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2020年11月20日08:17

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井上鋭夫『謙信と信玄』

 井上鋭夫『謙信と信玄』(吉川弘文館、2012年)を読了。上杉謙信と武田信玄はいずれも経済的には後進性地域の大名で、動員できる兵力や武器は少なく、中央から離れていたため、その装備も粗雑だった。謙信と信玄は勇猛にして知略に長けた地方的な名将というところにその真価があり、父祖の築き上げた地盤を維持して飛躍的な拡大をなした。
 謙信は清濁併せのむ大度量に欠け、正義と潔白を標榜したが、権威には弱くて出家遁世を志すなど政治家には適しない面があった。その精鋭を率いての果敢な進撃は、彼の一生不犯と大酒と同様に性格の弱さが反映されたのかも知れない。何か抑圧された焦燥感が伏在し、時として激発したような印象を受ける。
 信玄は連戦連勝の猛将だったが、決して軽挙妄動をしなかった。好く衆議を入れ、準備に万全を期し、軍事力を培養するためにも肌目の細かい民政を布いている。外交政略の緻密さでは本領が遺憾なく発揮された。
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