先週の日曜日に続き、今日もサントリーホールにコンサートを聴きにいった。9/2より「サントリー芸術財団サマーフェスティバル2017」として行われているシリーズ演奏会の一環で、今日は「戦中日本のリアリズム」というテーマのプログラムだ。
・尾高尚忠:交響的幻想曲「草原」
・山田一雄:おほむたから
・伊福部昭:ピアノと管弦楽のための協奏風交響曲
・諸井三郎:交響曲第3番
下野竜也指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:小山実稚恵
会場:サントリーホール (15:00 開演)
今日も魅力的なプログラムだが、いずれも生で聴くのは初めてだ。尾高の「草原」は録音でも聴いたことがなく、全く初めて聴く曲で、これも楽しみである。
今日の演奏会も多くの人が聴きに行っていて盛況であった。知合いにも何人か会った。
1曲目は尾高の「草原」である。全く初めて聴く曲なので、どのような曲かと期待していたら、これがまた実に素敵だ。蒙古の大草原を主題とした幻想曲ということであるが、いろいろとイメージを膨らませることが出来る曲だなと感じた。戦時中の作品なので何か隠された意味があるのかもしれないが、私は平和な大草原のイメージで聴いていた。良い曲だ。
続いてヤマカズこと山田一雄(和男)の「おほむたから」である。漢字で書けば「大御宝」である。天皇の民、帝国臣民といった意味で、つまり戦中の日本国民の姿を描いた作品だが、CDで聴いた時は「まるでマーラーだ」と思った。プログラムの解説もマーラー、マーラーだ。しかし、実際に生で聴いてみると、マーラーそのものというよりは、「大日本帝国の最期が迫っていた時期の悲痛な人民の叫び」という印象を持った。戦時中に、国民を励ます芸術音楽として流れた「おほむたから」は、実はマーラーと仏教声明を混合させた「葬送」の音楽であった。それが分かるような演奏であったと思う。
このあと休憩が入り、続いては伊福部の「協奏風交響曲」だ。小山実稚恵さんが指揮者とともに登場する。伊福部の曲は何度も聴いていると思っていたが、この曲を生で聴くのは初めてである。それもそのはずで、CD録音の他は、札幌と東京で1回ずつ演奏されただけだという。伊福部も、この曲の楽譜が焼失したために、これを発展させた「リトミカ」や「タプカーラ」を作っているのだが、譜面が発見されれば演奏することができる。捨て去るにはあまりにもったいない作品であったのだ。曲はおなじみの伊福部節だ。「リトミカ」や「タプカーラ」に発展した部分を意識しながら聴くと、その2曲をまとめて聴いたような(?)得した気分になる。小山さんのピアノも素晴らしく、オーケストラとの掛け合いもよくて、聴いていて心地良かった。小山さんのピアノは、「西洋のクラシック音楽」を弾く時とは違った、「日本の伊福部作品の音」を出していたように感じた。あと、第2楽章は木管のソロが結構多いことに今さらながら気付いたりした。フルートのソロの時は、ピアノも手を止め完全なソロだ。このあたりはすっかり聴き入ってしまった。最後は、大きく盛り上がって終わるというのは、「リトミカ」とも共通する。やはり今日はこの曲が一番すごかった。
このあとは、小山さんがアンコール演奏をするという。伊福部昭の「ピアノ組曲」から何か弾くのかなと期待していたらそのとおりで、2曲目の「七夕」である。盛り上がった雰囲気を一旦クールダウンさせるのにも良い、静謐な曲である。これは大好きな曲なので、これも聴けてうれしかった。
2度目の休憩の後は諸井三郎の交響曲第3番である。この曲も好きで、今回の演奏会でも期待していた。プロのオーケストラが演奏するのは39年ぶりだという。演奏がはじまると、すっかり聴き入ってしまった。下野さんの指揮も秀逸で、丹念に練り上げられているように感じた。このような素晴らしい作品がなぜ長期間眠っていたのか不思議だ。決して派手な作品ではないが、第2楽章などなかなか面白く、第3楽章は最後は天上にも昇っていくような穏やかな天国的音楽になっていく。作品も演奏も素晴らしい。
指揮者の下野さんは、1曲終わるたびにスコアを客席に示していたが、全てのプログラムが終わったところで、再び全4曲のスコアを持ってきて譜面台に並べ、そのスコアに対して頭を下げた。すると会場から大きな拍手。どんな素晴らしい指揮者やオーケストラであっても、作曲家の作った作品がなければ何も出来ない。まさに作品へのリスペクト。これに会場も大いに共感した瞬間である。
ここのところ日本人作曲家の演奏を続けて聴いているが、改めて良い作品が多いことに気付く。もっと頻繁に演奏されてもいい曲ばかりだ。流れは確かに変わってきている。埋もれていた邦人作曲家の作品は、埋もれたままにしておいてはいけないことに、みんな気付きはじめたように思う。
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