今日は、川崎に東京交響楽団の定期演奏会を聴きにいった。
プログラムは次のとおりである。
・武満徹：鳥は星形の庭に降りる
・ベルク：演奏会用アリア｢ぶどう酒｣
・マーラー：大地の歌
指揮：ジョナサン・ノット
ソプラノ：�盒恭�理
メゾソプラノ：ドロティア・ラング／テノール：ベンヤミン・ブルンス
会場：ミューザ川崎 (14：00 開演)
普段あまり積極的に聴いているとはいえない作品も聴こうと思って、行ったものである。特に前半の２曲は馴染みがない。早速、武満の｢鳥は星形の庭に降りる｣から始まるが、かなり具体的なイメージが描かれていそうなタイトルである。どうやら、武満が夢に見た光景がモチーフになっているらしい。だからというわけでもなかろうが、どことなく夢の中にいるような不思議な感覚を、聴いていて感じた。身体は起きているのに、精神は夢の中のような．．．。鳥が庭に降りるというような具体的なイメージではなく、何かはっきりしないような、捉え難い何かがあるような．．．
続いては、ベルクの｢ぶどう酒｣である。たぶん全く初めて聴く曲である。ソプラノの高橋絵里は真っ赤なドレスで、これはワインをイメージしているのだろうか。オーケストラで導入部が奏でられると、最初の武満作品とも近いような雰囲気を感じ、まだ夢の中にいるような心地である。｢ぶどう酒の魂｣、｢愛する者たちのぶどう酒｣、｢孤独な男のぶどう酒｣の３つの歌があるのだが、これらは切れ目なく演奏される。改めて歌詞の訳を見ると、２つめは｢夢の国｣へ行くような内容で、聴きながらなんとなく感じたのも、ずれてはいなかったか。
休憩のあとは、マーラーの｢大地の歌｣で、これを生で聴くのも初めてである。６つの楽章をテノールとメゾソプラノが交互に歌っていく。前半の不思議な感覚から一転、オーケストラが鳴り出した瞬間に、いかにもマーラーで、なんとなくほっとしてしまう。李太白、猛浩然、王維などの中国の詩をドイツ語に翻案した詩によるものだが、元の詩が不明なのもあるようだ。交響曲と歌曲の融合のような作品とも言われるが、個人的には歌曲集というよりは交響曲のイメージの方が強い。オーケストラは伴奏ではなく、むしろ主役にも聞こえるのだ。圧巻は第６楽章で、60分少々の演奏時間の約半分を最後の楽章がしめるが、マーラーが込めた想いが全て集約されているような気がする。ドイツ語の歌詞は分からないが、いろいろあったけれど静かに去っていくというような．．．。やはり、｢大地の歌｣は素晴らしい作品だと感じた。
演奏が終わっても10秒くらい静寂があって、やがて大きな拍手となった。こんなにも余韻を残すような演奏だったということだろう。指揮者も歌手もステージを去り、オーケストラもステージを去り、客の半分くらいがホールを出ても拍手は鳴り止まず、誰もいないステージに指揮者のノットが再び呼びだされるほどだった。今日の演奏会は｢大地の歌｣に尽きる。
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