お正月のたった一日の休日を無駄にすまいと、映画を観てまいりました。
「こんな夜更けにバナナかよ」。
実話系難病ものが苦手な私ですが、これは素直に好きになれました。フランス映画「最強のふたり」に匹敵する、と言ったら褒め過ぎかな?
強烈な個性で周囲を圧倒する筋ジストロフィー患者、鹿野靖明。
実在したこの人物を主人公にした物語なんですが、これ、フィクションとして構築されたサイドストーリーもよくできてます。
鹿野を支えるボランティア活動に参加している医大生・田中(三浦春馬)と彼の恋人・美咲(高畑充希)のエピソードなんですが、これがなかなかいいんですよ。
医者のボンボンで、家業を継ぐ事が既定路線になっている人生にモヤモヤしたものを感じている田中はそれなりに善良で優しい青年。でも、美咲が自分に「教師を目指している大学生」だと自己紹介していたことが真っ赤なウソだと知ると、うろたえ、怒ります。
彼の怒りの理由は美咲がウソをついたことではなく、自分の両親に対し面目が立たなくなったこと。「勉強熱心な彼女」を紹介し、真面目に将来を考えていることを両親にアピールするつもりだったのに。それがご破算になってしまった。
要するに自分都合の怒りでしかなかったんですね。
そしてこのことがきっかけで、少しずつ二人の間に埋め難い溝ができてしまうのです。
取り立ててドラマチックでもないし、新味のないエピソードと言えば言えるんですが、三浦春馬と高畑充希の芝居がとてもよく、じわりと心に沁みるものになっていました。
特に三浦春馬がいいんですよねえ。この人、こういう普通の若者もやれるんだ、と、ちょっと驚きました。特にできるだけ相手を思い遣ろうとしながらも自分のエゴを隠す事のできない微妙な怒りの芝居、あれは秀逸でしたね。
そういえばこの人、舞台で「キンキー・ブーツ」やるんですよね。一度、ナマの彼の芝居を観てみたいなあ。
あ、あまり映画の事に触れてないですが、これはとても良い作品でしたよ。
肉体の「生」と精神の「生」についてのドラマとして、また、ノーマライゼーションとは何か?を問うドラマとして見応えがありました。
封切直後に観てたら、絶対に昨年の邦画のベストテンに突っ込んでたでしょうね。
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