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2018年03月10日21:54

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【音楽】 オーケストラ・アンサンブル・フリーEAST演奏会 〜盤上の舞

暖かくなったり寒くなったり、まさに三寒四温の日々である。今日もコンサートに行った。オーケストラ・アンサンブル・フリーEASTの第9回演奏会である。アンサンブル・フリーは、もともと関西を拠点にしていたアマチュア・オーケストラらしいが、その関東版として結成され、EASTを付している。若い作曲家の作品の初演を積極的に行うなど、現代音楽の普及にも貢献しているオーケストラだ。聴きに行くのは今回が初めてだ。

今日のプログラムは次のとおりである。
 ・ラヴェル: 古風なメヌエット
 ・薮田翔一: 組曲「風神雷神」
 ・薮田翔一: Gush I/Gush II
 ・ラフマニノフ: 交響的舞曲

   指揮:浅野亮介/ソプラノ:ドルニオク綾乃/ピアノ:上水樽力/ヴィブラフォン:會田瑞樹
   会場:杉並公会堂 (14:00開演)


今回取り上げる作曲家の薮田氏も、指揮者もソリストも若い。オーケストラのメンバーも見たところ若い人ばかりだ。クラシック音楽界も良い形で世代交代が進んでいると思うが、これもその一例だろう。

今日の演奏会は「盤上の舞」という副題が付いている。その名のとおり「舞」がテーマである。薮田氏の現代作品をクラシック作品で挟むという構成である。薮田氏の作品は、ハープ曲の「セレーネ」ぐらいしか聴いていない。ほぼ未知の作曲家といってよい。

第1曲目はラヴェルの「古風なメヌエット」だが、これは前座かオーケストラの肩慣らしか。あれ?ラヴェルの「古風なメヌエット」ってこんな曲だったかなというような、あまりラヴェルに聞こえない、というより音のバランスが悪いのか、どうもスッと入れないまま終わってしまった印象だった。

ところが、次の薮田翔一の作品になると一変した。やはりこのオーケストラは素晴らしいと思った。

「風神雷神」は、俵屋宗達の「風神雷神図」をモチーフに新たな世界観による物語を作り、和楽器は用いず西洋楽器のみで、日本の舞と西洋音楽のコラボレーションを作り上げたものだという。2015年の作品だ。ピアノの上水樽さんが指揮者とともに登場し、演奏が始まるや、「風神雷神」の世界に引き込まれる。風神雷神を呼び起こす音楽に始まり、打楽器が荒々しく鳴って風神雷神の登場。このあと、弦楽四重奏になり4人だけが演奏するのは、風神雷神の友愛の場面。風神雷神が激しく舞う音楽が続き、ここで音楽は一変し、天女の序曲になる。ドルニオク綾乃さんが、羽衣をつけて音楽に合わせて舞いながら登場する。(この役は若い美人でなければいけないなと納得。) 天女の序曲が終わると、そのドルニオク綾乃さんのヴォカリーズ。静かにピアノだけが伴奏しながら、美しい声が響く。(どこかで聴いたような旋律のように感じる部分もある。) このあとオーケストラが絡み、天女と風神雷神が混ざり合ってフィナーレとなる。分かりやすく、素敵な音楽だ。こういう現代作品なら楽しめる。

休憩のあとは、再び薮田氏の作品だ。Gushと題する、ヴィブラフォンと管弦楽の協奏曲だ。I は関東初演(初演は京都)、II は世界初演である。これまた若い(といっても、すでに第一線で活躍している)會田瑞樹さんが指揮者とともに登場し、まずはGush I から始まる。ピロロンとヴィブラフォンが鳴り、オーケストラと絡みながら、曲が進行していく。Gushとは「噴き出す」という意味であり、まさにヴィブラフォンが、何かが噴き出すような音を作り出し、オーケストラがそれに混ざり合っていくような感じである。打楽器としてのヴィブラフォンに加え、ヴィブラフォンならではの「響き」を活かしたような音楽で、結構楽しめた。

Gush II の方は少し趣が変わり、解説にもあるように「祈り」を感じさせる音楽である。オーケストラが、その「祈り」を表現し、ヴィブラフォンが絡んでいくような感じであろうか。こちらもまた楽しめた。Gushは、このあと III、IV、と続き、最終的に9曲になる予定らしい。続けて演奏してもいいし、演奏者が自由に抜粋してもよい音楽になるという。となると、このあと出来るであろう III 以降も聴いてみたくなる。演奏終了後に、作曲した薮田翔一さんもステージ上に呼び出された。こういうことが出来るのも、現役の作曲家の作品だからだ。

このあと、會田氏によるヴィブラフォン独奏のアンコール演奏があった。知らない曲だが、なんだか素敵な曲だなと思って聴いていたら、終演後に三木稔の箏譚詩集より「芽生え」だったと知る。あれ?この曲はCDで聴いていたはずだ。CDでは箏と管弦楽のオリジナル曲だが、會田氏が編曲したヴィブラフォン版は、雰囲気がずいぶん変わっていたのだ。

プログラムの最後はラフマニノフの「交響的舞曲」だが、なんだか集中力が切れたのか、途中から退屈してしまった。演奏がなんとなく平坦な感じに思え、好きな第1楽章で個人的に乗り切れなかったので、眠くなってしまった。

最後にもう1曲アンコール演奏があるようだ。再びドルニオク綾乃さんが登場し(ここでは羽衣は付けていないが)、薮田氏の「百人一首」から、「しのぶれど色に出でにけりわが恋はものや思ふと人の問ふまで」と、「君がため惜しからざりし命さへながくもがなと思ひけるかな」の2曲である。薮田氏は百人一首の全てに曲を付けたらしい。その中から2首を管弦楽伴奏版にしたのが、このアンコール曲という訳だ。

今日は薮田翔一作品に尽きる演奏会だった。ラヴェルとラフマニノフは前述のとおりである。薮田氏はまだ若い作曲家であり、これからが楽しみかもしれない。注目してみよう。

次回の演奏会は木下正道氏の作品を取り上げるらしい。その木下氏本人も会場に来ていた。

若い作曲家の新しい作品に出会える演奏会。これからも聴きに行きたくなるオーケストラが、また増えてしまいそうだ。
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