマ・マーラーの娘マノンが19歳で亡くなったことを悼んだものといわれているが、必ずしもマノンだけを指しているとはいえないという説もあるらしい。それはまあ置いといて、演奏を聴くことにする。実はこの曲は以前よりやや苦手であった。生で聴くのはたぶん初めてだ。第1楽章冒頭のヴァイオリン・ソロが入るところの、すすり泣くような(?)感じにはじまり、美しくもはかなかった「天使」の短い生涯を思いながら、静かに弔っているように感じ取れないことはないのだが、やはりところどころ退屈してしまった。もう少し聴き込めば、この曲の良さも分かるかもしれないと少し思えたことが、今日生で聴いた収穫か。
休憩のあとはベートーヴェンのオペラ序曲4連続である。一つのオペラの序曲を、ベートーヴェンは上演のたびに変えつつ、ようやく「フィデリオ序曲」に落ち着く訳だが、これを4曲続けて演奏会で聴く機会はあまりないだろう。演奏順は上記のとおりだが、作曲順はレオノーレ序曲第2番、第3番、第1番、そして「フィデリオ序曲」である。このうち第1番とされる序曲ではオペラは上演されず、お蔵入りになったのを、あとから発見されて、こんにち演奏されるようになったのだ。
まずは、一番馴染んでいる「フィデリオ序曲」で好調にスタートする。続いてレオノーレ序曲第1番だが、4曲の中では一番演奏機会が少なそうなこの曲も、こうやってじっくり聴いてみると、なかなか渋くて味わいのある曲だなと思った。トロンボーンが入っていないのも、ちょっと他の番号とは違った雰囲気に響く理由の一つかもしれない。第2番と第3番はよく似ていて、第2番をベースに修正したのが第3番ということが、続けて聴けば分かりやすい(ような気がした)。第2番のやや冗長なところをすっきりさせた感じだろうか。第2番と第3番に出てくるファンファーレのトランペットは、ステージの袖から聞こえてきたが、そうなっているとは今まで気付かなかった。そして、この部分も第2番と第3番で微妙に違うのだ。同じオペラの序曲を、改変のあとを追って続けて演奏となると、同じような曲が4曲も続くのかと思ってしまいがちだが、実は4曲それぞれ違っていて、やはり楽しめるのである。それがよく分かる演奏であった。
演奏会が終わりホールの外に出たら、まだ冷たい雨が降っていたが、晴れやかな気分で帰路についた。
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