相変わらずの猛暑続きの毎日だが、お盆休み週間の1日、ふと思い立って筑波山に行くことにした。筑波山は男体山と女体山からなり、万葉の時代から多くの詩歌に詠まれ、「西の富士、東の筑波」と称される美しい山であるが、関東に長年住んでいながら今まで行く機会がなかった。いずれは行くべきだと思っていたが、ようやく行くことにした。つくばエクスプレスが開通してからは、かなり便利になっている。
いつもより空いている通勤電車で秋葉原に向かい、8:02発の快速つくば行きに乗車する。通勤ラッシュとは反対側なので車内はガラガラだ。都内は北千住駅を除きずっと地下を走るが、地上に出ると一気に速度を上げて快適に飛ばして行く。沿線はまだ田園風景が多いが、駅周辺の開発は進んでおり、しばらく乗らないでいると風景が一変しているところも多い。秋葉原からわずか45分でつくばに着いた。やはり速くて便利だ。
つくば駅をおりるとすぐにつくばバスセンターがある。筑波山へ行くバスは1番乗り場から出ると案内もあるが、それらしい人が集まっているので、案内がなくても分かる。「直行筑波山」と行先が書かれた関東鉄道バスに乗車する。つくばセンターを出ると途中、沼田、筑波山神社入口のみに停車して、つつじヶ丘まで行く。程よい乗車率で、9:00ちょうどに発車した。筑波大学を左に見ながら、ひたすら真っ直ぐで平坦な道を北上する。しばらく走ってようやく右折する辺りで、やや風景が変わってくるが、まだずっと平坦な道である。旧筑波鉄道の線路跡も右側に見つつ進むと、つくばセンターを出てから30分ほどで沼田だ。ここでは降りた人はいなかった。沼田を過ぎると、これまでの平坦な道が一変し、急カーブの連続で山道を登って行く。ここから筑波山に入って行く訳だ。筑波山神社入口で乗客の8割程度が下車した。ケーブルカーに乗って男体山に登るにはここで降りるのが良い。自分はロープウェイで女体山の方から登ろうと思い、終点のつつじヶ丘まで行くことにした。ガラガラになったバスが筑波山神社入口を発車すると、筑波山の観光案内放送が入る。神社入口で降りた人は聞けないようになっているようだ。晴れていれば富士山まで見えるらしいが、雲の多い夏の空では見えない。つつじヶ丘に到着したのでバスを降りる。すでに海抜542mだ。
ロープウェイは20分おきに運転しており、1本見送ったところでどうということもないが、人の流れに乗って真っ直ぐロープウェイ乗り場に向かう。ここから女体山駅まで一気に登って行く。女体山駅は標高840mだ。ロープウェイを降りた瞬間、ほとんどの客の第一声が「涼しい!」であった。下に関東平野を見下ろし、別天地のようである。
(つつじヶ丘に到着したバス)
(筑波山ロープウェイ)
女体山の頂上に行くには、さらに歩いて登って行く必要がある。女体山の標高は877mだ。ロープウェイですぐ近くまで来ているので、ここから山頂へは比較的楽な道である。筑波山の祭神は、筑波男大神、すなわち伊弉諾尊(イザナギノミコト)と、筑波女大神、すなわち伊弉冊尊(イザナミノミコト)であり、それぞれ男体山、女体山の頂上に祀られている。女体山本殿にお詣りし、関東平野を眺めながら涼しい山の空気に当たっていると、清々しい気分になってくる。
女体山から男体山へは峰を伝って行くことが出来る。ロープウェイの駅のところまで下りて、男体山にあるケーブルカーの駅まで15分ほどでたどり着く。途中「ガマ石」なる石がある。筑波山と言えば「ガマの油」で有名だが、この「ガマ石」は、永井兵助が「ガマの油」の売り口上をこの石の上で考えたということから、そう呼ばれるようになったという。本来「雄龍石」というらしい。さらに進むと「セキレイ石」という石がある。イザナギ、イザナミの間を取り持つセキレイと言えば、説明は不要であろう。何しろ初めてであるから、セキレイに教わったのである。そのセキレイが降り立った石がこの石という訳だ。(セキレイについては、「古事記」には記述はなく、「日本書紀」に書かれている。) さらに行くと「かたくりの里」もあるが、カタクリの見頃は3月下旬から4月下旬なので、今は何もない。
(女体山頂)
(女体山本殿)
(「ガマ石」)
(「セキレイ石」)
ケーブルカーの筑波山頂駅の前に出たが、実はここは山頂ではない。男体山頂にはさらに自分の足で登らなければならないが、こちらは女体山ほど楽ではない。駅は標高800mにあるが、山頂は標高871mだ。駅付近には人が多いが、山頂を目指す人が少ないように感じた。それでも登って行くと、やはり何人もとすれ違う。お互いに挨拶を交わしながらで気持ちいい。さすがに汗が吹き出てきたが、山頂に到着すると爽快だ。伊弉諾尊を祀った男体山本殿にもお詣りする。少々山頂の涼しい風に当たって、同じ道を下りてケーブルカーの駅まで戻る。駅周辺には回転展望台もあるので、登ってみる。ゆっくりと回転しながら周囲が見渡せるが、2階で食事をするならともかく、3階の展望だけなら、歩いて回った方が早い。もっとも、雲の多い空ではあまり遠方までは見渡せない。
(男体山頂)
(男体山本殿)
ケーブルカーも20分おきに運転している。11:40発の宮脇行きで山を下りることにする。ケーブルカーの車両は赤い「もみじ」と緑の「わかば」があるが、乗ったのは「もみじ」だ。このケーブルカーの特徴は、路線の半分が急カーブになっていることである。山を下る場合、右側に大きく曲がりながら進んで行く。しかも途中にトンネルがある。このトンネルの少し手前に、「東京スカイツリーと同じ高さ634m」の表示があった。最近付けたのであろう。トンネルを抜けると登りとすれ違い、あとは直線を下っていく。宮脇駅(標高305m)の少し手前に「東京タワー同じ高さ333m」の表示もやはりあった。
宮脇駅のすぐ近くには筑波山神社があるので、こちらにもお詣りする。本殿は男体山頂、女体山頂にあり、中腹に拝殿があるという訳だ。また、境内には「さざれ石」がある。「さざれ石」とは石灰質角礫岩とも呼ばれ、小石が寄り集まって大きな岩状になったものをいうが、元々は「細石」と書いて小さな石の意味である。すなわち「君が代」に歌われている「さざれ石」である。筑波山神社の「さざれ石」も神聖なものであり、「君が代」の歌詞とともに置かれている。
(筑波山頂駅)
(筑波山ケーブルカー)
(筑波山神社拝殿)
(筑波山神社の「さざれ石」)
正午を過ぎたので昼食とする。宮脇駅付近にあった適当な店で、「筑波地鶏からあげ定食」を注文する。店内には空調機が入っていないようだが、窓からの風が心地よい。地平では冷房がないとまともに過ごせないような猛暑でも、ちょっと山の上に行けば自然の風が気持ちいいのだ。食事を終えて、筑波山神社入口のバス乗り場まで下りて行く。13:10発のつくばセンター行きで、つつじヶ丘から来るバスである。筑波山神社入口からも10人くらい乗って、来た時と同じ道を戻っていく。つくばセンターに着いたら、やはり非常に暑かった。山の上の清涼な空気とは違うようだ。つくばエクスプレスの快速で秋葉原まで戻り、自宅へと帰った。
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