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2021年08月06日08:13

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平藤喜久子編『ファシズムと聖なるもの/古代的なるもの』

 平藤喜久子編『ファシズムと聖なるもの/古代的なるもの』(北海道大学出版会、2020年)を読了。近代化が進む地域は、余りに急激な時代の流れに抗し、民族/俗を重視するような反近代主義やロマン主義が十八世紀から起こった。その中でそれぞれの地域文化で「聖なるもの」と「古代的なるもの」が再発見・創造されていった。
 一九二〇年代以降のファシズム期にはその傾向が更に顕著となった。ファシズムは急進的なナショナリズムや全体主義的な傾向を伴い、そのための国民統合には民族の歴史を聖化して政治体制を正当化していくことが必要となる。客観性や実証性を重んじてきた学問も、この時代潮流と関わった。
 十八世紀・十九世紀の反近代主義やロマン主義の影響を受けた文化や学問はファシズム期を準備した。そして、戦後も続けられた研究の中にはファシズム期に確立された定説やその時期になされた調査を背景とするものも多い。現代の眼差しの中にファシズム的なるものが埋め込まれている場合もあり、再評価できることもあるだろう。
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