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2021年05月27日19:15

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中野剛志『小林秀雄の政治学』

 中野剛志『小林秀雄の政治学』(文春新書、2021年)を読了。小林秀雄と言えば政治嫌いの文学者として知られる。しかし、小林は政治や社会についての言及がかなり初期の段階から多い。
 人間は集団を形成し、集団で行動しなければならない社会的な存在だが、同時に各人に固有の情や思想を抱く個人でもある。政治は専ら社会の側面を司る営為だが、思想は飽く迄も個人が創造するもので、思想は社会の領域を超えていく。政治が思想に手を出すと、思想は自発性を失い、社会の領域に閉じ込められ、イデオロギーと化して死滅する。
 そうであるから文学者である小林に政治は虫が好かないものだったが、生活の実務と技術であるべき政治といえども危機においては創造性を発揮しなければならない。この危機と格闘する個人の創造行為、即ち自由(フリーダム)によって日本の伝統は発見され、そういった伝統の姿こそが日本の歴史的な個性であると小林は言った。そして、自らも危機の時代を生き、そのような自由を実践していった。
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