最近読んだ本の備忘的メモ。
●「逝きし世の面影」 (渡辺京二著、平凡社ライブラリー)
「逝きし世」とは、江戸時代末期の日本のことで、明治以降の近代化によって、美しくも儚いひとつの文明が滅んだという。その、我々日本人が捨て去ってしまった文明を、外国人による数多の文献を渉猟し、そこから日本の姿を見ることによって、失ってきたものの意味を問い直そうという本である。「封建社会によって農民は苦しい生活を強いられた」というのも事実ではないことも分かる。親和と礼節を重んじる日本人、いつも陽気な日本人、女性の地位は保たれ、子供にとっては楽園だ。労働に対する誇り、性に対するおおらかさ、そして、美しい風景を大切にする心。簡素であることは貧しいことを意味しない。ヨーロッパの下層階級の悲惨な暮らしに比べると、日本の豊かさは驚愕に値するという。なんて素晴らしい時代だったことだろう。
●「天体衝突」 (松井孝典著、講談社ブルーバックス)
地球や生命の進化史は、長い時間をかけてゆっくり変化したという「斉一説」がこれまでは有力であったが、最近は、ある時を境に劇的に変化したという「激変説」に大きくシフトしているという。その激変の要因は天体衝突だ。そもそも天体衝突とはどういうことかを、ロシアに落下した隕石によるツングースカ爆発の話からはじめ、地球には大小様々な「天体」が頻繁に落下していることを説く。クレーターとはいかにして形成されたものか、彗星と小惑星はどう違うのか等の話を経て、地質調査の結果から、6550万年前の小惑星との衝突によって、恐竜の時代から哺乳類の時代に激変したということが分かってきたということを示している。非常に興味深い本である。
●「薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理」 (塔山郁著、宝島社文庫)
薬にまつわるミステリー小説である。ホテルマン水尾は足の痒みに悩まされる。水虫と診断され薬を処方されるが効き目がない。そんな時に出会った薬剤師の助言で、医師の診断に疑問をもち、正しい症状が分かる。ホテルの客室で紛失したアトピーの薬、急な眠気に襲われるホテルの客室係、薬が足りないとクレームをつけ過剰な要求をする患者、格安でダイエット薬を売る悪徳医師、等々、薬に関わる「事件」を、豊富な知識と経験で見事に推理して解決する、クールな薬剤師・毒島花織。しだいに水尾も毒島に好意を抱き始め、毒島の身の上が語られる。実際、薬剤師って地味にすごい人だと思う。
●「ここがすごい!東京メトロ」 (土屋武之、交通新聞社)
地下鉄としては日本一の規模を誇る東京メトロだが、改めて見てみると「すごい」点が盛り沢山であるという本である。地下鉄の歴史が刻まれた銀座線、地形に沿って走る丸ノ内線、最初の相互直通運転をした日比谷線、郊外型路線としての役割も有し、最混雑路線ゆえの苦労がしのばれる東西線、新技術の導入路線であった千代田線、独立路線からスタートし、複雑な相互直通運転路線に変貌した有楽町線、新しい相互直通運転のスタイルを確立した半蔵門線、フルスクリーン式ホームドアを導入した南北線、唯一の「都心」を通らない副都心線。それぞれの路線毎に特徴があるのだ。東京メトロは全線乗ったし全駅おりたことがあるが、乗りながらじっくり観察すると、新たな発見があるかもしれない。
●「協力と裏切りの生命進化史」 (市橋伯一著、光文社新書)
地球上の生命がどのように進化していったのかを、「協力」と「裏切り」という観点で述べた本である。そもそも生命とは何かから説き、単細胞の生命体が他の細胞を取りこみ一体化し、細胞膜の代わりに核を持つ真核生物になり、その細胞が結合して、より高等な生物になっていくという、進化の過程を述べる。それぞれの細胞が役割分担をし、いわば「協力」によって成り立っているのだ。細胞間の協力から個体間の協力へ進み、そして社会が形成されて「協力」が維持されていく。一方で「協力」しない「裏切り」が登場するが、実はこの「裏切り」の登場によって、協力関係が見直されて、また新たな進化につながるという。
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