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2023年08月17日11:00

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「物語る絵画」 / 根津美術館

8/12(土)は、夕刻からミューザ川崎シンフォニックホールでTBSK管弦楽団第14回定期演奏会を聴いたが、せっかくの上京ではあるし時間もあったので、その前に、根津美術館で企画展「物語る絵画」を観た。

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・会期 7/15〜8/20

源氏物語や平家物語など人気を博した物語は、成立後忽ち絵画化が始まったと考えられている。
冊子の挿絵から、詞書と絵が交互に配置された絵巻物や画帖、更には絵のみが独立して掛軸や屏風等の大画面に描かれるようにもなった。
それら大画面の物語絵画の多くは複数の場面を組み合わせているが、選択された場面は一様でなく、順序も必ずしも物語に沿っている訳でない。例えば、場面の季節に注目し、春夏秋冬の順を優先して配置する事もあった。また、特定の一場面のみが画題として定着したケースもあり、表現形式は多様だ。
本展では、物語の範囲を、作り物語や軍記物から、涅槃図をはじめとする仏教説話や高僧伝、あるいは能、幸若舞やお伽草子に迄広げた。
初公開作品を含む根津美術館所蔵品に、近年出現した伝 岩佐又兵衛筆《妖怪退治図屏風》(個人蔵)を加えた展示ラインナップは実に変化に富む。異なったジャンルにピックアップされる物語もあり、登場人物の変容も見どころとなるだろう。絵画化されたさまざまな物語を味わいつつ、古の人々が物語のどのようなシーンに心惹かれたのかという点にも思いを馳せて楽しみたいものだ。

展示室1・2の構成は以下の通り。

・「神仏と高僧のものがたり」
・「源氏絵と平家絵」
・「御伽草子と能・幸若舞の絵画」

◆「神仏と高僧のものがたり」・・・全9点、含む重要文化財4点と重要美術品2点。

《釈迦八相図》絹本着色、鎌倉時代13世紀作、重要文化財/根津美術館蔵。
異時同図法により、釈迦の生涯の八つの重大な出来事(下天・入胎・誕生・出家・降魔・成道・転法輪・涅槃)を一枚の中に描き込んでいる。

《仏涅槃図》行有・選有筆、絹本着色、南北朝時代1345(康永4)年、重要文化財/根津美術館蔵
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釈迦がインド・クシナガラの跋提河(ばっだいが)のほとり、沙羅双樹の木の下で入滅した時の情景を描いたもの。中央で「頭北面西」で横たわる、人一倍身体の大きいのが釈迦。
弟子や諸仏だけでなく、様々な動物が嘆き悲しんでいる。
右上方、天から雲に乗ってやってくるのは釈迦の生母 摩耶夫人。
釈迦の足を撫でている老女(120歳)はスバッダラ。
行有・選有は興福寺の絵仏師親子。作者と成立年が分る例は稀有で、このジャンルの作品の時代割り出しの一基準となる重要なもの。

《絵過去現在因果経》巻第4(全8巻のうち)、(絵)住吉慶忍・聖衆丸筆、(写経)良盛筆、鎌倉時代1254(建長6)年、重要文化財/根津美術館蔵
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釈迦の前世と現世の物語は因果でつながっているとする経典。
冒頭のチラシ写真の右下は、その部分アップ。
出家を志した太子時代の釈迦が、夜、静止する親の目を隠れ、白馬に乗って城を出る場面。
住吉慶忍・聖衆丸は絵仏師親子。

涅槃図、因果経、同じ釈迦でもこんなに描かれ方が違う。実に面白い!

《高野大師行状図画》巻第2(全9巻のうち)、紙本着色、室町時代16世紀/根津美術館蔵

弘法大師の伝記とその奇蹟を絵画にした10巻本だが、巻1を欠く。
弘法大師の前に現れたある童子(実は文殊菩薩の化身)が水上に書いた「龍」の字が、轟音と伴に真龍となった場面。

◆「源氏絵と平家絵」・・・全5点。

《浮舟図屏風》六曲一隻、紙本着色、江戸時代17世紀/根津美術館蔵
冒頭チラシの上半分、但し部分。

『源氏物語』宇治十帖〜浮舟の巻から、今上帝の第3皇子匂宮が恋する浮舟を宇治の山荘から連れだし、宇治川を渡って対岸の別荘へと向かう場面。浮舟は薫が宇治に住まわせていたのだが、匂宮は薫になりすまして浮舟と契る。のちに浮舟は2人の間で苦悩し、入水する事になる。
金箔押しの舟を大きく斜めに捉えた不安定な構図が、浮舟の運命を暗示する。写真ではよく見えないが、荒れる波の様子が細かく線描されている。
長谷川派の絵師によるとされるが、俵屋宗達工房の源氏絵を手本にしているとの説もあり。

◆「御伽草子と能・幸若舞の絵画」・・・全7点。

《妖怪退治図屏風》八曲一隻、紙本金地着色、伝 岩佐又兵衛、江戸時代17世紀/個人蔵
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能の『田村』で語られる坂上田村麻呂の鬼退治の場面である事が最近判明。
鬼神達に降りかかる夥しい矢は、中央の白旗の上方に現れた千手観音の全手から放たれたものと理解された。
但し観音の姿は屏風の中には描かれず、金泥の光線がそれを暗示している。
右側の黒雲の上に現れた妖怪達の表情が滑稽でつい笑ってしまう。現代のイラストレーションを想わせもする。
部分のクローズアップをご覧下さい。

《舞の本絵本断簡》28丁(全433丁のうち)、紙本着色、江戸時代17世紀/根津美術館蔵

初公開。
室町時代に流行した、鼓に合わせて謡い舞う幸若舞(こうわかまい)。能や歌舞伎の原型とも言われる。その台本(舞の本)に絵を加えた冊子本。42演目を1セットとして誂えられたが、その後丁毎に切り離され、詞のみの丁は失われた。《敦盛》は特に好まれたが、絵画化される事が少ない曲もあって貴重。
 
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