mixiユーザー(id:547825)

2016年09月23日23:28

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「ホテルローヤル」

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この小説が3年前に直木賞を取った時、著者の桜木氏の実家がラブホテルを経営しているということが
少々話題になったように思います。
その時私は、全国にあるラブホテルに経営者がいて家族があるという当たり前のことに
初めて気がついたのでした。

ホテルローヤルは、北国の湿原を背にするラブホテルです。
経営が破綻し、廃墟となったそのホテルの一室から話は始まり、
一山当てようとそのホテルの建設に乗り出す過去の日まで、逆再生されて行く。
その年月に、ホテルを舞台とした様々な人の人生が交錯する。

そこには満ち足りた人は一人もいないのです。
経済的に、或いは精神的に追い詰められた人々。
恋人から投稿ヌードの撮影に誘われ、”お互いの空洞を埋め合った上、さらに大切に
してほしいというのは過ぎたる望みなのだろう”と思う女事務員。
貧乏寺の維持のために檀家たちと肌を重ねる”自分の容姿が十人並みに届かぬことを
ずいぶんと幼い頃から知っていた”住職の妻。
妻に20年来浮気されている高校教師と、親に見捨てられた”成績は38人中35番”の女子高生。
”朝から夜中まで握り飯三つで働いて月に十万円弱”の60歳になるホテル清掃係の女性。

その清掃係の女性ミコの話「星は見ていた」。
”一生懸命に体動かしてる人間には誰もなにも言わねぇもんだ”という親の言葉を拠り所に
ひたすら働き続けた彼女の人生。
”そもそも自分の感情というものがミコにとっては不可思議な沼のようなものなのだ。
親が死んだときも、子供を流した時も、泣いた記憶というのがなかった。
泣いても笑っても、体を動かさねばならない毎日は続く。”
その彼女の次男が犯罪に手を染めて逮捕されたと知った時、
”冬支度を終えた林のにおいを嗅いでいると、なにやらふるふると目から温かいものがこぼれ落ちてくる”
この話は泣けたなあ…

誰もかれもが悲しい。
舞台はラブホテルですが、描かれているのは性愛ではなく、
愚直に生きる人々の孤独であり、挫折感であり、悲哀なのです。
読後感は決して良くはありませんが、心に静かに沈殿します。

「ホテルローヤル」 http://tinyurl.com/jraenb3

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