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2015年05月31日21:56

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【音楽】 芥川也寸志 生誕90年メモリアルコンサート

今日は、「芥川也寸志生誕90年メモリアルコンサート」を聴きに行った。日本人作曲家の作品を積極的に演奏しているオーケストラ・トリプティークによる演奏会で、昨年も伊福部昭生誕百年で何回か演奏会に行ったが、その伊福部昭の101歳の誕生日に、一番弟子の芥川也寸志のメモリアルコンサートを実施するのである。これは行かない訳にはいくまいと、早くから予定していた。プログラムは次のとおりである。

 ・Do Re Mi Fa Sol La Si Do!
 ・祝典組曲 No.3 マーチインド
 ・大河ドラマ「赤穂浪士」組曲
 ・映画「鬼畜」組曲
 ・バレエ「KAPPA」組曲
 ・NHK幻のテーマ音楽集
 ・小管絃楽のための組曲
 ・映画「八つ墓村」組曲
 ・映画「八甲田山」組曲
 ・みつばちマーチ

  松井慶太指揮オーケストラ・トリプティーク/今江望(ストリートオルガン)/森ミドリ(チェレスタ)
  会場:大井町きゅりあん大ホール (14:00開演)

この充実したプログラム! 「赤穂浪士」、「八つ墓村」、「八甲田山」などお馴染みの曲もあるが、初めて聴く曲も多く、こんな作品を生演奏で聴けるとは思わなかった、というようなのまである。今回の演奏会を開催するにあたり、楽譜がなかったものは音源から楽譜を起こしたそうで、関係者の方々には頭が下がる。それほどまでしても、芥川さんの作品は演奏する価値があるのだ。


1曲目の「Do Re Mi Fa Sol La Si Do!」からして初めて聴く曲だが、NHK「音楽の広場」で初演された曲だとのことである。題名のとおり、ドレミファソラシドをモチーフにした楽しい曲である。2曲目の「祝典組曲No.3マーチインド」も初めてだが、これもなかなかすごい曲である。こんな作品が埋もれていたとは! 「マーチ・イン・ド」で、ハ調の行進曲だが、「マーチ印度」もかけているらしく、「エローラ交響曲」にも通じるマイナス空間論的音楽であるらしいが、そのあたりのことは置いといて、まずは楽しいオープニング2曲であった。

続いては、「赤穂浪士」である。芥川といえばこれというメインテーマだが、これを生で聴けるとはこの上ない幸せ。聴いていて鳥肌が立った。鞭の音がバチッ、バチッと響く。(このパーカッション女性奏者は、昨年の伊福部音楽でも、凄まじい太鼓を敲いていた人だ。) もちろんメインテーマだけではなく、劇中音楽も続けて演奏されたが、素晴らしい演奏だった。

ここで西耕一さんが登場し、簡単な挨拶のあと、チェレスタの森ミドリさんとストリートオルガンの今江望さんが加わり、映画音楽「鬼畜」組曲だ。実はこの映画は観ていないのだが、音楽は聴いたことがある。一度聴いたら耳に残るメロディーだ。最初はストリートオルガンだけでメインテーマが奏でられ、そのあとはオーケストラによる演奏となる。「鬼畜」というタイトルのとおり、親が子を殺める話だが、真の「鬼畜」になりきれない人間ドラマ、そして、大人の身勝手な欲望の犠牲となる子供の慟哭が、ストリートオルガンのメルヘンチックな響きで表現されている。これは映画も観なくてはなるまい。

バレエ音楽「KAPPA」は、もちろん芥川龍之介の「河童」に基づく作品である。龍之介が自殺したのは也寸志が2歳の時で、也寸志は父親の記憶はほとんどないと語っていたのを聞いたことがあるが、やはり親子であるから、通じるものはあるのだろう。龍之介の作品を題材にした曲は、「蜘蛛の糸」など他にもある。「KAPPA」は全曲演奏すると30分を超えるそうだが、今回は組曲で短めに編んである。これも初めて聴く曲だったが、なかなか聴きどころの多い音楽であった。

このあとは休憩で、ストリートオルガンがロビーに置かれ、今江さんの指導のもと自由に触れるようになっていた。ただ回せばいいじゃだけじゃないかと思っていると、やはり素人の「演奏」はテンポが揺らいだりしてうまくいかないのであった。


休憩のあとは、NHK 幻のテーマ音楽集から始まる。列記すると、「Opening & Ending for NHK Television」、「日本のあゆみ」、「若い農民テエマ」、「学校放送 小学校ラジオ音楽教室テーマ」、「家庭の音楽テエマ」、「メロディの流れ 3時半からの音楽」、「NHK教養大学テエマ」、「海外の話題テエマ」である。見た記憶のある番組は一つもない。それもそのはずで、いずれも1950年代前半の番組、生まれる前だ。まさに「幻のテーマ音楽」である。いかにもNHKの番組のテーマ音楽だなという感じで、そういうのを芥川也寸志がたくさん作っていたとはあまり考えていなかった。まして、それらをオーケストラの生演奏で聴けるとは。よくもこんな曲をプログラムに持ってきたものだと感心するばかりである。

このあとは、「小管弦楽のための組曲」で、これはリズミカルで楽しい音楽であった。なんと、ラジオ放送で1回演奏されたきり、全く忘れられていた作品だそうだ。こんな作品も埋もれていたのだ。プログラムにも書いてあるように、「65年にわたって演奏されなかったことは、芥川ファンにとってはもちろんのこと、世の中の音楽に関わるものすべてにとって、悲劇以外の何物でもないと思う」

続いて、「八つ墓村」と「八甲田山」の映画音楽を組曲にしたものが演奏される。「八甲田山」は時々演奏されて馴染みだが、「八つ墓村」を演奏会で取り上げることはあまりなかっただろう。それもそのはずで、楽譜は散逸しており、今回も音源を頼りに復元・構成したものであるという。構成を担当した徳永洋明さんが、芥川也寸志の奥様の眞澄さんに、「あなた耳はいい?」と訊かれ、つい「はい」と言ってしまったために、「八つ墓村の楽譜を復元して」ということになったのだという。それだけに貴重な演奏だ。もちろん素晴らしい演奏を楽しむことが出来た。「たたりじゃ〜!」

 「八甲田山」はCDでも聴いていて馴染みの音楽だ。これも新田次郎の原作は読んだが映画は観ていない。これも観なくてはなるまい。音楽だけはよく聴いているのだが。「過酷な八甲田山の自然、どこまで行っても雪ばかりという絶望的な状況に、これほどまでに切なく美しいメインテーマを宛てた」という、素晴らしい音楽が展開する。素晴らしい演奏だった。

最後は「みつばちマーチ」で締めくくった。予めプログラムに明記しておいたアンコールという感じで、指揮者の指示に合わせて客席全員の手拍子が鳴り、こどものためのミュージカル音楽らしく、楽しく盛り上がって演奏会を終えた。


終演後に、ステージ上に、今回の復元・構成を担当した徳永洋明さん、清道洋一さんが呼ばれ、会場から拍手喝采。この2人の努力なくして今回の演奏会は成立しなかった。最後に芥川眞澄さんもステージに呼ばれた。ご高齢かと思うが、若々しくスタスタと歩いていかれた。「10年後にまた会いましょう」で今日の演奏会は終了した。10年後は芥川也寸志生誕百年である。

「芥川ファンは行かないと後悔する」と煽る(?)トリプティークのホームページだったが、それはよく分かる。言うまでもなく大変素晴らしい演奏会であった。
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