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2024年05月23日21:49

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【読書】 最近読んだ本 備忘禄

最近読んだ本の、備忘的メモ。

●「数学の世界史」 (加藤文元著、角川書店)

数学といえば世界共通と思われがちだが、かつては地域によって大きな違いがあったのだ。それがやがて統一されていくまでの「同化」と「征服」の歴史を書いた本である。いわゆる四大文明と呼ばれる地域で、古代の数学は生まれていった。古代バビロニアの粘土板を読み解くことで、すでに系統的な計算方法があったことが分かる。古代エジプトでは掛け算、割り算に二進法的な方法が用いられていた。インドでは数としての「0」が発見され、位取り記数法が確立していった。一方でギリシャでは、証明をするという論証数学が生まれていった。これにはギリシャの風土やギリシャ哲学の影響があるという。計算方法を主とする数学と、論証を主とする数学の流れができてくる。その後、新たな概念も生まれたりして、やがて近代西洋数学が数学を統一していくことになるのである。かつて読んだ数学史の本に比べても、この本は実に面白い。


●「生きていく民俗」 (宮本常一著、河出文庫)

生きていく糧を得るための職業。徹底したフィールドワークで生活の実態に密着した研究を続けた民俗学者による、職業史の本である。海の民、山の民、川の民、村の民、町の民の、それぞれの職業の生まれた背景と、やがてそれらが関わりを持ち互いの交流などに発展していく流れを述べる。そもそも暮らしを立てるには自給自足が基本であったが、すべてが賄えないと交易社会が生まれてくるのだ。村でもさまざまな職業が生まれていき、各地を旅する行商や、出稼ぎに出るものも現れてくる。都市部では手職が発達し、職業座が形成される。職人の徒弟修業、商人の丁稚奉公などによって、その仕事は引き継がれていく。生業の民俗学ともいうべき、なかなか深い本である。


●「『古事記』神話の謎を解く」 (西條勉著、中公新書)

「古事記」に関する本はかなり読んでいる方だが、それぞれの解釈もさまざまで面白い。この本は、「古事記」にかくされた裏面を解き明かそうと試みたものである。そもそも「古事記」は古来の神話をそのまま採録したものではないという。そこには新たに誕生した「日本」という国家の要請が作り出した新たな神話が書かれているという。冒頭が「天気開闢」ではなく「天地初発」となっていること、イザナギとイザナギが最終的に対立する世界として描かれていること、アマテラスとスサノオの関係の変化、オオクニヌシが古来の神話からイメージが書き換えられていること、アメノワカヒコとタケミナカタの裏切りと敗北の物語、ホノニニギが天降って「万世一系」につながる話等々、なかなか興味深い解釈がされている。「古事記」は両義性を持っており、そこには「書き換えられた神話」としての机上の創作があるのだという。


●「山本直純と小澤征爾」 (柴田克彦著、朝日新書)

日本を代表する音楽家の2人だが、小澤は「世界のオザワ」として本場ヨーロッパの指揮者に並ぶ活躍をしたが、一方の直純は残念ながらあまり正当に評価されていないのではないか。実は直純こそが天才音楽家と呼ぶにふさわしく、小澤も含めてこの二人がいなければ、日本のクラシック音楽界の現在はなかったというのが、この本の主旨だ。齋藤秀雄門下でもあった2人。直純は小澤に対して、「オレは音楽の底辺を広げる仕事をするから、お前はヨーロッパに行って頂点を目指せ」と言ったというが、まさにそのとおりになったのである。直純は、クラシック音楽番組の草分け的な「オーケストラがやってきた」で司会を務め、小澤も帰国時は必ず出演し、毎回いろいろなテーマでクラシック音楽の「底辺を広げる」ことに貢献した。2人の活動は、直純の「一万人の第九」や小澤の「サイトウキネン・オーケストラ」などに結実していく。一見豪放磊落に見える直純だが、実際は繊細で、そして真の天才であったという。


●「大陸の誕生」 (田村芳彦著、講談社ブルーバックス)

地球にはいつからなぜ大陸があるのか。そもそも大陸とは何なのか。それを詳しく解説した本である。まずは地球の層構造について述べ、地殻がどのように形成されるのか、地殻の材料はどのように生まれるのかを、プレートテクトニクスによるマグマ生成から詳説していく。地殻も2種類あって、大陸地殻と海洋地殻は構成する岩石成分も違うのだ。大陸を作る安山岩はマグマが冷え固まったものだが、そのマグマの起源となると、かなり複雑で、まだ謎に包まれている部分も多いらしい。そこで、西之島を観察してみると、そこで起きていることが、大陸生成の謎を解くヒントになりそうだという。西之島は大陸の卵かもしれないという。大陸の誕生は生命の誕生の謎にもつながるが、そこはまだまだ奥の深い領域のようである。
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