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2023年10月02日20:55

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【読書】 最近読んだ本 備忘禄

最近読んだ本の、備忘的メモ。

●「パンの文化史」 (舟田詠子著、講談社学術文庫)

穀物を挽いてこねて焼いたパン。一口にパンと言っても、その種類はさまざまで、しかも遥か五千年以上も前から食べられていた。古代遺跡を発掘すると、パンがどのように発達していったかが分かり、そこにはパンを焼くための様々な工夫があったのだ。日本などでは米が単なる食べ物ではなく特別な意味を持っていたように、西洋ではパンにはやはり特別な意味を持っていた。パンは生きるための糧そのものを意味したのだ。世界各地を訪ねてはパンにまつわる歴史や文化を調査して、その成果を詳細に綴った、まさにパンの文化史の大作である。世界各地で日常的に食べられているパンも、かくも奥が深いものなのである。


●「ごまかさないクラシック音楽」 (岡田暁生/片山杜秀著、新潮選書)

音楽学者の岡田氏と音楽評論家の片山氏の対談という形でまとめられた本。この2人によるクラシック音楽論ということで、ありきたりの内容ではないことは想像できる。「ごまかさない」という文言がタイトルにあるように、なんとなく有耶無耶になっているようなことも、話の中に次々と登場しては、独自の考えをぶつけ合う。バッハより千年も前から音楽があるのに、なぜ「クラシック」とは別物になっているのか、そのバッハはなぜ「音楽の父」なのか、ハイドンの「イギリス趣味」とは何か、ベートーヴェンがいわば「株式会社の創業社長」になったのかなぜか、ワーグナーは何がそんなにすごいのか、第二次世界大戦までに音楽はどのように変遷していったか、そして戦後の「クラシック音楽」とは何なのか、こういった話を語り尽くしている。


●「鉄道と国家」 (小牟田哲彦著、交通新聞社)

鉄道は必ず目的があって造られるが、そこには政治や国家が関わっているのである。それを改めて時代を追って解説した本である。現在の日本の鉄道網の根幹をなす路線も、まずは狭軌(1097mm)を選択したことからはじまり、各地に続々と建設された鉄道は、国の輸送の根幹をなすものとして国有化されていく。東北本線や山陽本線ももともとは「私鉄」だったのだ。そして我が国が誇る高速鉄道の新幹線へとつながっていく。一方で、政治家が地元に強引に路線を建設させるような「我田引鉄」が出てくる。これが国鉄の経営を苦しめる原因の一つともなり、やがてローカル線の廃止、そして国鉄の分割・民営化につながっていくのである。大雑把にいえばこんな流れだが、それぞれでの出来事を具体的に挙げて、実感的に述べている。そして鉄道は今、国際協力という新たな局面も迎えているのだ。


●「落語探偵サダキチ 神楽坂の赤犬」 (愛川晶著、中公文庫)

先日「落語刑事サダキチ 泥棒と所帯をもった女」を読んだのだが、これはシリーズ第二作であることをあとで知り、それならばと第一作の本書を読むことにしたのである。神楽坂署に所属する落語好きなベテラン刑事の平林定吉が、新人女性刑事とコンビを組んで、事件を解決する警察小説で、「放免祝い」、「身投げ屋もどき」、「神楽坂の赤犬」の3話が収録されているが、どの話にも落語ネタが絡んでいるのである。そして最後は、高座のホームズこと八代目林家正蔵のアドバイスが事件を解決に導く。よほどの落語好きでないと知らないようなマニアックな噺が出てきたり、作者もかなり落語に造詣が深いことが伺われるが、もとの噺を知らなくても、十分に楽しんで読める小説である。


●「地図バカ」 (今尾恵介著、中公新書クラレ)

地図研究の第一人者である著者による、「地図好きの地図好きにより地図好きのための本」である。まずは、今尾氏が地図好きになった経緯について述べ、そのあとは貴重な図版を大量に盛り込みながら、地図に関する様々なことを記していく。誰がこんな地図を買うのかと思うような、ほとんど海で小さな島が描かれているだけの地図、これは国土地理院が正確に区割りをしたので、こんな部分も出来るのだ。昔の地図を見ると、それだけで机上旅行もできる。現在の同じ場所の地図と比べると、その場所の栄枯盛衰を感じることが出来るのだ。海外の地図なども国柄が出ていたり、戦時中などは「特殊な加工」がされた地図があったり、興味深いものも多い。共産圏の国の地図など前は入手不可能だったが、今はGoogle mapで路地の一本一本まで正確に見ることができる。私も地図好きな方ではあるが、さすがにここまでは...
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